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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第7章:私とあの子の想いが繋がる時まで
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第141話:漁る私は彼女の決意を聞きたい。

「テーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるなぁー!」

「どっちかと言うとゴミ屋敷じゃない?」

「レアもなかなか酷いこと言うね」


 そんなわけでやってまいりましたビターのアトリエ。

 ツツジが企んでいたこと、もとい彼女の目的はとにかく状態異常をかけて相手のステータスを下げることだ。この中には猛毒状態によるスリップダメージや、スタン状態などの身動きを取れなくする状態異常も含まれる。

 しかし、どれが効くのか分かってないのでとりあえずビターの持ってるアイテムを全部ぶっかけてやろう、というのが作戦だったりする。


 ちなみにパルさんが攻略情報を掲示板に流してくれているので、しばらくしたらどの状態異常が有効か、などは連絡が来るはず、と言っていた。

 パルさんやマリクさんは初めて会ったときが謝罪だったから、印象なんてよく分からなかったけど、基本的にはいい人みたいだから安心した。ノーハーツにそそのかされてって感じなのかな。


 とは言え、この「すでに強盗に何かされたのかもしれない」というぐらい汚い部屋からどうやってアイテムを持ち出せばいいのやら。


「初めてきたけど、酷いわね」

「そうですね。これは先に掃除してからの方がいいかもしれませんね」


 掃除したほうが早いかもしれないが、この量はもはや大晦日の大掃除レベルだ。6時間あっても、間に合うかどうか……。


「二手に別れましょう。あたしとツツジちゃんでアイテムを探すから、3人は掃除して」

「えー」

「任せてください。チリ1つ残さず消滅させてあげます」

「アザレア、なんか人が変わってない?」


 実はアザレア1人で十分なんじゃないだろうか。ほら、いつもここを掃除しているわけだし。そういうことじゃない? なーんだがっかり。


 ◇


 ということで私たちはアイテムボックスから持ち物を漁ることをし始めた。

 気になるのはティアが「二手に別れましょう」って言った時に、片目をパチパチと閉じたり開いたりして、私にアイコンタクトを取ってきたことだ。

 まったく、どういう要件なんだろう。あ、これ敏捷上昇か。個人的に持っていこ。


 気分は盗人。しばらく部屋を空けると言った方が悪いんだもんねー、へへ。

 あ、こっちはダーヴィンスレイブか。これは、流石にやめといた方がいいかな。


 アイテムを探っていると、ティアが妙にチラチラと周りをキョロキョロ。今やってることも踏まえると、相当不審だ。私でなくても警察に通報してしまうレベル。嫌だわ、怖いわね奥様。


「ツツジちゃん、いいかしら」

「あー、なに?」


 ついに私に聞いてきたぞー? 表情はかなり真剣な様子だし、そういう相談だってことは分かる。


「あたしね、くまちゃんに告白しようと思ってるの」

「ホント?!」


 大きな声で驚いてしまったが故に、熊野を含めて全員の視線が私の方に向く。ぃやっば。


「あー! あー、なんだろう。なんかものすごい性能のアイテム見つけちゃったなー!」

「ツツジ、声荒げるならもうちょっとおとなしくしてよ」

「ご、ごめん」


 なんで私が謝らなきゃいけないんだ。そもそもティアが変なことを言わなければよかったんだよ、まったく。

 3人の意識が掃除の方向に向いたのを確認したところで、ギリっと親の仇を見る目でティアを見た。ティアが怯えてる怯えてる。


「ごめんなさい……」


 そんなにショボーンと一昔前の顔文字みたいな表情されたら、私も少しやりすぎたかなって思ってしまう。

 心の中で少し罪悪感をいだきながらも、脱線していたティアの話を聞くことにした。


「あたしがフラれたってことあったじゃない?」

「言ってたっけ、確か。めっちゃくちゃ尽くしてたって話」

「うん。それ以来、なんというか人を少し避けてたのよ。ちょっとだけ怖くなってね」


 それは、なんとなく分かるかもしれない。あんだけ良くしてくれたレアが実はそんなに私のことを好きではなくて、それどころか迷惑がられていたなら、もしかしたらそんな結末もあったかもしれない。

 ありえたかもしれないIFは私にも通じるところがあり、同情の余地があった。


「でもくまちゃんと出会って、最初は軽い話し相手になってくれないかなって思ってナンパしたんだけど、そこからズルズル」

「ティアって依存するタイプの人間だよね」

「ツツジちゃんに言われたくないわよ」

「そうかなぁ」


 確かにレアに依存していると言われたら、してると思うけど。ティアほどじゃないでしょ。


「その時言われたのよ。『話し相手ぐらいにはなってあげます』って。それがあたしがただただ望んでたことで嬉しくなって、その時に一目惚れって感じよね」

「うわ」

「何よ、その『うわ』は」

「いきなり惚気話聞かされてると思って」


 失礼しちゃう。なんて言いながら、私の腕を肘で突いてくる。だってそうだよ。私はそういう話しないし。まだくっついてないのもあるんだけど。


「それでこの前のツツジちゃんの説得よ」

「あー。あれで色々ぶちまけちゃったもんね」

「これじゃいけないって思ったのよ。止まってばっかじゃいられない。進まないと、歩かないと、あたしが欲しいものは掴めないって」


 ティアは小さく拳を握って決意していた。それは必ずしも小さな決意ではなく、勇気のいることだと思う。私だって告白する時はとても勇気がいた。だからきっかけが欲しかった。例えば……。


「あたし、冬将軍を倒したら告白するわ」

「うん、いいと思う。きっかけとしては十分だね」

「でしょう! 丁度いいと思ったのよ、クリスマスだし」

「ロマンチックだと思うよ、聖夜の夜に告白だなんて」

「ありがと。まずは冬将軍を倒さなくちゃね」


 そうだった。そのために私たちは今強盗まがいのことをしてるんだし。

 今は見ていないけど、成果出した時にアイテムが少なかったら、何やってたのさってレアに怒られるかもしれないし。今はそれも悪くないなんて思ったけど……。


「じゃ、全力で冬将軍をぶっ飛ばさないとね!」

「えぇ。あたしの恋愛成就のためだもの」


 握っていた拳をお互いにコツンと響きさせた。

 残り時間はいつの間にか5時間ちょっと。さてと、本格的にこのアイテムボックスを片っ端から漁らなきゃ。この量はちょっと骨がいりそうだ。

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