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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第三章:謀略の王都
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91話・理事長室(2)

かくしてプリームスとエスティーギアの顔合わせは果たされる。

しかし何も話しは進んでいなかった。



眠そうな顔でボ~ッとしているエスティーギア。

そしてプリームスはと言うと面倒臭そうに憮然としているのみである。

詰まりどちらも無言で有る為に話が一向に進まないのであった。



見かねたアグノスが愛想笑いを浮かべて口火を切る。

「え~と、こちらが私の母でリヒトゲーニウス王国王妃のエスティーギアです。そしてこの魔術師学園の理事長も務めています」


続けてアグノスはプリームスに手を差し出し示す。

「こちらが私の伴侶となられるプリームス様です。ケラヴノス軍司令代行を子供扱いした程の武力の持ち主なんですよ! それにポリティークの魔法をも一瞬で消し去る魔術の実力者でもあります」



すると少し興味が湧いたのかエスティーギアが呟いた。

「ほほう」



プリームスの方は全く興味が湧かないのか、心ここに在らずと言わんばかりに視線が泳いでいた。

そして喉が渇いたのか収納魔道具の指輪からグラスと水差しを出して、一人で水を飲みだす始末。



それに驚いたのはアグノスだが、それ以上にエスティーギアが驚愕した。

余りの驚きに目が冴えてしまい、プリームスを興奮した目つきでガン見する。

「い、今・・・一体何をしたのだね??!」

と慌てた様子でプリームスに問いかけるエスティーギア。



キョトンとした表情でプリームスは首を傾げた。

「何って、水を飲んでるだけだが。あ・・・済まないエスティーギア殿にも出すべきだったな」

そう言ってグラスをもう一つ指輪から取り出し水を注ぐ。



再び何もない空間から物を取り出したプリームスを見て、エスティーギアは固まってしまう。

そして水の入ったグラスを受け取らされ、エスティーギアはそれをマジマジと見つめた。



スキエンティアが溜息をついた後、ソッとプリームスの耳に囁いた。

「きっと収納魔道具に驚いているのでしょう。そもそもそれ自体も認識していない可能性があります」


どうもこう言った些細な事に鈍感なプリームス。

スキエンティアが居てくれて助かると今更ながらに思うのであった。



『しかしうっかりしていた。クシフォス殿にも神器並みの魔道具だと注意されていたのにな』

プリームスは自身の軽率さに自嘲する。



見せてしまった物は仕方が無い。

そして目の前には口には出さないが、説明しろと言わんばかりのエスティーギアの顔が有った。

こうなると詳しく説明しない訳にはいかなくなってしまう。



『そう言えばアグノスに収納魔道具を贈っていなかったな。ならばいい機会か・・・この親子に作ってやるとしよう』

とプリームスは考えアグノスも含めエスティーギアに収納魔道具の事を話す事にした。



先ずは自身の指にしている指輪を見せて、

「この指輪だが収納魔法を付加させてある。先程出したグラスと水差しはこの指輪から取り出した物だ。そしてその付加方法は私の固有魔法であり他人には真似する事は不可能だろう」

そう説明を始めるプリームス。



更に収納魔道具の指輪から2つの石を取り出し、目の前のテーブルに置いた。

エスティーギアは少し訝しんだが、

「ひょっとして魔石の残骸ですか?」

とプリームスへ尋ねる。



流石、魔術師学園の理事長と言うだけの事は有る。

そう思いプリームスは感心した。

普通なら只の石と思うからである。


頷くプリームスは説明を続ける。

「先ずはこれを握っていて欲しい。エスティーギア殿とアグノス、それぞれ1つずつ5分程だ」



するとエスティーギアが言った。

「魔力の強い者が握ってしまうと、この残骸に魔力が移りますよね・・・これを利用するのですか? まさかその収納魔法の発動に?」



『中々に話が早くて助かる。しかし他言せぬように釘を刺さねばな』

プリームスの心配はこの件で自身に降りかかる諍いでも、収納魔道具の情報が漏れる事でも無い。

プリームスのようにウッカリ収納魔道具を使ってしまう事を心配したのだ。



もしエスティーギアが他人の前で収納魔道具を使えば、今のエスティーギアのように驚愕するだけで無く、奪おうとする輩が現れるに違いない。

クシフォスが”神器”と言う程の物なのだから。

しかしそのプリームスの危惧も杞憂だったようだ。



エスティーギアは頭を下げると、

「プリームス様!! 他言は決して致しません・・・ですので収納魔道具の話を詳しくお聞かせ願えませんか?」

と真摯に言い出す。



何とも殊勝なものだと再び感心するプリームス。

自身の興味がある物には熱意や労力、そして誇りも惜しまない。

何となくアグノスとエスティーギアの性格が親子なのか似ていると思ってしまう。

そう一途なところが2人とも同じなのだ。



プリームスは笑顔をエスティーギアに向ける。

「良いだろう。ならば2人専用の収納魔道具を作るゆえ、それと伴って説明しよう」



アグノスは喜んだ。

愛する相手から神器にも等しい物を作って贈って貰えるのだから。

しかしそれ以上にエスティーギアが大喜びをした。

収納魔道具を貰える事も然ることながら、その英知を垣間見ることが出来るからだった。



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