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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第1章 ぼっちの私がギルドを作るまで
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第10話:リアルの私はぼっちを卒業したい。

「熊鍋、美味しかったなー」


 むふふ、と気持ち悪い笑みを浮かべながら、学校に登校する。

 とは言え、週明けの月曜日。辛くならないわけがなく。今日から5日間は昼間ログインできないし、家事とかも貯まらないようにしたいし、ログインの時間遅れちゃうかなー。


「家政婦ほしい……」


 リアルにアザレアがいてくれたら、ここの掃除やっといてー、とか。今日は豚肉が安いから豚肉ともやしのにんにく醤油炒めが食べたい、とか言ったら、作ってくれるんだろうなー。はぁ、無い物ねだりとか、どうしようもないな私は。


「それにしても今日帰ったら何しよっかなー。流石に装備とか整えたいしー、モンスター狩りしたいし」


 思い返してみれば、この二日間全然VRMMOらしいことしてない気がする。もっとモンスターを倒したりするもんだと思ってたけど、やったことと言えば、NPCをシャワールームに入れたり、熊鍋食べたり。本当にゲームしてる? なんか自由すぎません?


「今日こそはまともなことしたいよねー」


 教室に着くと、かばんを置いて早速スマホで検索する。内容は「エクシード・AIランド」の攻略情報。と言っても、私は本気でやるつもりはないから、ゲームのシステムとかを理解するのが目的なんだけど。

 それにしても、意外といろいろあるんだなー。必殺技スロットを使うことで、オリジナルの必殺技を作れるんだ。今のゲームってすごいなー。他にも錬金術機能とか、高等儀式魔術とか、様々なシステムがあるけど、流石に全部は網羅できないね。

 私はどっちかと言うと戦いたいけど、まったりスローライフを楽しみたいし。キャンプとかもいいかもしれない。熊と戦ったときもキャンプ立てたけど、あれとは別に焚き火を囲みながら、みんなで談笑したり、食卓を囲んだり。それすごくいい! 私にフレンドができればの話だけど。

 一応いるにはいるけど、割と成り行きだし、アレクさんってそういうことやらなさそうなイメージあるし。


「みんな、どうやってフレンド作ってるんだか」


 思わず口に出してしまうけど、誰も聞いてなさそうだし、私もスルーしておこう。

 やっぱ臨時のパーティ組んだときに成り行きでとか、この人強いから、とかなのかな。

 私みたいに、本当に友達になりたいなんて思うことって、あるのかな。その辺私は疎いから、みんなはどうしてるのか気になってしまう。


 例えばそこの青い髪の子たちのグループ。あの子達ってどうやって友達になったんだろう。ぱっと見、青い髪の子は陽キャだし、他の子も髪染めててチャラそうに見える。でも中にはちょっと地味目の子もいるし、なんとも謎だ。

 そんな彼女たちを私はスマホ越しにじっと見てるけど、この距離じゃ会話が全然聞こえてこない。流石に机の最前列と最後列じゃ聞こえない聞こえない。どうしよ、観察するのやめようかな。


 ――でも、そう思ったその時だった。彼女がこちらを見たのは。


「んっ!」


 偶然視線に気づいたんだろうけど、いきなりこっちを見るもんだから、びっくりして机を足でガタッと動かしてしまった。その様子がおかしかったのか、くすりと笑って元の会話に戻っていった。

 え、なに。今笑われた? ごめんなさいね、私がびっくりして机ガタつかせちゃって! ってなんでキレてるんだ私。

 机さんにごめんなさいして、再びスマホで検索を始めた。


 ◇


 だが、事件はここからも続く。

 昼休み。ご飯をさぁ食べようと、かばんからお弁当を取り出したタイミングで、彼女はやってきた。


「ねっ、一人?」

「へ? あ、うん」

「じゃ、一緒に食べよ!」


 グイグイ来るなこの子。私の有無も言わずに縮地で距離を詰めてきたぞ。

 というか、今朝私が見てたの気づいてましたよね。何のつもりなんだろ……。


「幸歩ちゃん、今朝私のこと見てたけど、何かあった?」

「い、いやなんにも。というか名前……」

「クラスメイトだもん、覚えてるよ! 吉田幸歩ちゃん、でしょ?」

「う、うん」


 やっば、クラスメイトでも名前覚えてないよ。覚えててもクラスの委員長の名字ぐらいだよ。どーしよ、名前知らないですとは言えないし。


「私の名前、知らないでしょ」

「い、いやー? そんなことないけど」

「じゃあ言ってみてよ」

「……ごめんなさい、教えて下さい」

「素直でよろしい」


 完全敗北である。く、悔しい。でも分からないものはしょうがないのだ。


「私は石原ツツジね! 以後お見知りおきを~」

「石原さん、ね」

「ツツジ!」

「そこ気にするところ?」

「ところ!」


 変わった子だ。初対面でファーストネームを要求してくるとは。


「じゃあツツジ」

「ん! よろし」


 なんというか、テンション高めで疲れる。このタイプの子と話すの初めてだから、どうにも距離感が探りづらいと言いますか。はっきり言おう。若干苦手かもしれない。

 でも、見た目がどことなくアザレアに似てるっていうか。髪の色が青だからかもしれないけど。


「で、今朝なんで見てたの?」


 ……極力言いたくないんだけど。


「な、なんででしょ~」

「スマホ越しに見てたし、おおかた友達いて羨ましいなとか?」

「……ツツジはエスパーか何かで?」


 当たったことに喜んでいるのか、よしっ! とガッツポーズを目の前でされる。それはそれで嫌なんですが。


「なんとなくかなー。あの子達は全然友達じゃないし」

「そうなの?」


 なんとなく意外だ。こういう子ってすぐ友達ができそうなのに。


「昔から勘だけは鋭くてさ。私は空気読んで友達してるの」

「……今の話聞かなかったことにしていいかな」

「あー、さっちーには特別だから。ね?」


 地味にあだ名で呼ばれたりしたけど、ここまで距離を詰めて特別って言われると、なんかそんな気がしてならなくなるからやめてよね。


「特別って、初対面だよね」

「だよ。でもさっちーからはなんか同類の匂いがするし」

「なにさ、同類って」

「友達いないもん同士?」

「ちょっと傷つきました。リスカします」

「やめてやめて! 目の前で血をブシャーされたくないー」


 なんですか友達いないもん同士って。私は結果的に友達の作り方知らないだけで、会話だってほらこの通りできるもん。あなたと一緒にされたくないなぁ。


「あ、今一緒にされたくないって思ったでしょ」

「……違うの?」

「ジト目かわい! 私には心から友達って言える人がいないだけ。って、お昼になんの話してるんだか」

「それ。ご飯食べよ」


 後はいただきますをして、ご飯を食べたり、喋ったり。

 そういえばこんな話も聞いた。


「さっちーってゲームやったりする?」

「うん。最近エクシード・AIランドっていうの始めたよ」

「ホント? 私もやってるんだ!」

「おー、エク友だー」

「エク友? 初めて聞いた」

「私も初めて言った」


 なんとエクシード・AIランドをやっているらしく、その話題で話が膨らんでとても楽しかった。

 でもアカウントは教えてくれなかったのなんでだろう? やっぱりネットはネット、リアルはリアルって考えてるのかな。


 そんな感じでお昼休みでの楽しい会話はチャイムの音とともに終わった。

 向こうはどう思ってるかわからないけど、なんか友達っぽくてよかったなー。なんちゃって。

もうひとりのヒロインの登場です。

ゲーム内での参戦はもう少し後になります。

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