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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第1章 ぼっちの私がギルドを作るまで
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第16話:探す私は旅の錬金術師に聞きたい。

レアネラの高度な交渉テク(?)が光る回です。

あと旅の錬金術師も登場します

 大変ムスッとした顔の少女が、いかにも気分を害したと言わんばかりの表情を浮かべている。


「話はだいたい魔法陣の上で聞かせてもらった」

「え、魔法陣って、あれ?」

「そうだけど。あれはいわばドアみたいなもの。うちがイエスといえば、ドアが開いて、こっちに渡ってこられるってわけだ」


 なるほど。旅の錬金術師のアトリエの秘密が早速明らかになった。

 おそらくあの魔法陣がこの世界の至る箇所にあって、そこから出入りしているのだろう。なにそれ便利な魔法。ほしい。


「ま、いいや。主従関係を断ち切るアイテムだったか? 流石にないと思うな」

「なんかふわっとした言い方だね」

「そりゃそうだ。このゲームのレシピはそれこそアイテムの数だけある。キミ、このゲームにいくつのアイテムがあるか知ってるか?」


 そんなこと言われても。いくつだろ、百個くらい? そんな事を言うと鼻で笑われた。何だこの娘さんは。


「通説では一万以上と言われてるの。だから全てのアイテムの中から、特定のレシピを探すなんてことは無理ってことだ」

「……もしかして、それを言いたいがために私たちをこっちに呼んできたの?」

「そういうことになる。うち面倒事が嫌いだ。面倒はさっさと処理して自分の世界に浸りたいわけ。おーけー?」


 これはまた、面倒なタイプと対面してしまった。わざわざ呼んで、教えてくれる辺り親切な人ではあるんだろうけど、言葉の端々が刺々しくて、ちょっとだけピクリと反応してしまう。この子友達いないな。私は最近できたかもしれないから、ちょっとだけ優位に立った気分だ。


「分かった。じゃあ帰らせてよ」

「うん。……ん?」

「アザレア、そこで本整理してないで行くよー」

「ちょっと待て。キミ、そこで諦める気か?」


 え、なんか選択肢ミスった? 諦めるって、元よりそれしか方法がなかったら、頼らざるを得ないんだけど、諦める以前に漠然とした方法しか思いつかなかったから、頼っただけ。帰ってまた考えればいいだけだし。


「うん。だってあるかどうかも分かんないものだし」

「そんな事言ったって、もっとこう、必死になる理由とかあったりするだろ」

「じゃあ言ったら協力してくれる?」

「いや、それは……」


 ほら、すっごく嫌そうな顔してる。強行しても成果が出なかったら問題だし、それこそこの子に迷惑かけちゃうし。それだったらいいかなって思ったんだけど。


「無理強いはできないし、いいよ、うん」

「ちょ、ちょっと待て!」


 立ち去ろうとする私たちを三度止める彼女。いったい何がそこまで彼女を駆り立てるのか。


「うちは錬金術師だ。必要とされれば、どんなアイテムでも調合してみせるつもりだ。それがなんだキミたちは。そのアイテムが必要なくせに、迷惑がかかるからとか、今すぐ必要じゃないからとかで、その道を閉ざそうとする」

「……よく分かったね」

「キミの顔に書いている。キミは分かりやすいと言われることが多いだろう?」


 確かに言われたことがあるんだけど、ツツジの件はあの子が勘が鋭い人だからだと思ってた。まさか私が分かりやすいなんてそんな。


「うちは分かりにくいとは言われるが、それ相応の報酬を用意すれば協力しようと言っているんだ」

「え?! いや、うーん……」

「キミ、ここまで言ってもまだ渋るか」


 なんというか、分からなくもない。この子が多分親切心で言ってくれてることを、私が無下にしようとしているってことが。

 でも、私があんまり対人経験ないからなのかな。胸の中にふっとよぎるワードを口に出す。


「だって、嫌な相手に無理やり迫っても、嫌だって思うし」

「…………はーーーー」

「なにそのめっちゃ深いため息?!」


 そんなに変だったかな、私?! というかかなりがなってるため息だったんだけど! 怖いんだけど!

 と思っていると、私のメール欄に一通のメッセージが届く。内容は目の前の子からだ。


「キミだけ特別扱いしてやると言ってるんだ。それはうちの連絡先だ」

「え、これって?」

「ここまで交渉ベタな人間を初めてみたお礼だ、受け取れ」

「いいの?」

「タダでとは言わん。代わり、うちに協力しろ。これが条件だ」

「……っ! 錬金術師さん!」


 歓喜のあまり抱きつこうとして、足が一歩動いてしまう。いかんいかん。相手は子供だ。


「それと、うちの名前はビターだ。ほら、キミたちの名前は?」

「あ! えっと、私がレアネラで」

「私がアザレアと申します」

「あぁ、よろしく頼む。……そうか。IPCか」


 やっぱり我慢できない! 私は走り出すと、持ち前の速度とともにビターに抱きついた。


「ちょっ! レアネラ、離れろ!」

「嬉しいから、このままでいさせて!」

「断る! アザレア! どうにかしろ!」

「アザレアも入るー? って痛い痛い!」


 アザレアがとんでもない力で肩を掴むと、ビターから私を引き剥がした。そんなに力強くやんなくたっていいのに……。あ、ちょっとダメージ入って、HP減ってる。


「まったく。これから良いビジネスパートナーとして、よろしくな」

「……うん、よろしくね!」


 差し出された手に沿うように握手する。

 よかった、これでもしかしたら主従関係を断ち切るアイテムを作れるかもしれない。アザレアが自由になれるかもしれないんだ。よし、なんかやる気出てきたぞ!


「ビター! 何か手伝ってほしいことは」

「とりあえず帰り方を覚えて今日は帰れ」

「えー、そんな事言わずにー」

「うるさい! 黙らないなら連絡先返せ!」

「やだ!」


 こうして、私の日常にまた一人彩りが加わったのでした。

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