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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第1章 ぼっちの私がギルドを作るまで
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幕間3:悪役魔嬢の許せないこと

 ――わたくしには決して許せないものがある。


 それは弱いということ。

 弱いということはそれだけで罪であるかのように告げること。


 幼い頃からあれやこれやと、本当にお嬢様のように振る舞わなければいけないと考えて、言いつけどおりにこなしてきた。

 ピアノの勉強もバイオリンのお稽古も。勉学に運動に音楽と、出来得る限りのことは全てやってきたと思っている。でも、身につかないことはとことん身につかない。才能と呼ばれるものは全てに割り振られないのだ。


「何をやっているんですか?! この程度もできないなんて」


 違う。わたしはやりたくてやってるんじゃない。

 わたしはお母様が思う理想のわたしを作り上げるために……。


「もういいです。後は好きになさい」


 突然放り投げられた教育。何が足りなかったのか。何がいけなかったのか。それを考えるには、恐ろしいほどの時間が必要だった。

 でもやがて考えることも面倒になり、思考することをやめた。

 空いた時間、何をすればいいか分からなくて、戸惑ったけれど、街頭のチラシで見た巷で話題のゲームというのに触れると、これにどんどんとのめりこんでいった。


 数々の景色に、人々。スキルに魔法にアイテム。その全てが新鮮で、わたくしの抱いていた考えなんて本当にちっぽけなものに思えた。

 この頃内気だったわたしの気持ちを打ち消すかのように、性格もどんどん強気になるように努力していった。

 わたしは運動するのが苦手だったし、あまり動きたくもなかったので、術士という道を歩んでいった。

 一般的な基礎魔法もわたくしには魅力的だったが、特に強大な魔法である《高等儀式魔術》に惹かれていった


 《高等儀式魔術》とは膨大なリキャストとキャスト時の待機時間である2分と言う制約の代わりに、お互いのステータス、状態に著しい変化をもたらす魔法だ。

 わたくしはこれを好き好んで使っている。理由? そんなのさっき言いましたわ。

 この膨大な待機時間のせいで弱い魔法として受け入れられていたことだ。わたくしはそれが許せない。存在しているのであれば、必ず使い道があるのだ。それをわたくしが引き出さなくて、誰が引き出すというのか。


「……当然ですわね。それ見たことかディスりふぁ◯く野郎」


 今日も《高等儀式魔術》で決闘に打ち勝った。また《高等儀式魔術》が強いということの裏付けができてしまった。うっとり。


「さて。これから手頃なモンスターを倒して、経験値にしましょうか」


 ドレスで登山などリアルじゃできないだろうが、ここではできる。ただちょっと身体が重たいというか、動きづらくて溜まったもんじゃないが。


「ん? あれは……」


 山頂付近。この辺ならある程度強いモンスターが居るだろうし、あの初心者殺しと名高い【ビャッコーン】がいる。適当に魔法をぶっ放して倒そう、と思ってた矢先だった。プレイヤーが1人で【ビャッコーン】と戦っているのだ。だが、見たところ動きはあまり洗練されていない。むしろ騎士のスキルでなんとか戦えている程度だった。


「仕方ありませんわ。今から助太刀に……」

「おりゃー! 《反逆の刃》!」


 肉をえぐるように【ビャッコーン】の首元に槍がねじ込まれる。驚いたことに、彼女は二撃で【ビャッコーン】をねじ伏せたのだ。


「初心者で、間違いありませんわよね?」


 怪しむわたくしを放っておいて、彼女はモンスターを剥ぎ取っている。まさか、ありえない。わたくしですら苦戦したモンスターですのに。

 彼女が去った後、わたくしの胸にはふつふつと負けていられないという思いが湧き上がっていた。戦ってみたい。戦って、勝利を勝ち取って、わたくしの魔法が最強であることを知らしめたい。


 実際に戦ってみた感想、動きは悪くない。盾持ちにしてはとても素早い。だけど直線的で動きを読みやすい。初めて2週間というのも間違ってはいないだろう。

 だからってわたくしが一撃貫かれただけでHPが持っていかれるのは予想していなかった。

 ありえなかった。だからわたくしはもうちょっと彼女を研究しようと思う。負けないように。違う、勝てるように。そして、わたくしの永遠のライバルにギャフンと言わせるように。


 ビターはわたくしの永遠のライバル。勝手に思っているだけだが、アイテムが一番であると豪語する姿勢は、わたくしの信念を邪魔する存在でしかなかった。

 彼女とわたくしは事あるごとに激突して、より険悪なムードへと変えていく。わたくしとしてはそういう関係ではなく、互いに切磋琢磨する関係を築きたいのに、口はそう簡単に素直なことを言えないのだ。


 でもレアネラがそれを変えてくれた。いや、変えるきっかけをくれた、というべきか。わたくしの方から歩み寄れば、きっと。なんて思ってしまったぐらいだ。

 あの子は本当に変な子だ。謎のスキルを持ってるし、ところどころ変だな、と思うところはあるが、それでもわたくしたちを気遣う想いは、本物だろう。

次から第2章が始まります。

もう2章は書ききっていますが、なかなかにシリアスです。

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