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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第二章:初めての町
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58話・電撃的な上洛(2)

プリームスはフィエルテから離れると、ベッドから降りて何故か仁王立ちになった。

ベッドの上で暴れたので羽織ったガウンが乱れて下着が丸見えだ。



咄嗟に目を逸らすクシフォス。

フィエルテはベッドから降り慌ててプリームスの乱れたガウンを直す。


一方スキエンティアは、

「プリームス様・・・はしたないですから少し大人しく出来ませんか?」

と諌めるように言った。



つーんと、澄ました顔をするプリームス。

「別にはしたなくても構わんだろう。体裁を気にせねばならん身分でも立場でも無いと言うに」



すると少し怒った表情でスキエンティアは語気を強める。

「そう言う問題ではありません! プリームス様の傍に居る者の品格まで疑われてしまいますよ!」



「いや! 堅苦しいのは嫌!!」

そう子供のように言い放ち、そっぽを向いてしまうプリームス。

身体は15歳だが美しくも少しだけ幼く見える為、そんな仕草も可愛らしく見えてしまう。



苦笑するクシフォス。

スキエンティアと言うと、まるで舌打ちしそうな表情である。



フィエルテも苦笑しつつスキエンティアなだめた。

「まぁ、師匠いいでは無いですか。私達以外ここには居ませんし・・・」



「そんな事より私の弱点を把握しておきたいのだろう?」

と何故か偉そうにプリームスは言いだす。

自分の弱みの話なのに偉そうだ。



申し訳なさそうに頷くフィエルテ。

「はい、一応把握しておいたほうがいいかと思いまして」


クシフォスも同意のようだ。

「そうだな、弱点を知らねば守りようも無いしな」



「分かった、では、スキエンティア・・・そこから私に何か刃物でも投げてみなさい」

プリームスはベッドの傍に立ってそう言った。


スキエンティアはプリームスから5m程離れたソファーに腰掛けている。

こんな至近から物を投擲されては、”起こり”が見えていなければ回避など不可能に近い。



「大丈夫なのか?」

「危険ですプリームス様!」

と心配するクシフォスとフィエルテ。



2人の言い分などお構いなしに、スキエンティアは懐からダガーを1本取り出した。

そして特に何も言わずに突然プリームスへ投擲する。

無造作で予備動作が殆どないスキエンティアのダガー投げに、フィエルテとクシフォスが驚くが、それ以上に驚く事態が発現する。



投擲された1本のダガーはプリームスに触れる事無く、鈍い金属音をたてて直前ではじき返されてしまったのだ。



床に落ちたダガーを拾って不思議そうな表情を浮かべるフィエルテ。

「何かプリームス様の目前で壁のような物が発生したように見えましたが」


頷くクシフォス。

「うむ、一瞬だが見えたように感じた」



スキエンティアが困惑する2人に説明しだした。

「プリームス様が魔力で常時展開されている魔法障壁です。簡単に言えば常に物理的な攻撃から身を守る、不可視の盾が存在する感じですね」



クシフォスは驚いた表情を浮かべた。

「そんな事が可能なのか、魔術とは凄いのだな。これが有るなら遠隔での狙撃でプリームス殿を倒すことは不可能であろう?」



「その通りです。しかし弱点もあるのです・・・ねぇプリームス様?」

と白々しくプリームスへ問いかけるスキエンティア。



プリームスは少し困った様子で言った。

「この魔法障壁は常時展開の為に常に魔力を消費するのだ。この身体ではそれが中々に厳しくてな、他の魔法を使うと”併用”したのと同じ状態になり瞬間的な魔力消費が激しくなってしまう。故に転送(メタファー)などの魔力消費が特に多い魔法は、身体に負担がかかって割と危険だ」



フィエルテが首を傾げてプリームスへ尋ねる。

「それが弱点なのですか?」



「まぁ弱点と言えば弱点だな・・・だがそれは他に魔力消費が大きい魔法を使った時の話だ。魔力の枯渇と疲労で気絶してしまうからな」

そうプリームスは補足し、更に説明を続けた。


「問題の弱点は魔法障壁の話だ。フィエルテ・・・スキエンティアの距離から走り込んで私に掴みかかって見なさい」



不思議そうにしていたフィエルテだが、素直にプリームスに従う。

そうして身体能力が高いフィエルテはかなりの速度でそれを実行した。

スキエンティアの投擲したダガー程では無いが、常人では反応出来ない素早さだった。



あっさりとフィエルテに抱き着かれてしまうプリームス。



「まぁ、こう言う事だ」とプリームスはぶっきら棒に言った。



「え?」

プリームスに抱き着いたまま意味が分からないフィエルテ。

同じくクシフォスも首を傾げていた。



見かねたスキエンティアの補足が始まる。

「詰まりですね、直接攻撃になるような物は魔法障壁が反応して防いでくれます。しかし今のように只触れるだけ、掴むだけなどの行為は防げないのです」



「あああ~なるほど!」

と漸く納得するクシフォス。



フィエルテも理解出来たようで深刻な表情を浮かべた。

「これは確かに寝込みを襲われたら対処できませんね・・・」



プリームスは苦笑する。

「普通誰でも寝込みを襲われたら対処出来ん。これは接近されて組まれたり投げられたりする事が防げないのだ」



するとフィエルテは笑みをプリームスに向けた。

「プリームス様は小さくて可愛らしくていらっしゃいますから、簡単に暴漢などに捕まってしまいますよ。気をつけて下さいね!」



自分に抱き付いているフィエルテの頭を撫でると、

「その時はお前達に守ってもらうよ」

そう優しくプリームスは告げた。


そしてスキエンティアとクシフォスを見やる。

「さあもう良いだろう? 王都へ向かうぞ!」



慌てた様子でクシフォスはソファーから立ち上がった。

「ならば受付に伝えておかねばな」


フィエルテは綺麗にたたんであったプリームスの服を手に取る。

「プリームス様、着替えましょう。流石にそのままで王都へ向かうのは・・・」



バタバタとする一同を見やってスキエンティアが溜息をついた。

「その前に王都のどの辺りに"出る"おつもりですか? 先ずはそこからでは?」



転送(メタファー)を使うにも斥候(エクスプローラートル)で移動先の座標を確認しなければならない。



大雑把が発動してしまったプリームスは、誤魔化すように一同へ微笑むのであった。



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