表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第三章:謀略の王都
98/1666

97話・新生教会と急転

エスティーギアはフィエルテが隣国の王女である事に気付く。

そしてその気付いた理由が”禁忌”と”新生教会”なのだと言う。



そもそもの切っ掛けは、フィエルてはエスティーギアの話す内容に対して注意喚起をした事が始まりである。

それは禁忌であり、新生教会が粛清に動くと・・・。

プリームスからすれば良く分からない話である。



洞察するならば”新生教会”が大転倒の詳しい内容を隠蔽し、それを邪魔する事、又は明らかにしようとする事が”禁忌”であると考えられる。

そして禁忌に触れれば恐らく”粛清”されるのである。



しかしそれがフィエルテが王女である確信に繋がるのだろか?

プリームスは首を傾げてしまうのである。



そんなプリームスの様子を見てエスティーギアは真顔で説明を始めた。

「プリームス様が知らないのは仕方の無い事です。新生教会の存在自体、各国の王族にしか明かされていないのですから」



「あ~なるほど・・・そう言うことか」

合点がいったプリームスは自身の掌を拳で叩いた。

詰まる所、王族しか知らない”新生教会”をフィエルテが知っていた為、隣国の王女だと看破されてしまったのだ。



「ですが何故ここに、レギーナ王女がいるのか? それにプリームス様の従者をしているなんて、いったいどうして・・・」

と自身の中で自問自答するように呟くエスティーギア。



『まぁ、そう思うのは当然か』

プリームスはそう思い、フィエルテの事を話すべきか逡巡した。

プリームスの従者になった経緯を話してしまえば、フィエルテの業、つまりその宿命に巻き込んでしまう可能性があるからだ。



話せばエスティーギアはフィエルテを憐れに思うだろう。

そうすればその気持ちが無意識に行動に出てしまい、フィエルテの抱える問題へ身を寄せてしまうに違いないのだ。

それが人の繋がりであり、人の業、そして宿命とプリームスは考えていた。



『アグノスは私の傍にいるからまだいい・・・守ってやれるのだから。しかしエスティーギアは私自らが守る事は出来ない。私がこの地を離れればそれまでだ』

プリームスは話すのを躊躇ってしまう。



するとエスティーギアが、そんなプリームスを見透かしたように優しく微笑んだ。

「ご心配いりませんよ、プリームス様。南方最強の魔術師はポリティークなどでは無く、私なのですから。私を危険に巻き込むとお考えなら無用の心配です」



アグノスが同調するように口を挟む。

「プリームス様、これは本当のことです。ポリティークが宮廷魔術師としての”建前”でそう一目置かれる必要があったのです。ですからそうなるように母が仕組んだのですよ」



そう言われても、ポリティークの実力自体がプリームスからすれば大した事が無かったのだ。

そのポリティークより強いと説明されても困ってしまう。


そして「う~む」と考えたあと閃いた。

基準になる点をプリームスは思いついたのだ。

「ならば死神アポラウシウスに襲われた時、それを撃退出来るかね?」



エスティーギアは固まってしまった。

かの悪名高き死神アポラウシウス。

それは南方諸国どころか、西方東方にまで名を轟かせる最強最悪の暗殺者である。

そんな相手を撃退するなど不可能だ。


しかしエスティーギアは頷く。

「撃退は不可能でしょう。ですが逃げ切る事は可能ですね」



何とも微妙な返答にプリームスは再び困ってしまった。

更にエスティーギアは引き下がる気は無いようにも見える。

ならばここは諦めて話すしかないのかもしれない。



プリームスは溜息をついたあと、フィエルテと出会った経緯を説明し始めた。

セルウスレーグヌムの国王の暗殺。

そして国を乗っ取ろうとした宰相に婚姻を迫られたフィエルテ。

それを蹴れば次に命を狙われたのはフィエルテであった事。


そうして命かながら逃げおおせたが、瀕死の火傷を負い奴隷商に身を潜めた。

そこで死を待つ身であったフィエルテを、プリームスが魔術で救い今に至る。



掻い摘んだ説明ではあったが、エスティーギアは至極驚いた様子で聞き入っていた。

更に理解も話も早かった。

「詰まりレギーナ王女が生きている事が知れれば、追手が掛かる事になる。そして傍に居る者、それを知る者の命も危険に晒すと言うことですね?」



頷くプリームスは、補足するように話を続ける。

「そういう事だ。またセルウスレーグヌムの宰相の企ては、ポリティークとも繋がっている。死熱病でエビエニス国王を暗殺しようとしたのも元を辿れば”奴”に繋がるだろう。故にそれが失敗した今、表立って大事にはしたくない筈だ」



アグノスも理解しているようで同調するように続いた。

「事が公になれば戦争に発展しかねませんね。そうなると南方最高最強の国力を誇る我が国が優勢です」


そして少し考える仕草をして言い淀む。

「公になる事を避けて秘密裏に企てとその失敗を隠蔽するなら・・・」



スキエンティアが言い放った。

「関係した者の暗殺です。プリームス様は、アポラウシウスに2度も襲撃されていますから・・・あなた方もこれで標的外では無くなる可能性がありますよ」



それを聞いて納得するエスティーギア。

「それで死神アポラウシウスの話を持ち出したのですか」

そう呟き事態が深刻な事に気付く。

あの最強最悪の暗殺者が隣国の走狗で有る可能性が出て来たからだ。



エスティーギアが頭を抱えそうになった時、白い一羽の鳥が突然一同の前に舞い降りる。

特に攻撃性を感じなかったため、プリームスはワザと見過ごす。

しかし何かしらの魔力の繋がりをこの白い鳥とエスティーギアに感じており、訝しみが湧き興味もそそられた。



エスティーギアはその白い鳥を誘うように片手を差し出す。

すると良く懐いた家畜のように、それはエスティーギアの腕に乗り肩まで移動する。

そしてまるで会話するようにエスティーギアの耳元で小さくくちばしを動かした。



次の瞬間、エスティーギアの顔が驚愕に変わり呆然とするように呟いた。

「先手を打たれました。ポリティークが・・・何者かに殺害されたと・・・」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ