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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第一章:終焉と新生
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7話・状況の分析

突如空中で視界が暗転し、意識を消失しかけたプリームス。

勿論、20mの高さからの落下は避けられない。



半ば諦めかけた時、プリームスの体を柔らかく温かい物が包んだ。



「陛下・・・間に合って良かった」

それはスキエンティアの泣きそうな声だった。



どうやらスキエンティアが咄嗟に飛行魔法で接近し、落下するプリームスを抱きとめたらしい。


朦朧とする意識の中でプリームスは自身を確認すると、優しく、だがガッチリとスキエンティアに抱きすくめられていた。



プリームスは済まなそうに呟く。

「すまない。ほんの少しだけ眠らせてくれ・・・」


スキエンティアは頷くと、プリームスを抱えたまま緩やかに地上へ降下した。








どれくらい眠ったのだろうか・・・。

気がつくとプリームスは、スキエンティアのコートに包まれていた。

その上、スキエンティアに抱っこされた状態だ。



プリームスが目覚めたのに気付いたスキエンティアが、笑顔を浮かべ言った。

「お目覚めになられましたか。気分の方はいかがですか?」



忠臣に抱き締められて眠っていたかと思うと、恥ずかしくて居た堪れない気持ちになる。


『スキエンティアは私の事を慕っているゆえ、きっと私の寝顔を舐め回すように見ていたんだろうが・・・』

と、内心でぼやくプリームス。



プリームスは訝しげにスキエンティアを見て訊いた。

「お前、まさか悪戯しなかっただろうな?」



慌てた様子で愛想笑いをするスキエンティア。

「滅相もない! 可愛いお尻を撫でたり、ほっぺにチューしたりなど一切しておりませんよ!」



「おい! スキエンティア・・・やったんだな?」

と怖い顔をしてプリームスはスキエンティアを問い詰める。

怖いと言っても妖精のように可愛いので、威圧感は全く無い。



「でへへ・・・」

とスキエンティアは愛想笑いで誤魔化す。



プリームスはスキエンティアを殴りそうになったが、相手は元々自分の体だ。

自分を殴るなんて馬鹿な事はしたくないし、か弱い今の体では手を痛めそうだ。


だからプリームスはグッと堪え、そして溜息をつき告げた。

「いつまで私を抱えてる・・・降ろせ」



名残惜しそうにするスキエンティアは、プリームスを優しく地面に降ろした。



コートをスキエンティアに返してプリームスは空を見上げる。



時間的に見て、今は昼を少し過ぎた辺りに感じた。

『この"世界?"に来たのは、少し肌寒かった事から朝方だった筈だ。陽も上りきっていなかったように思うが・・・』

と記憶を辿るプリームス。



スキエンティアはコートを着ると、プリームスへ微笑みかけ言った。

「陛下がお眠りの間は、特に変わりはありませんでしたよ。ところで、お身体のほ方は・・・?」



少し眠れたお陰か、虚脱感も無くなり感覚もはっきりしている。

普通にしていれば問題はなさそうだ。


スキエンティアに心配させないように、プリームスは笑顔を向ける。

「心配ない。ただ、魔術関係の不安が杞憂では無くなってしまった・・・」



するとスキエンティアがおずおずと意見を言い出した。

「その事ですが、私に心当たりがあります。飽く迄、私の体験による感覚的な話になってしまいますが・・・」



プリームスは頷いた。

「分かった、話してみなさい」



スキエンティアは自身の胸に手を置くと、真面目な顔で説明を始める。

「この陛下のお身体を預かり操ってみて感じたのです。以前の私の肉体でも、これ程の魔力を操作する事は出来ませんでした。更に細かく言えば、魔法発動の速さ、魔法操作の練度、そして魔法自体の強度も以前の私を遥かに上回ります」



口元に指を置いて思案するプリームス。

「ふむ・・・詰まり?」



先を話すようにと促されたスキエンティアは、頷くと更に真剣な面持ちで話を続けた。

「結論を言いますと、魔力の絶対量や最大強度は魂に依存すると言われていますが、実際の魔法の行使に関しては、その肉体の練度に依存すると思われます。でなければ、私が飛行魔法を使った時の発動速度と飛行速度に説明がつきません」



プリームスが飛行魔法の制御に失敗し落下した時、瞬時にスキエンティアが飛行魔法で助けに行けた事を言っているのだろう。



そしてスキエンティアはプリームスの前に跪き、そっとその手を取った。

「僭越ながら、この陛下の肉体は生まれたばかりの赤子と同様と言わざるを得ません。詰まり、魔法に対しての経験が全く蓄積されていない故に、飛行魔法の制御に失敗したのかと・・・」




「う〜む」と唸り考え込むプリームス。

見た目が15歳の美少女だけに、年寄り臭い仕草とのギャップが面白く可愛い。



暫くしてプリームスは溜息をつくと、スキエンティアに笑みを向けた。

「流石、四天王であり私の軍師だけの事はある。褒美をやらねばな・・・」



そう言うとプリームスは、スキエンティアをその胸に抱き寄せた。


プリームスの胸の谷間に顔を埋める形になったスキエンティアは、顔を赤くして硬直してしまう。

「へ、陛下?!」



そしてスキエンティアの頭を優しく撫でるプリームス。

「私は大雑把なところがあるゆえな、スキエンティアが傍に居ると色々助かる。これからも忌憚の無い意見を、遠慮無く頼むぞ」



スキエンティアは畏まった声だが、嬉しそうな表情で呟いた。

「勿体ないお言葉です・・・」


そう言いつつも遠慮無く、スキエンティアの手がプリームスのお尻を触っているのだった。



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