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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第二章:初めての町
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44話・プリームスとフィエルテ(1)

「プリームスさま・・・」



遠くからプリームスを呼ぶ声が聞こえる・・・女性の声だ。



自分が眠っていた事に今更気付くプリームス。

ゆっくりと目を開き辺りを見渡した。



するとそこは昨日案内され一泊した部屋だった。

華美さは無いが大きく厳かなベッドで、天蓋付きであるそれにプリームスは寝かされている。

そしてベッドの傍に見知った顔が立っていた。



その人物は、背中とデコルテが大きく開いた白のワンピースドレスを着ている。

裾丈も膝上10cm程でかなり短く、少しでも風に吹かれば下着が見えてしまいそうだ。



「ご気分はいかがですか? 食事の方はどう致しますか?」

と優しい笑顔でプリームスに問いかけた。

それは白いワンピースドレスがよく映える、金髪の美女フィエルテであった。



「今は何時かな?」

とまだ意識がはっきりしない様子でプリームスが呟いた。


フィエルテは静かに恭しく答える。

「もうすぐ正午になります。昼食の準備は食堂に出来ておりますが、どう致しましょうか? こちらにお持ちしましょうか?」



何だか自分は心配されているようだ・・・と感じるプリームス。

『そうか、確か奴隷商で話の最中に気を失ってしまったのだな』

そう結論が出て、クシフォスに話し切れていない内容を思い出す。



「話しておきたい事もある。私も皆と食堂で食べよう」

プリームスはそうフィエルテに告げて起き上がろうとした。



するとフィエルテが、優しくプリームスの背中に手を添えて起き上がらせてくれる。


「スキエンティア様が・・・プリームス様は肉体的な強度の問題を抱えていると言っておりました。ご無理をなさらないで下さい」

と心配そうにフィエルテは言った。



『スキエンティアめ、余計な事を吹き込みおって・・・』

プリームスは内心でぼやいた。



プリームスとしては、フィエルテに心配されたい訳では無いのだ。

既にスキエンティアという過保護な従者が傍にいるのだから、もうお腹いっぱいなのである。



フィエルテに支えられてベッドの端に腰を下ろすプリームス。

自分の背に手を添えるフィエルテが間近に見えた。


美しい黄金の髪は邪魔にならないようポニーテールに結われている。

そして非常に整った美しい顔に、透き通るような肌。

少し露出が多いのではと思える白のワンピースドレスが、フィエルテの美しい身体を更に引き立てていた。



『何と言うか、この娘は美しいな・・・見た目で気に入った訳では無いが、目の保養になる』

ついプリームスは小さく笑みが漏れてしまう。



何を隠そうプリームスは美しい物が大好きなのだ。

それが可愛い美少女や、美しい妙齢の女性なら尚更だった。


しかし百合的な趣向が有るかと言えば、そうでも無いのだ。

只々、美しく可愛い存在が傍に有れば、プリームスの心は癒される訳である。



なら傍にスキエンティアと言う超絶麗人が居るのでは・・・と言われそうだが、それはプリームスからすれが”違う”のだった。

そもそも今のスキエンティアは、プリームスの肉体を預かっているのだ。

詰まりプリームスは自身を見ているのと同義であり、自分自身を見て癒される筈が無かった。



プリームスは無意識にフィエルテの白く細い首筋に手で触れていた。

「お前は美しいな・・・」



少し驚いた様子のフィエルテだったがニッコリ笑むと、

「プリームス様がお望みなら、この身体いつでも・・・」

そう言ってワンピースの短い裾をめくり上げた。



プリームスは苦笑すると、フィエルテがめくり上げたその手を押さえる。

「まてまて、主をからかうものでは無いぞ」



少しがっかりしたような様子で俯いてしまうフィエルテ。



そんなフィエルテを慰めるように、プリームスはその頭を優しく撫でた。

「まぁ、何だ・・・そんな気分になる時もあるかもしれん。その時は遠慮せずお前を呼ぶよ」



するとフィエルテは照れつつも嬉しそうな顔をした。

「はい・・・」



「それにしても、その恰好はフィエルテの自前か? 少々扇情的過ぎるに思うが」

とプリームスは、フィエルテをマジマジと下から上まで見つめて言った。



「これはスキエンティア様の指定でして・・・」とフィエルテは答えた。



「どう言う事だ? 何故スキエンティアが?」

と不思議そうにプリームスが訪ねる。



「プリームス様は、こういった恰好をすると喜ばれると・・・スキエンティア様が言っておられました」

と真面目に答えるフィエルテ。



『また余計な事を吹き込みおって』

とプリームスは溜息が出てしまった。



その様子を見てフィエルテが心配そうな顔をした。

「あの、不味かったでしょうか? 今すぐ露出の無い物に着替えてまいりましょうか?」



何故か慌てたプリームスは、フィエルテの手を掴んでしまう。

「いや、構わん! ”身内”だけの時は、そのような恰好で構わない。しかし出かける時は控えよ」



かく言うプリームスも今は下着姿だった。

この地域は気温が高くまともに服を着ると、プリームスとしては暑くて堪らない。

故に寝苦しくならないように寝る時は下着と決めていた。

それを踏まえて気絶したプリームスを、スキエンティア辺りが服を脱がせてベッドに寝かせてくれたのだろう。



そんな下着姿のプリームスをフィエルテが見つめた。

そして少し恥ずかしそうに顔を赤らめると、

「プリームス様も、相当に扇情的にあられるかと思いますが。目のやり場に困ってしまいます」

そう言って視線を逸らした。



「う~む、しかしこの辺りの昼間は暑くてな。このままでは駄目か?」

なんとも自覚のないプリームスの言い様である。



「そのままでは屋敷の者達が困りましょう。私が着ているような、非常に薄手の物があります。そちらを召されては?」

とフィエルテが生真面目に提案してきた。



何だかフィエルテが、少しスキエンティアに似ている感じがしてしまう。

『あんなのが2人もなど堪ったものではないぞ。スキエンティアに毒されない様に私が教育せねば・・・』

などとおかしな考えにプリームスは至る。



取り合えずこのままでは他の者が困ると言う事なので、フィエルテが用意してくれる衣装を着る事にした。



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