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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第三章:謀略の王都
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82話・国王エビエニス(1)

プリームスはリヒトゲーニウスの王女に告白されてしまった。

2人きりの昨夜に既にされてはいたが、第三者が4人も居る中で言われると中々に衝撃的である。



真っ先に驚いたのはクシフォスだった。

「アグノス姫・・・俺は別に反対はせんが、一つ聞いておきたい。それはプリームス殿に付いていくと言う事だな?」

そう心配そうにアグノスへ尋ねる。



迷いなしに頷くアグノス。

「無論です。プリームス様は国に縛られたくは無いと仰いました。ならば私が国を出る他無いでしょう」



クシフォスは戸惑うよう表情で相槌をうつ。

「そ、そうか・・・」


ケラヴノスも心配そうに続く。

「王女殿下の意思は尊重されるべきでしょうが・・・中々に難しいかと思いますよ」



ケラヴィノスの言う事は最もである。

そもそも同性同士と言う問題も抱えている。

そして国王を病から救い、臣下が起こそうとした謀反まで未然に防いだプリームスだが、身元の知れない人間でもある。

アグノスが望むように事が、安易に進むとはとても考えられない。



するとアグノスは自信ありげに答える。

「私に考えがあります。父を説得して見せましょう」



プリームスは頭を抱えた。

王国の後継ぎである大事な姫を”誘惑”してしまったような状況だからだ。

しかもプリームスが動けばアグノスは付いて来ると言う。

プリームスが望まなくても、まるで駆け落ちになってしまうのだ。



そしてアグノスに考えがあると言われてしまえば、他の者は口出す術が無い。


その後はぎこちない日常会話が続き朝食が済まされる。

残るは国王の願い通り、プリームスが直接会って感謝を受け取るのみである。






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






国の頂点が3人、そしてプリームスとその従者2人を含めた合計6人で王の寝所に到着する。

プリームスの到着を待ちわびていたのか扉は開け放たれていた。

何とも不用心な様子だが、部屋の入り口には屈強な近衛騎士が2人護衛として詰めている。



その騎士がクシフォス達を見て恭しく頭を下げると、寝所内に入るように無言で促した。

大公にしては不作法な振舞いをするクシフォスだが、国王の前でもそれは変わらぬようだ。

寝所に入るなり、

「陛下! 死にかけたそうだな? 元気になってなによりだ、うはは!」

などと言い放ったのだ。



傍に居た娘のケラヴノスは顔をしかめる。

このざっくばらんな父親の振る舞いを遺憾に思っているのだろう。

しかし不作法でも大公だ、この国の頂点の一人である。

娘であっても咎めることは出来ない・・・そう思うとプリームスは笑みが漏れてしまう。



ケラヴノスは武官らしく礼をすると、ベッドの上に上半身だけ起こした国王に声をかけた。

「国王陛下、おはようございます。聖女様をお連れ致しました」



クシフォスの後ろにいたプリームスを、アグノスが手を引いて王の傍へ連れて行く。

アグノスはやる気満々のようだ。

『困った展開にならなければ良いのだが・・・』

プリームスは内心でぼやいた。



国王はプリームスを間近で見て驚愕したようだった。

室内に居る一同は、まぁ仕方のない事かと納得するばかりである。


例に洩れずプリームスの余りの美しさに驚き国王は呟く。

「まさに天上の美・・・本当に同じ人なのか?!」



プリームスが苦笑して沈黙していると、国王は我に返り謝罪した。

「これはすまない・・・私がリヒトゲーニウス国王、エビエニス・リヒトゲーニウスだ。其方がボレアースの聖女殿だな?」



頷き軽く会釈する程度のプリームス。

とても一国の王に対する礼儀作法では無かった。

「お初にお目にかかる。そう呼ばれているようだが、プリームスで結構だ」



するとエビエニス国王は特に機嫌を損ねた様子も無く、笑顔で話を続ける。

「ギルドマスターのメルセナリオから話は聞いておる。見た目にそぐわぬ豪胆さ、そして洞察力と武力。武神を除けば王国随一と言われるケラヴノスを子供扱いにしたそうではないか。その上、ポリティークをも魔術で圧倒したと・・・」



そしてゆっくりと首を垂れるエビエニス国王。

「本当にありがとう。其方のお陰で私の命ばかりか、臣下の謀略まで阻止してくれるとは・・・まさに救国の英雄である。それでな、これにどう報いれば良いのか考えあぐねておる。私に出来る事なら何でも致そう、望みを言ってみてくれぬか?」



プリームスも考えあぐねてしまった。

正直褒美など欲しいとは思わないのだ。

そもそも友人であるクシフォスに頼まれて協力しただけであり、英雄になど成りたい訳ではない。



するとアグノスが割って入って来た。

「お父様・・・プリームス様は私を所望しておられます! そして私もプリームス様をお慕いしております」



『ここでそう切り込むか!?』

とプリームスは驚いてしまう。

したたかと言うか豪胆と称するべきか、まさか褒美にアグノス自身を被せてくるとは思わなかったからだ。



エビエニス国王も驚いた様子であった。

しかし直ぐに平静さを取り戻し「う~む」と考え込んでしまう。

考え込むと言う事は、承諾する可能性も有ると言う事だ。

色んな意味で年甲斐も無くハラハラしてしまうプリームスは、それを見守るしか無い。



エビエニス国王は、チラリとプリームスの表情を窺うように一瞥した。

そして溜息をつくと、

「それでしか報えぬのであらば、承諾するしかあるまい?」

そう諦めたように呟いた。



「正気かね?! エビエニス国王?」

と慌ててプリームスは直ぐに問い返してしまう。

居合わせた他の一同も驚きを隠せない。



何を慌てるのか?と言った表情でプリームスを見やるエビエニス国王。

「お互い両想いなのであろう? なら問題は無い」

更にニヤリと笑みを浮かべて続けた。

「それにな、これには少し打算もあるでな・・・」



国王が考えている事を即座に見抜き、プリームスは嫌そうな顔をする。

そうそれは国王が承諾しなかった場合、アグノスが述べるであろう交渉材料で有ったからだ。


親子は考えが似るのだなと、つくづく実感してしまうプリームスであった。



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