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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第1章 ぼっちの私がギルドを作るまで
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第3話:沈黙が気まずい私はNPCと喋りたい。

 アザレアを拾って初めて感じたことを言ってもいいだろうか。


「何があったらそうなるの……」


 相変わらず無感情な顔を見せるが、首を傾けているためなんとなく何が言いたいのかがわかる。

 これは、何言ってるんだこいつ。という感じだろう。


「アザレア、私これから宿屋に行きたいんだけど、どこにあるか知らない?」

「ここから一番近いところですと、サベージタウンの宿屋です。場所までは、すみません、分かりません」


 サベージタウンとは私がログインした街。

 冒険者やらアザレアとは違う普通のNPCやら、まぁとにかく人がいっぱいだ。

 匿って、と言われたなら、拠点となる場所は確保しておきたい。

 それともう一つ理由があるんだけど、この子気にもとめなさそうだから、今は言わなくてもいいか。


「よし、じゃあ探そうか!」

「お供します」


 私の半歩後ろを歩くようについてくるアザレアはまるでメイドのように見える。

 服装がメイド服なんだから、当たり前なんだけど。

 ご主人さまとか言ってたし、多分本当にメイドなんだろう。その扱いについては色々察することは多いが。


 匿うんだから、そういったことを根掘り葉掘り聞いておきたいけど、人には触れられたくないことだってある。それは人工知能が備わったIPCでも同じだろう。かくいう私もあまり友達がいない、なんて言いたくないし。

 それならやっぱり聞かないほうがいい。向こうから話してくれればそれでいいや。


 それにしても、お互いに何も喋らず歩くのはとても気まずい。

 もうちょっと仲良くなっておきたい。せっかくのIPCが今、目の前にいるんだ。もっとこう、あるでしょ。

 ……具体的なこと考えてなかった。うん、偶然だもんね。そこに目的なんて存在しないもん。

 とりあえず、仲良くなるために何がしたい~? みたいなことは聞いてもいいだろう。


「アザレアって、これから何したい?」

「……それはどういったご質問でしょうか?」

「いや、匿うーって言っても、私このゲーム始めたばっかだし、目標とか決めてなかったから、アザレアはどうなのかなーって」

「目標なんてありません。私はご主人さまの目から逃げたいだけですので」


 対話拒否かー!

 ま、まぁそうだよね。NPCが自分で考えて目標を定めるって聞いたことないし。

 せっかくだから私の行動指針にもしちゃえとか考えてたから、その答えは正直頭が痛い。


「どうしてそのようなことを私に聞くのですか?」


 不意の質問に後ろを振り向けば、心底分からない、と言った顔でこっちを見てくる。


「どうしてって、そんなの自由になったんだから好きなことしたいって思わない?」

「自由……?」


 あれ、なんかそんな変なこと言った、みたいな顔をされていますが、そんな事を言ったつもりはないんだけど。

 割と考え無しで言ってた気がするけど、あれでしょ? 実家ぐらしから一人暮らしになったから、家族の目を気にせずにいろんな事ができるとか、そういうことじゃないの?


「私は、自由になったのでしょうか?」

「え、違うの? 逃げてるなら、その間仕事とかに追われないし、自由を謳歌できると思うんだけど」


 なんか地雷踏んだかな。

 恐る恐るアザレアの顔を伺ってみるけど、その表情は考え事をしているように見えて、私なんて眼中にない感じだった。

 これは本格的に地雷踏みましたね、はいすみませんでしたー!


「ご、ごめん! なんか言っちゃいけないことだったよね」

「……いえ、そうではありません」

「そうなの?」

「私には自由という概念がありません。なので自由という言葉を検索していたところです」


 あ、そうなんだ。なんか拍子抜けしてしまう。

 なんだよもう。心配して損したと言うか、もうホントさっきの考えがバカみたいではないか。

 その答えがおかしかったのか、気が抜けてそのまま笑い始めてしまった。


「……何故、笑っているのですか?」

「い、いや。心配して損したなーって! ふふっ!」

「私でも少なからずバカにされているのは分かります」

「してないしてない! あはは!」


 怪訝そうな目でこちらを見てくるが、そんな様子もちょっとおかしくて。

 そっか、自由の概念がない、か。だからって検索するかな普通。


「後々考えていけばいいよ! それより宿屋に行こ! ふふっ!」

「納得いきませんが、あなたが言うのであれば……」


 それからはちょっとだけ会話が増えたと思う。

 とは言っても、自由とは何だとか、何故笑ったのかとか、向こうからそんな質問ばかり飛んでくる。

 ちょっと真面目すぎるというか、物を知らない子だが、それはそれで可愛らしい限りだと、私はそう思う。

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