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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第三章:謀略の王都
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73話・無慈悲で他人事

ポリティークは王女を人質に取ってしまった。



正直、プリームスとしてはこの展開を読めてはいたが、未然に防ぐ事無く放置した。

理由は簡単。

アグノス王女を助ける義務も守る義理も無いからだ。



ケラヴノスはポリティークへ叫ぶ。

「貴様! 王族に対する反逆罪だぞ!! 分かっているのか?!」



ポリティークは完全に居直ってしまったのか、

「何を今更、私は王を暗殺しようとしていたのだぞ。この女一人どうこうしようが、何も変わるまい」

そうケラヴノスへ冷静に言い返す。



プリームスはこの状況に居合わせながら、然も他人事のようにポリティークへ問いかけた。

「国王を死熱病で暗殺する計画を、貴様に提案したのは何者だ? 貴様のように視野の狭い奴では思いつかんだろう?」



何か核心を突いたのだろう、ポリティークは目を見開いて黙り込んでしまった。



見透かしたような笑みを浮かべてプリームスは尚も続ける。

「フフ・・・言い難いか。そういえば隣国の王が死去されたらしいな。あそこは宰相と王女が結婚し、宰相が王に成るらしいではないか? この国と状況が状況的に似そうだな・・・」



ポリティークの表情が真っ青になった。



止めとばかりにプリームスはポリティークへ歩み寄り言い放つ。

「隣国セルウスレーグヌムの宰相アンビティオーとの仲介は、差し当たり死神アポラウシウス辺りだろう?」



その言葉を聞いたポリティークは完全に取り乱してしまった。

「な、何故それを!? き、貴様、一体何者なのだ?!!」



「只の世捨て人だ。お前たちがボレアースの聖女と大層に呼んでくれるが、そんな良い物ではないよ」

そう言いつつ更にプリームスはポリティークへ迫った。

距離は手を伸ばせば届く程の至近になる。



取り乱してしまったポリティークはプリームスに恐れ慄き、右手に持った短剣をアグノス王女の首に突き付けた。

「それ以上近づくな!! 王女がどうなっても良いのか!?」



漸くプリームスは歩みを止めると首を傾げる。

「それがどうした? そのアグノス王女が傷付けば何かしら私に損失でも発生するのか?」



何を言われたのか直ぐに理解できなポリティーク。

「な!?」



するとプリームスはニヤリと笑み、

「私はこの国の人民では無い、故に損失などありはしない。なら私は気にせず貴様を無力化するだけだ。貴様も好きにするがいい」

そう告げるとゆっくりと右手をポリティークへ向けて掲げる。



プリームスの背後で取り乱すように叫ぶ者がもう一人いた。

「せ、聖女殿!! 待たれよ! アグノス王女殿下を傷付けてはならぬ!!」

それはケラヴノスの声であった。



プリームスは内心でぼやいた。

『知らぬわそんなもの・・・お前達が不甲斐ない故にこうなったのだろう。私はクシフォス殿の願いに”出来る範囲”で協力するだけだ』



ここに来て漸くポリティークは、プリームスに何もかもが”通用しない”事に気付く。

そしてもう恐怖しか覚えず、その手と脚は力を失いポリティークは床にへたり込んでしまった。



解放されたアグノス王女も気が緩んだのか、その場に崩れ落ちそうになる。

それを咄嗟にプリームスが抱き留め、

「すまない、怖い思いをさせてしまったね。もう心配は無いよ」

そう優しい声でアグノス王女に囁いた。



先程までの辛辣で冷徹なプリームスとの差に、アグノス王女は驚いてしまった。

更に抱き留められた為、プリームスの身体の感触がアグノスに伝わる。

そこにもアグノスは驚いてしまう。

何故なら自分よりも小柄で、余りにもプリームスが華奢であったからだ。



そしてこんな儚くて脆そうな美少女が、王国屈指の武力を持つケラヴノスを子供扱いにしてしまったのだ。

その上、宮廷魔導士であり南方最強の魔導士と言われるポリティークまで、意図も簡単に無力化せしめた。



アグノスは、驚きの連続であった。



ケラヴノスが騎士達に叫んだ。

「逆族ポリティーク・レクスアステリア伯爵を捕らえよ! 一切の抵抗も許すな、手に余るようなら手足を折っても構わん!!」



一斉にポリティークに群がる騎士達。

ケラヴノスはポリティークの拘束を確認すると、

「聖女殿、アグノス王女殿下を、そして国王陛下をお願い致します。小官もポリティークを投獄次第、陛下の元へ参りますので・・・」

そう言ってプリームスへ頭を下げた。



そしてケラヴノスは背後のメルセナリオを見やった。

「メルセナリオ様・・・貴方が居る事に私ももう少し思慮するべきでした。ひょっとして聖女様の後見人としてご同行されたのですか?」



メルセナリオは少し考える素振りを見せてケラヴノスへ答えた。

「う~む、まぁそんな感じだ。しかし聖女様・・・プリームス殿の洞察通りに全てが展開したようだな」



ケラヴノスは静かに頷く。

「そのようで・・・それではメルセナリオ様も聖女殿にこのままご同行願います。従者の御二方もご一緒で問題有りません」



それを聞いたスキエンティアとフィエルテは、マント内に剣を隠すとそのまま収納魔道具に仕舞い込んだ。

これから国王にお目にかかると言うのだ、せてめ武器類は所持していない様に繕うべきだろう。

今の2人は見た目だけでも相当禍々しいのだから。



そうして拘束したポリティークと騎士達を連れ立って、ケラヴノスは謁見の間を後にした。



一方、王女であるアグノスはプリームスに抱き着いたまま動こうとしない。

少し心配になってプリームスは問いかけた。

「アグノス姫、もう大丈夫ゆえ国王の元へ案内してくれないか?」



アグノスはほんの少しだけ身を離すと、

「プリームス様、もう少しこのままで居させてください・・・」

そう切なそうに訴えた。


『え、何故・・・?!』

と少し困惑してしまうプリームス。



「はぁ・・・」とスキエンティアが溜息をつく。

『純真な乙女なら、あのようなプリームス様の姿を見てしまえば惚れ込むのも無理はないでしょう』

スキエンティアはこのまま1年もせずに、大所帯になりそうな予感がして項垂れるのであった。



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