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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第三章:謀略の王都
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71話・疑惑の天秤

ポリティークは表情を青ざめさせたが、直ぐに冷静さを取り戻す。


そして玉座に座するアグノス王女に、

「王女殿下、あの様な者達を信用されるのですか? 私は国王陛下ならび貴女様の身を案じているのですよ」

と心配そうに告げた。



アグノス王女は困ったように逡巡するが、

「ですが、疑惑だけで人は裁けません」

とハッキリと答える。



残念そうにポリティークは言い放つ。

「王女殿下・・・貴女様は今、冷静な判断力を失われているようですね」

そうして無造作に片手を上げる。



突然玉座後方の通用口から、2人の侍女と数人の騎士が謁見の間にやって来た。

そして侍女はアグノス王女に恭しく手を差し出す。

「アグノス王女殿下、参りましょう。ここは危のうございます」



更に騎士が王女を隠すようにプリームス達へ立ち塞がる。

その間に王女は侍女に連れ出されるように玉座を離れてしまった。



ケラヴノスが納得がいかない様子で叫ぶ。

「王女殿下! お待ち下さい。当事者の貴女様に離れられては、話が有耶無耶になってしまいます」



アグノス王女はケラヴノスへ後ろ髪を引かれるように振り返ると、侍女の手を振り払う。

だが屈強な騎士に阻まれて玉座に戻る事は叶わなかった。

「お退きなさい! それにポリティーク! 貴方は何をしようとしているの?!」



ポリティークは王女を見やる事なく言い放つ。

「早く安全な場所へお連れしろ!」




「やれやれ・・・茶番に付き合うのも飽きて来たぞ」




ポリティークが声のした方へ視線を向けた。

それはプリームスだった。

突然の場違いな言い様に、その場に居た者が唖然としてしまう。



続けて美しいプリームスの声音が謁見の間に響き渡る。

「アグノス王女、それにケラヴノスだったか? この宰相代行が企んでいる事を私が教えてやろうか?」



ケラヴノスが剣を収めると興味津々に呟いた。

「ほほう・・・?」


アグノス王女は取り囲む騎士に叱責する。

「リヒトゲーニウスの王女アグノスが命じます! そこをお退きなさい! 私は聖女様に・・・プリームス様に用があるのです!」



王女に叱責され慌て戸惑う騎士達。

侍女も王女の怒りに畏って平伏してしまった。



プリームスは不敵に笑みを浮かべポリティークを見やる。

「この男はボレアースで発生した死熱病を使って国王を暗殺するつもりなのだろう。だが余りにも早く、死熱病を治療出来る私が王都にやって来たものだから、慌てて手を打とうとしてこの有様だ」



ケラヴノスが疑念と怒りに満ちた表情でポリティークを見つめた。

「陛下を暗殺だと?!」



「違う!! そのような事、戯言だ!!」

そう言い放ちポリティークは右手を高らかに掲げた。



すると次の瞬間、掲げられたその掌の上に赤々と燃え盛る球体が発現する。

それは直径が1mにも及ぶ巨大な火球で、ポリティークの近くに居た騎士達が顔をしかめる程の熱量を帯びていた。



「私を陥れようとした事を後悔させてやろう」

ポリティークは頭上で燃え盛る火球を維持したまま、勝ち誇ったように言い放つ。



それを目の当たりにしたプリームスは、驚いた様子で声を漏らした。

「おお!」



「いけません! ポリティーク宰相代行!! そんな危険な魔法、聖女様を殺めるつもりですか!?」

慌て取り乱すように叫ぶアグノス王女。



しかしポリティークには王女の声をは届かない。

狂気に満ちた表情を浮かべ、プリームスに告げる。

「南方最強の魔術師と言われた私の力に驚き慄いたようだな!」



プリームスは少し申し訳なさそうに説明しだした。

「いや、別に慄きなどはしていない。この地に来て初めて目にした攻撃魔法ゆえな・・・"この程度"の魔法は使えるのかと少しだけ感心しただけだ」



「な、なんだと・・・?!」

ポリティークは自分が見下されていると直ぐに気付き、一瞬で顔色を変える。


憤慨に身を任せたポリティークは、

「消し炭にしてやる!!」

そう叫ぶと掲げていた右手を振り下ろし、それに準じて巨大な火球がプリームスへ向かって放たれた。



プリームスの身を案じたメルセナリオが悲壮な声で叫ぶ。

「プリームス殿!!」



またプリームスの近くに居たケラヴノスは、ポリティークが放った火球に巻き込まれないよう咄嗟に後方へ跳躍した。



だが、その場に居た者達の予想を覆す結果に至る。

ポリティークが放った筈の火球が、空中で霧散するように消失してしまったのだ。



誰もが予想し得なかった事態に最も驚愕したのは、プリームスの死を確信していたポリティーク自身であった。



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