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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第二章:初めての町
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52話・宿場町ポサダ

プリームスを中心に光の魔法陣が発現する。

そして古代マギア語でプリームスは詠唱を始めた。

「我が目となり彼の地に臨め・・・斥候(エクスプローラートル)



すると魔法陣は消失し、代わりに黒い10cmの球体がプリームスの目の前に出現する。

そして直ぐに上空に向けてその球体は飛び上がり、気が付くと見えなくなってしまっていた。



「見るのは2度目だが、全く不思議な魔法だ・・・原理が全く分からん」

と不思議そうにクシフォスが呟いた。



スキエンティアは静かにするように口元に人差し指を立てる。

ワザとらしく慌ててクシフォスは口に手を当てた。


フィエルテは心配そうにプリームスを見つめる。

『前回は使用した後、気を失われたと言っていたし・・・本当に大丈夫なのだろうか?』

自分が心配した所で何かが変わるわけでも無いのだが、心配せずにはいられないのだ。



そしてプリームスは屈み込んだまま集中するように瞳を閉じたままだ。

他の者達は固唾を呑んで見守る事しかできない。

とても長く感じる沈黙が続いた。



そうして5分ほど経った頃か、プリームスが静かに言った。

「今回はかなり無理に飛ばしたせいか、早く到達したが維持が難しくなりそうだ・・・」


それを聞いたスキエンティアは、

「フィエルテ、それにクシフォス殿、プリームス様の傍へ」

そう急かすように言った。



前回のようにクシフォスは迅速にプリームスの元へ駆け寄った。

スキエンティアとフィエルテもその後に続く。



プリームスは言い放った。

「さぁ後の事は任せるが・・・私が眠りこけている間に悪戯などせぬようにな」



これはまさに”無理をして気絶するから後は任せた”と言う意味だ。

やれやれと言った風に溜息をつくスキエンティア。



プリームスは目を閉じると古代マギア語で詠唱を始める。

「打ち込みし楔の元へ誘え・・・」

その瞬間、一同を覆う魔法陣がプリームスを中心に展開された。



転送(メタファー)



プリームスがそう言い放った刹那、視界が暗転する。

フィエルテは初めて体感するこの状況に驚愕した。


全てが闇に閉ざされ、自身が闇に飲み込まれたかのような錯覚に陥る。

しかしフィエルテは不思議と不安は感じなかった。

何故か傍にプリームスの温かさを感じたからだ。



気が付くと闇は消え失せ、フィエルテは地面に足を着いて立っていた。

そして全く見覚えのない杉林の風景が周囲に広がっている。

「ここは・・・」



傍に立っていたクシフォスが答えた。

「ポサダの町外れだな・・・少し歩けば直ぐに見えてくる」


その時、フィエルテの視界の端でプリームスが倒れかかるのを捉えた。

「!!」



スキエンティアが反応するよりも早く、フィエルテはプリームスを抱き留めていた。

それを見たスキエンティアは、何とも言えない表情をする。


『これは嬉しいやら、悲しいやらですね・・・兎に角、私など眼中に入らぬ程に陛下を慕ってくれれば、それでよいのですが・・・』

そうスキエンティアは自分を納得させるように内心で呟いた。



心配そうにクシフォスがプリームスの傍にやって来ると、

「う~む、やはり体に負担があるのだな。歯がゆいな・・・何もしてやれないと言うのは」

そう残念そうにフィエルテへ言う。



「そうですね・・・ですがプリームス様も、私達が後は何とかするとお思いなのでしょう。ですからそれに応えなければ」

フィエルテは愛しそうに気を失ったプリームスを見つめて、独り言のように言った。






まるで防風林の様に植えられた杉の林を抜けると、直ぐに宿場町が見えて来た。



気絶したプリームスは、今現在クシフォスに片手で軽々と抱きかかえられていた。

初めはフィエルテが抱きかかえると言ってきかなかったのだが、あっさりとプリームスを取り上げられてしまう。

その為、フィエルテは少しご機嫌斜めだった。



スキエンティアが諭すようにフィエルテに告げる。

「町で宿をとったら貴女がプリームス様のお世話をしなさい。ちゃんと服を脱がせて下着姿にしてからベッドへ寝かせるのですよ」



すると現金なもので直ぐにフィエルテは機嫌を直した。

「は、はい、承知しました師匠!」



ポサダの町はポレアースを小規模にしたような宿場町であった。

それは完全に大きな街から、都市などの中継の為にある存在だと言っていいだろう。

その為、ボレアースと違って街道沿いに宿屋がひしめいている。



宿の等級もピンからキリまで揃っており、金さえ出せばかなり豪華な宿に泊まる事が出来た。

逆に宿以外の物は少なく、商いをするに至っては全く不向きな町と言える。



そしてここにも代行官所は存在し、治安も維持されていた。

クシフォスが言うには自分の領地では無いので、余り偉そうには出来なのだそうだ。


それを聞いたフィエルテは少し笑いが洩れた。

大公とは”偉い”立場にあるのであって、”偉そうにする”為の物ではないのだ。

そんな事を言ったらクシフォスがへそを曲げそうなので言わない事にした。



そうして街道を進み、クシフォスの計らいで一番高そうな宿屋に到着するのであった。



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