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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第6章 みんなであの子を守るまで
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第103話:始めた私は鬼のような特訓をしたくない。

特訓をはじめましたが、やっぱりこの作品はゆるいほうがいいですね

ここからしばらくはゆるいままです

 翌日。ツツジは何故かとてつもなく眠そうだった。

 学校で会ったときは、あくびしてたし、授業中もあくびしてた。ともすれば休み時間は両腕を枕代わりにして寝てたし、昼休みも同様。心配になりながらも放課後になったら声をかけようと思って、私は放課後までそのまま放置していた。


「ねっむ」

「一日中そうしてたよね。寝れなかったの?」

「寝る時間が遅くって……ふあぁ……」


 昨日寝たのは深夜3時だったとのこと。そりゃ眠いわ。でもあれから寝れないのは分かるけど、学校にまで支障をきたすとは。


「何してたの?」

「んー? GVGの対策。絶対に勝ちたいし」


 眠そうなまぶたを一生懸命開いているようで、ちょっと薄目だ。糸目の強キャラっているけど、まさしくそんな感じなんじゃないかな。

 それはともかく、ツツジがGVGに乗り気なのはちょっと意外だった。日頃からアザレアを邪険に扱うような素振りをしていたから、昨日の件といい今日のやる気といい、なんだか新鮮だ。


「アザレアといつの間に仲良くなったのさ」

「仲良くないし。1つの目標を争うライバルだから」

「ふーん……」


 ライバルかぁ。目標って言うとやっぱ勝つってことかな。いや、それでもちょっとタイミングがずれているような、そうでもないような? うーん、分からん。


「ともかく、帰ったらすぐにログインして! みっちり特訓するから」

「えー」

「勝ちたくないの?」


 いや、勝ちたい勝ちたくないで言ったら、もちろん勝ちたいんだけど、そういう特訓と言われても、正直やる気がしないっていうか。

 できるだけ楽に強くなる方法はないですか? と聞いたら、ないときっぱり断られた。


「千里の道も一歩からっていうでしょ? ゲーム上達もそれが基本なの」

「負けたくないからいいけど、お手柔らかにお願いします……」


 彼女はニタリと笑った後、覚悟の準備をしといてね、と軽く脅されました。


 ◇


「まず3つのことを目標にしようと思うの」

「3つ?」


 すぐさまログインした私はその足でサベージタウン近隣の森へと入っていった。それまでの間、声をかけられることはあったけど、そのどれもが頑張れという励ましの言葉だった。さすがホームは違うな。絶対この辺から出ないようにしよーっと。でないと私のメンタルがGVG前にキルされてしまう。


 森にやってきたところで、ツツジは3本の指を立てて、そのようなことを言う。

 なんだろう、勇気、友情、努力。とかかな。週刊少年紙じゃあるまいし、そんなことありえないか。


「1つは味方を増やすこと。これはギルメン全員で手分けしてやる」

「ティアとか熊野に声をかけるのとか?」

「そ。やっぱ戦力差は埋めないと話にならないからね」


 確かに30対6の戦力差は大きい。だいたい一人頭4~5人を相手しなきゃいけないから、ツツジレベルじゃないと、理不尽に死んでしまうかもしれない。そう考えるだけでちょっと恐ろしくもある。だからこれには全面的に同意だ。


「2つ目は戦略を立てること。これはビターとノイヤー、アレクに任せてる」

「あの2人が一緒だけど大丈夫なの?」

「ま、まぁ戦況はしっかり見てる方だと思うし……」


 アイテム派のビターと魔法派のノイヤーが激突してしまうことは容易に分かってしまうけど、それでも戦況全体を見ている2人で力を合わせて戦略を練ったほうがいいとは思う。加えてアレクさんが必要であれば、武具も打ってくれるとのことだ。心強い。

 とまぁ2つの目標を聞いたけど、あと1つはなんだろう。暗殺かな。いやまさか。


「3つ目は私たちの全体強化。これは基本中の基本だね」

「なんでそれ最後にしたの」

「これからレアを徹底的にしごいていきます」

「……まさかスキルを避けろとでも」


 無理無理カタツムリ。あんな芸当できるわけがない。そもそも私は回避盾じゃなくて、物理的に防いで、攻撃に転じるスタイルだし。


「違う違う。そもそもレアは基本的なことができてない」

「え?」

「盾役として見習うべきは熊野の方だよ。性格通り綺麗な盾捌きで、私は好印象だった」


 比べられるとちょっとムッとしてしまう。そんなにできない子か私は。いや、だってもうこの話も100話超えたっていうのに、基本的なことができてないって、そんなこと……。あるかもしれない。


「それに、私とレアでやりたいことあるし」

「なにそれ?」

「《超加速》と《ポジションチェンジ》のコンビネーション技」

「なにそれ!」


 コンビネーション技というまさに中二心を刺激する言葉でより元気になる。こうやって単語だけ聞くとすごくゲームっぽくて、ワクワクしてしまう。やっぱり大技放ったりするのかな。こう、ドカーンと。


「詳細はこの動画見てね」


 目の前でウィンドウが展開されると、そこには金髪の姉妹と思われる双子がプレイ動画に映っている。軽い挨拶を済ませて、今回のコンビネーション技についての説明が始まる。

 《超加速》で一気に接敵して、攻撃をする。相手が攻撃してきたところで《ポジションチェンジ》を行い、すかさず盾役と入れ替わり、その攻撃を受け止める。

 シンプルでいて、《超加速》役はギリギリまで攻撃できる。そのうえで、盾で視界を奪った相手に対し、上から攻撃を行うなど、サンドバックくんがひどい目にあっている。有り体に言えばフルボッコだ。

 終わりの挨拶をした後、画面が閉じられる。なるほど、こういう事をしろというのか。


「私にできるの、これ」

「息が合わないとダメなんだよね。先走っても攻撃の機会が減るし、かと言って遅れると超加速役がダメージを受ける。やってることの割にはピーキーだよ、これ」

「でも、誰がサンドバック役を?」

「俺だ!」


 ぬるっと草葉の陰から現れたのは鎧をまとった勇者風の剣士、ヴァレストだった。その側にはアザレアもいて、ピクニックシートを敷いて、水筒から麦茶を注いでいる。


「私たちの速度についてこられて、なおかつ体格がノーハーツに似てる人ってヴァレストしかいなくて」

「不意を突かれたが、俺だってやる方だと自覚してるぞ」

「まぁ、多分そうだろうけど」


 前に戦った時は私とほぼ互角ぐらいだったと記憶してるんだけど。奥義すら使わされたレベルだし、実際は大したことないのでは。


「じゃあ早速やってみよっか」

「よし、来い!」


 いきなり実践かぁ、と心の中で思っておきながら、ツツジが《超加速》でヴァレストに接近する。彼は聖剣を抜いて、迎え撃つ。

 ツツジの斬撃と聖剣の一撃が交わると、すぐさまツツジが身を翻して、ヴァレストに斬撃を下そうとする。だが予測していたのか、剣を横にしてその斬撃を防ぐ。おぉ、すごい。ちゃんと稽古っぽくなってる。


「そこだっ!」

「レア!」

「え?」


 受け止めた剣をそのまま振りかぶり、ツツジに斬撃をヒットさせようとする。今度はツツジが上体を後ろに倒して、イナバウアーの形になるように避ける。両手を地面につくと、一回転するように足で下から上へと蹴りを入れようとするが、その足首をヴァレストが掴む。


「ほらよっ!」


 男性特有の力が遠心力となってツツジが宙に浮く。頭の上で掴んだ腕を回して、1回転振り回し、私の方へと吹き飛ばす。空中で動こうにも、吹き飛ばされたツツジは動けるはずもないのでそのまま私の胴体へと不時着する。


「痛っ!」

「レアっ!」


 背中を擦りながら、先に起きていたツツジが手を貸す。よいしょっと、声を出しながらも私は立ち上がる。


「ヴァレスト、やるじゃん」

「やるじゃんじゃないよ! レア、ちゃんと私を見て!」


 私を見てって、そんな恋愛的なことを今言われても照れるっていうか、むしろなんでこのタイミングで私こんな事言われているんだろ、って冷静になったら理由がわかった。


「私、見てたと思うんだけど」

「ぜんっぜんダメ! ヴァレストがふっ飛ばしたからいいけど、地面に叩きつけたりされたら、私一発KOだったんだから」

「あぁ、だからあのタイミングで私の名前呼んだんだ」


 全然気づかなかった。そもそも私って攻撃は全部防げばいいや理論だったから、相手の攻撃を見ることなかったんだよね。私だったらあの攻撃を盾で防いで……って、そっか。ポジションチェンジのタイミングがあそこだったんだ。


「レア、センスはいいんだから後はちゃんと考えて、相手の攻めを利用するの。その攻めが回り回って、最大のスキになる。だからこのコンビネーションは強いの」

「なるほど」

「もちろん再現する人は少ないけどね。難しいってもっぱらの評判だし」


 私たちはそんな事をしようとしていたのか。あの動画の2人は双子だからその辺通じ合っているとも言えるだろうけど、それでも攻撃のタイミングなんかは自分で見定めなくちゃいけない。そう考えると難しいな。


「次行くよ、次!」


 その後、私とツツジは夜遅くなるまで練習したけど、成果として出てきたのは、ツツジの怒号が森に何か霊的なものがいる、と誤解された都市伝説だけだった。

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