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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第1章 ぼっちの私がギルドを作るまで
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第19話:おつかいする私は変な人と会いたくない。

新キャラ登場。面倒くさい子です。

 ◇

誤字のご報告ありがとうございました。

気になって調べてみましたけど、植物の数え方は◯個や◯本が正しいみたいですね。

思いっきり葉っぱで数えてました。

 翌日、ビターのアトリエに行くと、当たり前のように買い物メモを渡してくる。

 ここ最近の日常になりつつあるけど、こうして無遠慮にお願いされる辺り、向こうも親しくなったと思ってくれてる、ということなんだろうか。


「今日はこれ、頼んだ」

「相変わらず人使い荒いなー」

「良いビジネスパートナーだからな。ほらさっさと行った」


 だらけた返事を差し出すと、そのまま町へ出向くことになった。面倒だけど、頼まれごとだししょうがないかな。

 あ。そういえば、買ってくるもの何なのか見てなかった。見ておこっと。


「えーっと、牛乳、砂糖、バターに卵って、これクッキーのレシピかと」


 あの人クッキー作るの? 意外というか、いや意外すぎる。錬金術のためーとか言えないでしょこんなの。


「なんて、可愛らしいご趣味を……」


 仕方ないなー。きっちり買って帰らねば。あわよくばクッキーを私の胃袋にしまわなければ……。


 ちなみに、これは後で聞く話なんだけど、別にクッキーを作るレシピではなかった。たまたま錬金術のために必要だっただけであり、本人曰く「うちがそんなにお菓子を作る人間に見えるか?」とやや呆れ気味に言われたのは言うまでもない。

 それでもビターが作ったクッキーってどんな味するんだろう。やっぱりビターだけに、苦いのかな。って思ってたりはしてた。


「これと、これください」

「はいよ!」


 町で買い物をするのにも慣れてきた。最初はウィンドウから注文するので、なんか現実と違ってやりづらいなと思ってたけど、慣れれば逆にこっちのほうが楽なことすらある。


「ありがと!」


 NPCにお礼を言うと次の店に向かう。この程度なら自分で買い出しに行けばいいのに。面倒くさがりめ。と思ってた矢先だった。


「そこの赤いの! お止まりあそばせ!」


 突然後ろから大きく、そして妙に通る声が聞こえた。そんな響く声で怒鳴られ、内心ヒヤヒヤしながら振り返ると、ゴテゴテのドレスを着こなした金髪碧眼の美少女が恨みを込めた視線とともに、こちらを指差していた。いや待って、思ったよりも小さい。中学生ぐらいかな?


「……え、私?」

「あなたしかいませんわよ! 勝負ですわ!」

「しょうぶ?」


 しょうぶって、あの勝負だよね? 私なんかしましたっけ? 最近は特に何もしてないと思うんだけど。というか、お止まりあそばせ、って何語よ。


「ごめん、今買い物の途中なんだけど」

「そんなもの後回しでよくってよ! 早くわたくしと勝負ですわ!」


 こんな辻斬りまがいなことをする人いるんだ。いやそれより待ってほしい。辻斬りでももうちょっと穏便に事を済ませるはずだ。ここは大通り。みんなが歩く往来でそんなにも大きく通る声を振りかざしてみなさい。みんなどよめくでしょうよ。


「いや、そういう気分じゃないし。警備隊呼びますよ?」

「け、けいびた……ッ! そんなことをしたら、あなたの秘密をおもらしいたしますわ!」

「秘密……まさか?」


 この人の変なお嬢様口調はさておき、秘密って『あの』称号のことだよね? 確かにこんな往来で高らかに宣言されたら、この後のVRMMO生活が非常に面倒なことになること間違いなしだ。どうしよう、正直関わりたくない相手だけど、しょうがないか……。


「……分かったよ」

「聡明な判断ですわね、さっさとコロシアムに行ってぶっ◯して差し上げますわ!」

「その代わり、明日にさせて。私、この後リアルで用事があるの」

「おっと、それは失礼しましたわ。では明日、20時にコロシアムでお待ちしておりますわ! オーッホッホッホ!」


 テンプレートで古臭いお嬢様笑いと手の角度。あれはかなりこじれてるなぁ。本当に関わり合いたくなかったのに。嘘をついてなんとか時間を確保できたし、おつかい終わらせて、早くビターのところに戻ろう。


 ◇


「……というわけ」

「キミは本当に厄介事しか持ってこないな」


 机の上で肘をついて頭を抱えている。最近、私が相談事を持ちかけると決まってこれだ。今回の件だったら私も分からなくはないけど。


「だがいい嘘だ。その間に対策を練るとしよう」

「でもあの人、名前は言わなかったから、ユーザー名分からなくって」

「あー、あれは有名人だから特に調べなくても名前は分かる」


 え、有名人なの。あれがそんなのでいいのかな。……あれだから、そんななのかな。


「ユーザー名はノイヤー。金髪碧眼でちんちくりんの特徴的なドレス付きならだいたいあいつだ」

「知ってるんですか?」

「前に何度か対面してな。気になったやつに片っ端から決闘を仕掛けて、勝てば自分の自尊心を保てるって言うタイプだろう。はっきり言って面倒くさい」

「あれはビターじゃなくても面倒くさいね」


 私でもそう思ったんだから、ビターはそれ以上。もしかしたら頭痛で頭がどうにかなるレベルで面倒くさいと思ったことだろう。


「ただ実力は大したものでな。《高等儀式魔術》じゃあいつの右に出る者はいない」

「こうとう、なんて?」


 なんか前にヘルプで見たような気がするけど、思い出せない。


「《高等儀式魔術》だ。最初の発動までの時間こそ長いが、使用すればどんな戦況も必ずひっくり返せると言われる大型魔法だ。こっちに映像があるから見ておけ」


 言われたとおり数分ある動画を見ていると、最初のうちは魔法での攻防を繰り広げていたが、突然コロシアム内に魔法陣が浮かび上がり、相手の動きが目に見えて鈍くなっていく。そして無抵抗な相手を殺戮するように散々いたぶった挙げ句、散り際はあっけなかった。


「ヒェ……」

「これは、酷いですね」

「これが奴のやり方。無抵抗な敵を完膚までに叩き潰す。付いたあだ名は【悪役魔嬢】。悪役令嬢に魔女とか魔法とかの魔をくっつけただけだろうがな」


 【悪役魔嬢】。とんでもないのに絡まれてしまった……。しかもめっちゃ強そうだし。はぁ、初めてのPVPの相手がこれって、私どんだけ運が無いのよ。


「まぁ先手必勝が無難だろうな。キミは速度もあるし、何より攻撃力も……あ」

「ビター、どうかした?」

「このノイヤー様はおそらく魔法タイプです。なので自身の攻撃力はあまりないかと」

「え、でもあんなに魔法バンバン撃ってたのに? 痛そうだよ?」

「魔法は自分の知力を参照するスキルが多い。だから術士は攻撃力に振ることはあまりしないんだよ」

「う、うそーん!」


 いやでも、相手の攻撃力を参照する《略奪》は使えなくても、他のスキルで補える範囲だと思うし、何より私には――


「《反逆の刃》。これが鍵になるな。自分のHPが相手よりも低くなるように立ち回れ。そうすればいつか当たって、相手は死ぬ」

「こんな作戦でいいの?」

「そんな作戦しかないだろう。ま、明日までにスキルをかき集めておくことだ!」


 この人、他人事だと思って笑いやがって……。

 まぁいいか。とりあえずできることをやって明日につなげよう。

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