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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第1章 ぼっちの私がギルドを作るまで
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幕間2:旅の錬金術師の面倒くさいこと

 ――うちはこう見えても面倒くさいことは嫌いである。


 なんて言うつもりはない。誰もが面倒くさいことは嫌いだろう。あの子もこの子も。そしてあいつも。だからうちはあまり人と関わらないようにしていた。そうすれば厄介事には巻き込まれないし、1人の時間を謳歌できる。


 それでも人と関わらないと、お金を稼げないのは知っている。

 人と関わらないと、絆が生まれないのは知っている。


 前者はなんとかなる。適当にお金を払って、アイテムを棚卸ししてもらえればいい。

 でも後者はどうにもならない。だって自分から交流を断っているのだから。

 大学でもそうだった。うちはサークルにも入らず、かと言って真面目に勉学に励んでいたかと言われれば、あまりと言わざるを得ない。

 付き合いで飲みに行くことはあれど、積極的に誘うということはない。たいてい誘われて仕方がなく、だ。

 うちの生きがいは「エクシード・AIランド」というゲームで、アイテムのレシピを全部収集すること。膨大な量があるが、逆に燃えるというものだ。素材を入れて、調合して、アイテムを取り出して。それの繰り返し。それがこの上なくうちの性に合っていた。


 それでも面倒事というのは自然と舞い込んでくるもの。最初にやってきたのはあの【悪役魔嬢】と名高いノイヤーというプレイヤーだ。

 彼女は事あるごとにうちに突っかかってきて、アイテムをバカにする。うちが好きでやっていることだ。それを否定されるのはこの上なく許せなかったが、同時に彼女の魔法にはとても関心を抱いていた。

 特にノイヤーが扱う《高等儀式魔術》。この概念をアイテムにしようとしても、おそらく難しいだろう。そもそもそういったアイテムが存在するかどうかすら分からない。

 だからちょっとだけ。ほんの少しお近づきになりたいとは思っていたが、向こうがあんな態度なので、次第にこちらからも横暴な態度を取るようになってしまった。これは反省しなければならない。


 反省を生かした次はあのレアネラとアザレアの2人だ。

 初めは嗅ぎ回っているなという程度だったが、やがて招いた方が面倒が少ないのではと思い、こちらから招き入れた。これはただのうちの気まぐれ。普段だったらそのまま曖昧にして終わらせるだけだった。

 ただ、まさかあの時たまたま口を出した、重ね着も知らない初心者だったとは思わなかった。そのくせあの国家予算と言われるIPCを連れ回しているのだ。これほど意味の分からないプレイヤーはいないだろう。


 聞けば主従関係を断ち切るアイテムを探しているらしい。そんな物があるかと言われれば、分からない。ただ、IPCとプレイヤーは主従の関係にある。だからそれを断ち切るアイテムがあったとしても何ら不思議ではない。ただ、レシピを探すことは極めて困難であった。

 それを伝えると、事もあろうに、彼女たちはすぐに去ろうという。まったく辛抱のないやつだと思いながらも、次第に彼女の動向が気になっていた。交渉のこの字も知らないような下手くそさ。分かりやすさを顔で表した間抜けな表情。いいやつだとは思っても、ちょっとしたことで騙されやすい事間違いないだろう。


 だけど、そんな間抜けな姿に、うちは惹かれていった。気づけば言葉が勝手に口走っていて、いつの間にか彼女たちとビジネスパートナーとなっていたのだ。


「特別扱いなんて、よく言ったもんだな」


 特別なんて言葉、面倒事の極みみたいなことなのにだ。


「ノイヤーとの件も、いつかは礼をしないとな」


 ギルド結成の際に、彼女と険悪なムードになっていたところを取り持ってくれたのも彼女だ。

 多少なりともこいつといてもいいかもしれない、と考えをリセットさせてくれた彼女は、本当に面倒事しか呼んでこない。


 ギルドのことだって、本当は受けないつもりだった。うちにメリットがなければ、人と関わらなければいけない様なギルドに、何故入ることになったんだか。

 理由は分かってる。レアネラはうちがやらなければならないことを率先してやっている。面倒事を請け負い、人と関わり、成長することを。

 だからうちも目指したくなった。柄でもないが、それでもうちも社会に出るんだったら、そのくらいはできないといけないだろう。


「さて、今日は何を調合しようか。それとも、旅をするのも悪くない」


 久々に旅をしようか。【グロー・フラワーズ】のみんなと歩けば、今までより楽しい旅になるかもしれないな。

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