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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第6章 みんなであの子を守るまで
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第96話:分からない私は断ち切るハサミを手に入れたい。

シリアス、はじめました。

「ヴァレスト、またどっか行くの?」

「まぁな。防具の素材が足りなくて」

「あー、私もそろそろやらなきゃなー」


 ぼんやりと、自分の防具についての事を考えながら、ヴァレストがギルドホームから外に出ていく。そろそろアレクさんのところで新調してもらったほうが良いかな。やっぱ今回もオーダーメイドで……。

 なんて考えていると、ノイヤーとじゃれていたビターが彼女を蹴り飛ばして、椅子に座る。


「扱いが酷くありませんこと?! わたくしはお嬢様なのですよ! それを足蹴にして!」

「キミみたいなうるさい輩がお嬢様だなんて聞いて呆れるな! 嘘はやめたまえ!」

「本当ですのよ! 聞いたことぐらいあるでしょう、わたくしの……」

「それ以上はやめておいたほうが良いぞ」


 しまった、と言わんばかりに両手で口を紡いで隠す。多分それ以上はホントに面倒なことと言うか、リアルのことが漏れちゃうからダメだろうね。むしろ今の名前のところは後々が怖いので聞きたくなかった。ナイスビター。


「それで、前に依頼してくれただろ。あれを」

「あれってなんだっけ?」


 ホントに忘れてしまった。ビターがガクッとコケるような動作を行っている。なに。私が忘れちゃいけないような大切なことだったっけ?


「ほら、ゴーレムと戦った時の」

「ゴーレム……あー。あー?! もしかして主従関係を断ち切るアイテムできたの?!」


 あまりにも大きな声に耳をふさぎながら、ビターはウィンドウを操作して、目の前にアイテムを表示させた。


「《犬猿のハサミ》だ。これを作るのには苦労したが、素材が揃えば容易い代物だったよ。なにせスクロールがあったからその数通りに揃えればいいし、調合方法も今までの応用を使えば簡単にできたさ。やはり持つべきものは技術とスキル……」

「ビター、その話長くなる?」


 ビターがものすごくテンションが高いのは分かったから、せめてその長台詞はそこまでにしていただきたい。だってそれ聞いてたら多分小1時間かかりそうだし。ぶっちゃけ錬金術にそんな興味ないし。


「人の話は最後まで聞けと教わらなかったか?」

「なんでそこで説教口調なのさ」

「まぁいいか。これを話すのはまた後日にするとして」

「後日なんだ」


 手に持った《犬猿のハサミ》をチョキチョキと動かして見せている。不思議なことになにもない空間にも関わらず、何か縁を切っているような感覚がするのは気のせいだろうか。多分名前のせいなんだと思うけど、縁切りのハサミというのはちょっと不気味だ。


「こいつは主従関係にある2人のデータを採取して、強制的に主従の縁を断ち切る代物だ。片方が嫌だと言ってもそれは機能するみたいだ。ただし……」

「アザレアだけじゃなくて、主人のデータも必要になってくる、と」


 ビターは黙ってコクリとうなずく。側で座っているアザレアが強張った顔をしている。ゴーレムのときにはああ言ったけど、やっぱりご主人さまとやらに会うのは少し抵抗があるみたいだ。


「それは、何でも良いんですか?」

「よくはない。最低限髪とか血液とか、そういう生体データだ。物では難しいな」

「そう、ですか……」


 怖がっている彼女の手に触れる。アザレアの手は人間みたいに暖かくて、柔らかくて。でも恐怖で少し震えている。私はこんなになるまで怖がらせたご主人さまとやらが許せないし、アザレアを奴からの恐怖から少しでも安心させたかった。


 私にできることはそっと寄り添ってあげるだけ。何かを解決しようとは思うけど、絶対にご主人さまとは対面することにはなるはずだ。だから私はアザレアの意志を聞いてみる。手を優しく握って、諭すように私は聞く。


「レアネラさん……?」

「アザレア、やっぱり怖い?」

「……はい。昔のことが蘇って」

「あなたにもう一度問いたいことがあるんだ」


 アザレアはもう一度コクリと頷いてみせる。その質問はかつて意志を確かめたときのように、私と一緒にいたいかという問。

 私といたいなら必ずあれと遭遇しなくちゃいけない。恐怖を乗り越えてまで、掴もうとしなければならない。それが、あなたにはできる?


「私は……」


 目をゆっくりと閉じて、時間が過ぎ去っていく。それは数秒のことだったはずだろうに、答えを聞くまでの間、彼女と出会ってからの事を思い返していた。笑って泣いて怒って笑って。アザレアはたくさん学んだ。私と一緒にいて変わったと思う。

 現に昔より喋り方が柔らかくなった。感情が芽生えて、育って、咲いたのだ。綺麗に咲くアザレアを摘み取ろうという者がいるなら、私も容赦はしない。でもそれはアザレア次第。彼女次第で変わる。

 目を開いて、まっすぐ私の方を見て、彼女は言った。


「今も変わりません。いいえ、昔より強く思ってます。私はレアネラさんと一緒にいたい。ずっと一緒に過ごしたい。だから立ち向かいます、ご主人さまと。ノーハーツと」


 その名前を聞いてビターとノイヤーがビクリと肩を揺らして反応する。


「ノーハーツって、あの【ハーツキングダム】のか?!」

「確かにあの方は気に入りませんが、そこまでのことをするお方とは……」

「なに、知り合いなの?」


 困惑する私を置いてけぼりにして、話を展開しようとしてくる。だけどそれに待ったをかける。ノーハーツっていったい誰のことなの?


「ノーハーツはこのエクシード・AIランドのトッププレイヤーの1人であり、強豪ギルド【ハーツキングダム】のギルドマスターだ」

「わたくしも風のうわさ程度にしか聞きませんが、あまり良くないことをしている噂もある人物ですわ」

「よくないこと?」

「詳しくは知りませんわ。その噂だけが流れていて、肝心の内容までは」


 すみませんと謝られるけど、そんなところで言われてもってところはある。

 でもアザレアがこんなに怖がるなら、その噂はホントかもしれない。それにしても、トッププレイヤー、か。


「少なくとも、対面した限りでは物腰の柔らかい紳士というイメージですわ。ただ裏があるように見える。わたくしはそう思います」

「ノイヤーがそう言うなら、そうなんだろうね」


 なるべく準備をしないと。アザレアを取られたくないのであれば、多分戦いになるはずだ。なんとかしてノーハーツの生体データを取得しないと。


「まぁ今から気負うことはない。時間は恐らくまだあるさ」

「うん。今まで見つかってこなかったんだもん、大丈夫だよね」


 うん。そう言い聞かせて、アザレアと繋いだ手にギュッと力を込める。アザレアを守る。友達として、親友として。

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