76話・プリームスとアグノス(1) ※挿絵有り ※改稿済み
プリームスはアグノス王女を侮っていたらしい。
うら若い初々しい乙女だと思っていた。
しかし状況はプリームスの考えていた事とは真逆に進んでいるようであった。
アグノスに押し倒され、更にそこから情熱的な口付けをされてしまったのだ。
しかも一緒に居続けられる方法を探すなどと言いだす始末。
アグノス王女の事を詳しく知らないプリームス。
それと同じくアグノスもプリームスの事を知らないのだ。
そんな状態で迫られても、一時の気の迷いと思えば断るのも苦でも無いかもしれない。
だが可愛い娘にプリームスは弱い。
しかもお人好しの部類に入るので、アグノスに迫られれば断る事は出来ないだろう。
ベッドに横たわるプリームスにアグノスは馬乗りになっていた。
そこからグッタリとしているプリームスに、アグノスは再び密着するように身体を寄せ、ウットリとした表情でアグノスは言った。
「私が男性だったらプリームス様を滅茶苦茶にしてしまっていたでしょう。それが出来ないのが残念でなりません・・・」
『この娘はさらっと凄い事を言うな・・・』
プリームスは驚きを隠せない。
そしてアグノスに対して興味が湧いて来たのも事実であった。
お互いの息吹が感じられる距離でプリームスは静かに問いかけた。
「アグノス姫の歳は幾つなのかな?」
「17歳になったばかりです。それよりも私の事はアグノスと呼び捨てでお呼びください!」
そう少し怒った表情でアグノスはプリームスへ訴えた。
プリームスは少し気圧された様子で頷く。
「あ、あぁ・・・分かったよ。アグノス・・・」
敬称なしで呼ばれてアグノスの表情がパァーと明るくなった。
この燭台の淡い明かりの中でも、良く分かるくらいの変わりようだった。
そして感極まってプリームスへ再び口づけをする。
もうやりたい放題されているプリームスだが、諦めの境地で最早抵抗など皆無だ。
さらに調子に乗るようにアグノスは、か細い首筋へ口づけを強行したため、流石のプリームスも声が洩れた。
「本当にプリームス様は、お美しいですね・・・」
そう呟きプリームスの身体へ、再びアグノスが口づけをする。
プリームスは堪らず身をよじった。
「アグノス・・・このような事、どこで覚えた?」
とプリームスが必死に問いかける。
するとアグノスはプリームスの身体から顔を離しニッコリと答えた。
「15歳で成人を迎え、こういった事を作法として教わります。生娘であっても、全く殿方を悦ばせない”真性の生娘”では夫婦の夜の営みは上手くいきませんからね」
そう答えるとアグノスはプリームスの身体に顔を埋めた。
強すぎず弱すぎず、絶妙な力加減で触れてくるアグノス。
恥ずかしさを必死に堪えようとするプリームスだが、アグノスの執拗な責めにそれは叶わなかった。
無意識に洩れる自身の喘ぎ声に耐えきれず、プリームスは手で口を覆う。
『くぅ・・・私は遊ばれているのか? ひょっとして私の反応を見てアグノスは楽しんで居るのでは・・・』
と勘繰るプリームス。
精神や知識や経験が350年の時を経ていても、身体は生娘そのもの。
少しの刺激でも無垢な反応をしてしまうのは仕方が無いのかもしれない。
そして今更ながら、思った以上の自身の感覚に慌てるプリームス。
戸惑いつつもアグノスへ懇願するように訴えてしまった。
「お願いだから・・・落ち着いて」
一方アグノスは、昂った感情の所為か聞く耳持たずな状態だ。
自分から本当に好きになり愛しく思ったのは、これが初めてだった。
焦る感情とは裏腹に、微睡がプリームスを覆い始めていた。
それは今日一日色々有った為に、肉体と精神が疲労を訴えているからだ。
しかしアグノスは留まる事を知らない。
『あぁ・・・私はこれからどうなってしまうのだろう・・・』
まるで生娘のような心配に心が覆われるプリームスであった。