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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第三章:謀略の王都
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84話・国王の計らい

アグノスがプリームスの元へと嫁ぐ?事となってしまった。

しかもメルセナリオやクシフォスが所有する称号、王友(レクスアミークス)まで赤銀の指輪とともに受け取らされる始末だ。



この称号はリヒトゲーニウス王国内で政治的軍事的な権限は皆無だが、国王と同等な立場で扱われる逸脱した物であった。

しかも王が認めた信頼する”友”として知れ渡ってしまうので、プリームスは”ボレアースの聖女”と共に王友として民に敬われる事になってしまう。



『これでは気軽に街中を出歩けんではないか・・・』

今更慌てはしないが、プリームスはさっさとこの国から出てしまおうかと思ってしまった。

国の権威に縛られる事はないのだろうが、このままでは他の違う何かに雁字搦(がんじがら)めになってしまいそうだからだ。



それは義理であったり、無用な勧誘やいざこざに巻き込まれると言う事を意味している。

名声と言うのは、それを得た者に必ずしも良い結果を導くものでは無い。

それは以前居た世界で嫌という程味わってきたプリームス。


以前は否応なしに”それ”に立ち向かい受け入れなければならなかった。

350年もの人生で何度も何度も・・・。

故にプリームスは疲れてしまっていたのだ。



それを察したのだろうスキエンティアが進言の許可を求めて来た。

この場に居る全員に向けてだ。

「現状に関して注意しておくべき点があります。発言をお許しいただけますか?」



仮面をしている為、エビエニス国王は何者かと訝しんだが、直ぐにクシフォスが庇う様に告げた。

「陛下、彼女はプリームス殿の腹心でスキエンティア殿だ。以前はプリームス殿の軍師をしていた上に政治的な見識も非常に高い。聞いておいて損はないと思うぞ」



娘のケラヴノスも同調して続く。

「はい、私も先程助言を頂きました。その事で進言したい事があります」



少し驚いた様子のエビエニス国王。

それはプリームスに軍師が居た事に驚いたのだ。

詰まり軍を指揮する立場にあって、下手をすれば国家の頂点に立つ存在と言えたからだ。


『なるほど・・・王友とは必然であったか!』

そうエビエニスはほくそ笑んだ。

そしてケラヴノスに頷く。

「分かった、では先ずはスキエンティア卿の話を伺おう」



スキエンティアは小さく会釈すると話し始めた。

「先程ケラヴノス殿にお話ししましたが、ポリティークの罪をここで公にして裁いてしまえば、父親であるレクスアリステラ大公の罷免も免れないでしょう。そうなれば国家へ与える損失が多大な物になると伺いました。そこでポリティークの件を内密に処理し公にせねば、宰相閣下の罷免は免れると結論が出ました」



頷くエビエニス国王。

「うむ、私もその様に考えていた。レクスアリステラ大公程の手腕を持つ後任はおらぬ。それに息子の罪を親も償うとは馬鹿らしいと思ってもおったしな・・・」



同意するように頷くスキエンティアは、そのまま話を続けた。

「はい、ではそのように”無かった”事として処理されるとよろしいでしょう。となれば、プリームス様に王友(レクスアミークス)の称号を贈った事は伏せるべきです」



スキエンティアの言に、ウッカリしていたとばかりの顔をするエビエニス国王。

クシフォスはよく分かっていないようだが、娘のケラヴノスは気付いたようだ。



「確かに聖女様が国王陛下を病から救い、その病で暗殺しようとしたポリティークをも阻止した事で王友(レクスアミークス)を贈られたとは流石に公表はできませんね・・・」

そう考え込むようにケラヴノスは呟く。



レクスアリステラ大公の罷免を回避するとなれば、プリームスの王友の件は本末転倒と言う事になる。

プリームスは初めから分かっていたのか、「何を今更?」と言った表情を浮かべている。



エビエニスは溜息をついた。

「そうなれば仕方あるまいか・・・では”ポレアースの聖女”を賓客として私が迎えた事とする。だが王友を贈った事実は伏せるが変わらない・・・これで構わぬか?」



恭しく頭を下げるスキエンティア。

これは国王相手だからでは無く、プリームスを思いそう計らってくれたエビエニス国王への感謝の礼であった。



エビエニスはケラヴノスへ向き直ると話を促した。

「次はケラヴノスの話を聞こう」



するとケラヴノスは慌てたように両手を横に小さく振った。

「いえ、私から進言する事はもう何もありません。先程、スキエンティア殿が全て陛下に話されてしまいましたから」



申し訳なさそうな顔をエビエニスとケラヴノスに向けるスキエンティア。

仮面の上からでもそれが伝わるかのようであった。



苦笑するエビエニスは、

「そうか、ならば私の心配は後1つだけと言う事か」

などと意味深に言い放った。



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