第27話:結成したい私は準備をしたい。
「そんなわけでみんなに集まってもらったんだけど」
ここでイカれたギルドメンバー(仮)を紹介しよう!
まず最初に武器屋を営むお父さんキャラで唯一の男! アレクさん!
「見事に女所帯だな」
「私の知り合いってことだとこんな感じに、すみません」
「いいさ。おっさんとしては役得だしな」
魔法一番! 《高等儀式魔術》(なお本編中ではまだ未登場)なら右に出る者はいないゲーミングお嬢様! ノイヤー!
「まったく、これが一緒なんてありえませんわ」
「な、仲良くやってくれれば……」
「ツーン!」
アイテム一番! 噂の【旅の錬金術師】(なお旅してるところは見たことない)といえばこの女! ビター!
「それに関してだけ言えば、全くの同意見だ。別のに変えたほうが身のためだぞ」
「わ、私の知り合いこれしかいないので」
「なら紹介するから、これとはこれっきりに」
「あはは……」
意外と武闘派? 唯一のリア友。逆手短刀使いの元気娘、ツツジ!
「すっごく居づらい」
「ごめんホントごめんってば」
「レアが言うならいいけど」
紅一点ならぬ、N一点! 国家予算のメイドはここまで来た! 実はギルドメンバーじゃないけど、実質メンバー! アザレア!
「これが、いたたまれない、と言う気持ちでしょうか?」
「多分、気まずいって感情だと思うよ」
「なるほど。把握しました」
そして私。割と普通枠のレアネラ。
ある程度予想はできていたけど、こうして顔を突き合わせるだけで、こんなにも嫌悪感を示せるんだ。逆に感動しちゃったよ。ここは全く感動するところではないのは百も承知だけど。
「それで、ギルド名はどうするんだ?」
「え、ギルド名?」
「当然、ノイヤー伯爵とその従者たち。で決まりですわ!」
「ありえないな。旅の錬金術師と不思議なアトリエ以外ない」
早くも一悶着である。これはRTA狙えるのではないだろうか。というかギルド作るとは言っても、ギルド名も、ギルドマスターも決めてなかった。これは大きな失態だ。もっとも、さらに大きな失態は目の前にあるんだけども。
「まぁまぁ。ここはギルマスのレアネラに決めてもらうしかないな」
「私がギルマスかー。……って私?!」
「うちらを集めたのはキミだし、キミ以外ありえないだろう。うちがギルマスなんてキャラではないし。これにできるとは思えない」
「なんですと?!」
今にも火花が切って落とされそうな勢いだ。こんな険悪なムードの中、会議しなくちゃいけないの……。
「結局魔法なんてSPがなければ使用できない中途半端なもの。誰にでも扱えるアイテムこそが至高だ」
「そちらこそ、アイテムなどナンセンス! 使えば消えてしまう消耗品などトイレに流してハイおしまいですわ! 比べて魔法はSPがあればいくらでも使用できる。やはり魔法こそが一番ですわ!」
うわ、関係ない言い争いを始めてる。アレクさんもツツジも、アザレアでさえオロオロと周りに助けを求めようとしている。というか私もだったわ。
「くだらんな。うちは一抜けさせてもらう」
「臆病者はすぐ逃げますのね!」
「キミの低能さに呆れて物も言えないだけだよ」
「ムキー! おかえりあそばせ、バーカバーカ!」
ビターが席を立つと、そのまま店から出ようとする。そこを私が引き止めるけど……。
「申し訳ない。だがあれとは和解できないんだ」
その表情は少し寂しそうな感じもした。そんな顔されたら引き留めようにも、止められないじゃん。引き止めた手をすり抜けて、彼女は町の喧騒へと消えていった。
「清々いたしましたわ! あれなんかと、仲良くできませんから」
「……その割には随分しょんぼりした顔するね、ノイヤー」
「ツツジ、何を言っておりますの?」
「無意識か」
ツツジも何か察したようにノイヤーの機嫌を伺うが、結果は芳しくないようで。
「今日は解散にするか。各自ギルド名を考えてくるってことで」
「はい、分かりました」
「失礼いたしますわ!」
足早にノイヤーもこの場から去る。残った4人は顔を突き合わせて、なんとか2人を仲直りさせられないか考える会議に突入しだす。
「で、どうするんだ、あの2人」
「正直、別の人探した方がいいよねー」
「ですがそれでは……」
「分かってる。せっかくレアが集めたんだから、このメンバーで行きたいよ」
アザレアの言わんとしてることは大体わかってる。別の人を探した方が確かに早い。だがその場合どちらか片方を選ばなければならない。選ばれなかった方はきっと寂しいだろうし、私ともう付き合ってくれなくなるかもしれない。そう考えると、やっぱりこのメンバーで行きたいんだ。
「でもどうするんだ? 無理やりって言っても、今みたいに喧嘩は間違いないだろうし」
「お互いのことを理解できればいいんだけどなぁ」
2人とも本心ではきっと仲良くなりたいんだと思う。でなきゃあんな寂しそうな顔はしない。忘れられないあの顔を、私はなんとかしたいんだ。
「王道に決闘でぶつけ合う、ってことはもうしただろうし」
「でしたら、一緒に協力する、というのはいかがでしょうか?」
「協力?」
アザレアの提案に3人が疑問を抱く。
「はい。協力して戦うというのは、相手のことを強く理解しなければなりません。背中を預けるもの同士ですから。共に戦って、お互いに理解を深めることができれば、仲良くなることも可能かと」
「すごい。すごいやアザレア! それで行こう!」
残りの2人も納得したように頷く。
作戦は私、ノイヤー、ビターの3人でドラゴンを狩りに行くこととなった。理由は私が戦いたかったのと、アレクさんが素材が欲しいから、とのことだった。
盾は臨時で安いものを買っておいて、あとは2人を呼び出すだけ。ノイヤーはツツジに任せるとして、私はビターを呼ぶことに。
「って言っても、やっぱりドアは開かないか」
いつもの魔法陣の上に乗っても起動はしない。これ、私が説得に来ると思って一時的にドア閉じてるな。
「どうしよっかなー。やっぱりこれか」
メールを開くと、ドラゴン退治に行くからビターもどうか? と聞いてみる。嘘はついてない。ノイヤーがいるとは言ってないだけで。
「どうかな。来るといいなぁ」
とりあえずドラゴン退治は明日だし、今日のところはギルド名を考えながら、一旦落ちよう。
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