「君だから楽しいんだよ」
これが青い反射光なのかと、ぼうっとした頭で考えた。
場所は自室。ちょうど外出する用事もなく、
俺ではない別の誰かがゆっくりとキーボードを叩く音が響いていて、俺は当人の探している画像をひたすら目で追っていた。
どれくらいの間見続けていたのだろうか。
「……ねえ」
ぼうっと眺めていると、操作をしている当人からそんな風にお声がかかった。
「ん。どうかした?」
「何が楽しいわけ」
声が聞こえた机の上……いや、キーボードの上に座っている彼女――妖精と呼ばれる種族の青い髪をした少女は何処か不機嫌そうにそう言った。
よほど不機嫌なのか、彼女の羽がリラックスした下がりきった状態ではなく小刻みに震えていた。
「楽しいか楽しくないかで言うのなら、割と楽しい」
「変態趣味のお方……?」
「なんでそうなったの」
「だ、だって人がネットサーフィンをしているのを見てにやにやしてるって相当な変態じゃないと考えられない……」
そうだろうか。そうかもしれない。
「否定はしておく。一応人間としては普通のつもりだけど」
「そう……。ねえ、お腹すいたわ。何かないの?」
「何かって。最近外出てないから何があるか把握できてないんだけど」
「行ってきてよ。どうせあと何日かは暇なんでしょ?」
「はいはい。かしこまりましたよお姫様。ちょっと待っててね」
俺がそう返すと、彼女は何処かまんざらでもなさそうに得意げになってパソコンの画面に集中した。
そんな彼女に苦笑してしまいそうになって、椅子から立ち上がりながら何かなかったかと台所へ足を運ぶ。暫く探してみたが、ここ数日外出をしていなかったためにあまりまともな食事にありつけそうにはなかった。
代わりに彼女の三倍はありそうなパンは見つけたが。
これ以上探しても見つからないだろうと踏んで、彼女の元へパンを持っていくことにして、キッチンペーパーを一枚きり取った。パソコン前に戻ると相変わらず画面にくぎ付けになっている彼女が居て、彼女が食べやすいように一つ取り出して、ペーパーの上にのせる。
「はい、お持ちしましたよー」
「ありが――、パン?」
「そう。それしかなさそうだったから」
「……今度買い物に出たほうがいいんじゃない?」
「そうだね。俺の分の食料も買わないといけない」
「……パンいる?」
「パンは君のための物なので遠慮します。――まあ、お腹すいてないから気にしないで。残ったのをもらうよ」
「恩着せがましい――分かった、貰う」
彼女はそう言うと、キーボードから離れてひいたペーパーの上に座り込んだ。抱きかかえるようにしてパンをちぎって、さらに自分の一口サイズまでちぎってから口に含んでいた。
人間ではまずお目にかかれない光景で少し感心しながらも眺めていると、眺めていることに気が付かれてしまったのか、彼女にきっと睨まれてしまう。
「ちょっと、人様の食事がそんなに楽しいわけ?」
机の上に座っていた彼女が僕を見上げると、少し恥ずかしそうにそう言った。
当たり前の感想に思わず笑ってしまって俺はこう返すのだった。