第95話:秋も終わりな私はオフ会がしたい。
6章開幕!
同時に100話投稿、みたいです
「もう秋も終わりかー」
「そうですね。秋が終われば冬。……そうですね。冬ですね」
赤色や黄色に染まっていた紅葉やいちょうは短命だ。3ヶ月も持たずに、枝木から離れて地面へと落ちていく。
落ちた葉っぱはそのままだったり、掃除されたり、焼き芋と一緒に焼かれたり。いずれにせよロクな人生を送ってないと思う。いや、葉生かな。まぁいいや。
秋も11月に差し掛かり、もうすぐ長い長い眠りの期間である冬がやってくる。
人間はそうそう冬眠に入ることはないけど、それでも冬はどことなく心が沈んでしまう。それは天気のせいとも言える。どんよりとした雲の分厚い天気は見る人を少し落ち込ませる。
私たちの地域じゃ雪は降らないけど、それでも降るところはきっと雪かきとか歩くのすら大変なんだろうなと思う。代わりにこっちは乾燥した空気で喉や肌に大ダメージを受けるんだけども。
「逃亡生活も早くてもう半年以上が経過してますわね」
「だねー。あ、ノイヤーそこのお菓子取って」
「自分でお取りあそばせ!」
「ケチー」
私たちはもうご主人さまが既にゲームを辞めているんじゃないかと考え始めていた。流石に半年以上自分のところのIPCを放置しておくわけがない。よっぽど薄情なやつか、ログインしていないかの二択だ。
アザレアも最近は妙に私にくっついてくるようになったこと以外は、大して変化はないと思う。でも表情は随分と明るくなった。笑えば冬の日に光指す太陽みたいな暖かな笑みが際立つし、感情も豊かになった。心底から良かったと感じた。
「それにしても、ノイヤーたちと会ってもう半年かぁ」
「ですわね。あの新米のペーペーだったあなたが……いや今でも割と初心者に毛が生えたレベルですわね」
「なんだと?!」
「レアネラさん、今のレベルは?」
「30ぐらいだった気がする」
ノイヤーに軽く鼻で笑われた。ふざけるなと言いたいところだが、彼女はリミットの60まで到達していることを高らかに自慢されたので、何も言い返せない。強いやつには従わざるを得ないのだ。
「オフ会などしてみたいですわねー」
「オフ会って?」
「おや、ネット文化に情弱ですわね!」
ちょっとイラッときた。あとで紅茶にからしでも混ぜ込んでやろうか。
「オフ会とはオンラインで会っていた友人知人とオフラインで会って遊ぶことですわ」
「オフラインってことはリアルか」
「そうですわ。わたくし憧れでしたの、オフ会で深まる絆。外見がちょっと気持ち悪い人と会う感覚」
「後半失礼じゃない?」
「何を言いますか! ヴァレストなんかそれに違いありませんわ」
それを言われたら何も言えなくなってしまう。実は顔のテクスチャをイケメンよりにしている、とか言われたら、納得してしまう自分がいる。
ゴエモンのときも思ったけど、性別まで変えられるんだから、このゲームのキャラクリエイト力はそれなりのものなんだろう。VRで体格までいじれるんだからすごい。
「ま、わたくしはレアネラとツツジのリアルは割れているんですけれどね」
「え?!」
「どんなですか?!」
「待って待って! 私ノイヤーと会ったことないでしょ!」
いつの間にか取り出したペイント機能を元にアザレアの要望に答えていくノイヤー。ちょっと待って。私そんなバレるようなことした覚えは……。やっぱない!
軽くノイヤーが絵を仕上げて、アザレアにイラストを見せる。私も気になるので見てみたけど、確かに似てる。というか……。
「こんな感じですわ」
「ノイヤー、絵うっま」
「トーゼンですわ! 習い事ばかりやっていたんですもの、この程度造作もありませんわよ!」
鼻を高くして、ドヤ顔を繰り出すノイヤー。ちょっと、というよりもかなりイラッとする。今度、なんて甘いことは言わない。あとでクッキーにわさびをねじ込む。それも大量にだ。覚悟するがいい。
「こんな感じなんですね……」
「まぁ、そうなんだけど。あんまりジロジロ見ないで、恥ずい」
感心するようにふむふむと私のリアルの姿を見つめている。なんというか、アザレアとはゲームでしか接点ができないから、こういうリアルの姿に興味があるんだろうけど、まじまじと見られたら恥ずかしい。
「レアネラが照れてますわ! 草」
「てか、なんでリアルの私知ってるのさ」
なんとか話を逸らそうと、話題転換してみると、ノイヤーから一言。だって会いましたもの、と。
はぁ? 私そんな覚えないけど。
「まぁ、レアネラの貧相な頭ではその程度しか考えられませんでしょうけど!」
「何を?!」
「まぁまぁ……」
抑えてくれているレアネラには失礼だけど、やっぱりわさびじゃなくてハバネロソースの方がいい気がしてきている。待ってろ、後で地獄を見せてやる。
「レアネラさんはリアルではどんな感じでしたか?」
「そうですね……。あんまり変わらないですわね」
「あっけらかんに言われても……。私そんな変わらない?」
「演じているわけでもないなら、そのとおりだと思いますわよ」
「そういうもんかー」
でもいつ会ったんだろう。夏頃にお嬢様っぽいのには出会ったけど、結構幼い感じだったし、割と小心者なイメージがあった。途中からワガママ放題のTHEお嬢様といった様子だったが、まさかそれがこの人じゃないよね。
「世の中は狭いんだなと実感しましたわ」
「そうですね。意外と狭いものです」
「どうしてアザレアがそれに同感するのさ」
妙に実感がこもったアザレアのセリフがちょっと気になった。まるで何かを知っているような、そんな含みを感じる。
「守秘義務なので言えません」
「えー」
「ツツジさんはどうでしたか? 一緒にいたのでしょうか?」
今度はツツジの話に転換。まぁあの子はあんまり変わらないっていうか、ツツジ=ツツジ。リアル=ネットみたいな所あるし。だからノイヤーの答えも一言だった。
「同じでしたわね」
「あの人らしいですね」
「私も初めてこっちで会ったときはびっくりしたよ。まんまだった」
そういえばアレクさんやティアとかはどうなんだろうか。
アレクさんはあれで割と元に忠実だと思う。でもティアは? 熊野は? と考えていくと、やっぱりネットゲームでは自分の理想がどこかしらに反映されているんだろうなと考える。私だって最初は自分とはちょっと違う姿でプレイしたいと思ってたし。
ティアはああ見えて実は目元のクマがすごいOLだったとか言われても、ちょっと信じてしまうかもしれない。熊野は……。見た目がそのままで通っていそうだ。
いずれにせよ、今度オフ会を企画してもいいかもしれない。【グロー・フラワーズ】オフ。アザレアが参加できないことを除けば、多分集まってくれるだろう。地方住まいでなければ。
「そういえばビターって、あんなにちっさいけど、リアルもあんなになのかな」
「流石にありえませんわよ! 本当だったらただのクソガキですわ!」
「ホント、ビターには容赦ないね」
「わたくしの方が身長が7センチも大きいんですのよ? 成長期も残しておりますし、ビターを見下す日々が楽しくて仕方ありませんわね!」
ホントに楽しそうだけど、そこの後ろにいるビターが血管むき出しにして怒っているんだけど。
「誰を見下すのが楽しいって?」
「そりゃあビター、を……」
振り返れば奴がいる。気づいたときにはもう遅い。後ろに向けたノイヤーの額の前には、中指を曲げて、今か今かと発射タイミングを待つデコピンの姿勢になっていた。
「死ね!」
「痛ーっ!」
発射された中指はビシンと心地よく大きな音となってノイヤーを襲う。不意を突かれたノイヤーはそのまま後ろにノックバックして、背中から地面に落ちていった。
「何するんですの!」
「キミがうちをディスる真似をするからだろう?!」
「なんですの?! わたくしは身長の高さを自慢していただけですわ!」
「うるさい! キミも平均と比べたら小さい方だろう!」
「嫌ですわーこれだからクソガキは。わたくしには成長期があるんですー」
「クソガキはキミだろ! 御託はいい。表に出ろ!」
「望むところですわ! 完膚なきまでに身長差を叩きつけてやりますとも」
「何を?! どうせキミになんか成長期は訪れないんだろうよ! 夜ふかしばかりしてるんだろう絶対!」
「それがなんの意味があるんですかー? わたくし、1年前と比べたら3センチ伸びてますしー」
「くっ! だが、小さいやつは小さいままなんだよ! にぼしでも食ってろ!」
うっわ、醜い争い。私やアザレアは平均より上だから、この闘争をどこか遠い目で見てしまうわけで。大変だなぁ、下々の者たちは。
「おはよう。早速だが俺死んでもいいか?」
「ヴァレスト……、ないわ」
「いや待ってほしい。身長で威張り合うのは王道のケンカップルと言っても過言ではないと、俺は思うんだよ」
「「誰がカップルだ(ですか!)」」
うん、流石にないと思う。さすがはヴァレスト。やっぱり気持ち悪い。
次回からシリアスになっていきます




