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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第1章 ぼっちの私がギルドを作るまで
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第13話:釣りをする私はヌシを釣りたい。

「ヌシヌシヌシヌシヌシヌシ……」


 妙にやる気に見えるが、実際は釣り糸を垂らして、引っかかるたびに釣り上げる繰り返しだ。

 どうやら敏捷力が高いだけではヌシは釣ることができないらしい。当然と言えば当然だが、魚を釣った数だけ釣りレベルも上がっていく。これが上昇していくにつれて、ヌシの確率も上がっていく、という寸法だ。


「だから今は釣るしかない……」

「やる気になっているところ失礼ですが、お時間は大丈夫でしょうか?」

「え、時間? ……やば。急いで宿に戻ろう! そしたらまた明日だね!」

「えぇ、そうですね」


 片付けて、走って、モンスターを蹴散らしながら宿に戻っていく。

 いや便利だなぁ。槍と盾持って走ってるだけで、雑魚敵程度ならそのまま経験値になってくれる。問題はアザレアを置いてけぼりにしたり、ちょっと強い雑魚敵が出たとき、対処に困ったりするぐらいのもの。アザレアが置いてけぼりになるのは大問題だけど。

 というところで、宿にたどり着いて、ログアウト。


 翌日ログインして、釣りして、ログアウト。

 これを繰り返してだいたい4日ぐらい経った頃だろうか。アイテム屋のおじさんが言ってた数日後になってるけど、やっぱりヌシが釣りたい。今の私の思考はただそれだけに支配されていた。


「よし! 今日も釣るぞ!」

「レアネラ様の釣りレベルなら、そろそろ釣れるようになるかと」

「ホント?! よーし、今日こそは!」


 実際、釣りレベルもいい感じになってきたのは感じる。だって釣れる魚の頻度が最初と比べて更に上がってるし。おかげでアイテムボックスの中身はほっとんど魚だけだけど。

 あとで塩焼きとかにして貰お。そしたら美味しいだろうし。あ、また釣れた。


「今日は好調ですね」

「だね。このペースでヌシの圏内まで行きたいんだけどなぁ」


 釣れれば釣れるほどヌシにたどり着く確率が高くなる。だから釣って釣って釣りまくってるのだ。これがリアルだったらこの辺一帯の魚たちは壊滅していることだろうが、デジタルだからそんな事はお構いなしだ。


「よいしょー! 十匹目!」

「そろそろ来るかもしれません……」

「その時は手伝ってね」

「はい、喜んで」


 手先に神経を集中させる。ヌシというからにはやはり大きい魚だろう。その時の食いつきはきっと、とてつもなくぅ?!


「これ、重たい! 引っ張られるー!」


 なんて力強さだ……ッ! 魚にここまで引っ張られるのは初めてかもしれない。これはもしかして、もしかするかも!


「手伝います!」

「お願い!」


 ジタバタ暴れるヌシらしき魚を制圧するために、二人がかりで竿を引っ張る。くぅっ! 重たい! これほど重たいなんて……っ!


「このっ! このぉ!」


 強引に引っ張っても糸が切れてしまう。少しでも、疲れたところを引っ張り上げるんだ! これは体力勝負。リアルだったら絶対にできなかっただろうが、今はいくらか力持ちだし、何よりアザレアだっているんだ! こんなところでダサい真似できない!


「……っ! 今です!」

「取ったーーーーーーー!」


 思いっきり竿を振り抜いて、魚を釣り上げる。

 それは黒くぬらぬらしていて、ひょろ長いが、確実に生命力を感じさせるヌシと呼ばれる存在だった。


「つ、釣れたーーーーーーー!」

「おめでとうございます!」


 アザレアに手のひらを差し出すと、どうやら何をしていいか分からない様な反応を取られる。


「ハイタッチだよ、ハイタッチ! 手のひら同士をパチンってする!」

「あの、いいのでしょうか?」

「いいもなにも、2人で釣ったんだよ? ほらハイタッチ!」

「……そういうことではないのですが、レアネラ様がそういうのであれば」


 彼女がやや恥ずかしそうに手を差し出すと、軽くパチンとお互いの手を叩く。んー、友情を感じる。私がほぼ強引にハイタッチさせた、みたいなところあったけど。

 とてつもない達成感の後には、やっぱり精神が冷静になってくるもので。


「……ところで、このヌシってどうすればいいの?」

「錬金術なんかに使えるそうですが、今の所食べることしか」

「ヌシを食べるのは、流石に恐れ多いかな」


 これまで勢いだけで釣り上げてきた後にやってくるのは、やっぱり虚無感でした。数日間なにやってたんだろう、私……。

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