第1話:ぼっちの私はVRMMOを始めたい。
初めてのオリジナル小説です。
MMOゲームはやったことありませんが、それとなく雰囲気で味わっていただければ幸いです。
私は今、ベッドの上で正座している。
目の前にはVR機器と「エクシード・AIランド」と呼ばれるVRゲームが鎮座中。
「ようやく……。ようやくこの時が来たんだ……っ!」
肩を震わせながら、ゲームのパッケージの封を解く。
新品の匂いを噛み締めて、VR機器にセッティングする。
高校生になった私は親の仕送りを受けながら、一人暮らしを始めた。
最初は独り身の大変さに、新生活の忙しさと、目が回るような日々であったが、それも1ヶ月前のこと。今や家事を完璧にこなした後でも、時間がいくらか残る。
コツコツ溜めたお小遣いと仕送りのおかげで、こうしてゲームを買うぐらいには余裕があると言っても過言ではないのだ。
「えーっと、ゴーグルを付けて、音声認識で起動すればいいんだっけ」
親からプレゼントされたVR機器を使うのは初めてだが、説明書通りにやれば、爆発することもないだろう。まぁこの人生において爆発という自体を起こしたことはないが。
「……友達、できるかな?」
私以外いない部屋の中でポツリと願望を呟いてみる。
転勤族だった親の影響で、あまり長い期間同じところにとどまることはなかった。
だから友達らしい人は私にはいない。
そりゃそうだよね。ちょっと仲良くなっても、すぐどっか行っちゃうんだから。連絡先交換しても、数回連絡してそれっきり。そんなだから、友達らしい人は私にはいないというわけ。
高校生になって、ようやく一人暮らしを始めて、その場に留まることができるようになった。
でも長年友達を作ってこなかった影響か、高校生活のスタートダッシュを決められず、一人ぼっちの1ヶ月を過ごしていた。
こうなったら開き直って、ゲームの中で友達を作ってやると息巻いて、今に至るというわけだ。
ほっぺたをぐにぐにとこねて、不安な考えを振りほどく。
それはそれとして、VRゲームというのは初めてなんだ。だからちょっと緊張する。
少し深めに息を吸って、空気を吐き出す。
よし、行くぞ私!
「ダイブスタート!」
電脳世界への合言葉を告げると、意識は0と1の世界へとワープする。
初めに目にするのは真っ白な部屋とパソコンのキーボードのようなコンソールだ。
『ようこそ、エクシード・AIランドへ』
「あ、これはご丁寧にどうも」
って、相手は合成音声だぞ。挨拶してどうする。
初めはアバターの見た目やら、設定をしていく。
特段理由もないので、だいたい見た目はリアルと同じようにしてみた。
あ、でも髪の色はちょっと弄って、白髪にしてみた。
こういうところでリアルと差を開けていかないとね。あと瞳の色を赤色にしてー。
『こちらでよろしいですか?』
「……誰だこいつ」
髪と目の色を変えただけで、かなり誰だお前感がすごい。
さすがに髪の色が真っ白なのは老人みたいだし、赤みを入れて赤髪ぐらいにはしておこう。
納得がいき、満足に次の設定へと移動すると、職業を選択する画面にやってきた。
このゲームは職業でスキルや魔法が決まるらしい。
あと細かい括りで「称号」というのもあるらしいが、今は別に関係ないだろう。
「どうしよっかなー。剣士に騎士に、蛮族って職業なの?」
最初だし初心者向けの職業がいいかなとは思うけど、私の直感がこれがいいと囁いている。
「騎士。大盾が使用できる唯一の職で、防御系のスキルや魔法が使える、と」
鉄の鎧を身にまとった中世のイメージなんだけど、妙に気になる。
唯一という文言が非常に気になる。こういうオンリーワン的な情報に私は弱いのだ。この前も先着10名の期間限定ラーメンのために開店前に並んだほどだ。いや、あれは食べたかったんだもん、しょうがない。
「ガチガチに固めれば、歩く城壁とか言われたりして……流石にないかー」
とは気になるものは気になる。
他にも旅人とか術士とか気になるけど……。
「えいっ」
キーボードのエンターキーを叩き込んで決定する。
気になったときは心に身を任せろと誰かが行ってた気がするから問題ないよね。
次はステータス。
これはいくつかあるパターンから1つを選択するようなものみたいだ。
騎士らしく防御型でかつ素早さを重視したカスタムにしてみた。
スキル次第では、大盾を持ちながらダッシュして敵に体当たりするなんてことも。むふふ……。
すべての設定が決まると、足元から光が漏れ出す。
どうやらこれから街に移動するらしい。楽しみだなぁ。
ゲームとしての楽しさ。見知らぬ人との交流。不安もある。
でも胸いっぱいの期待を抱いていれば、大抵なんとかなるだろう。
そんな楽観的な考えを念頭に置いて、私は最初の街へとワープを始めた。