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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第二章:初めての町
25/1756

24話・ボレアースの過去と今  ※挿絵有り

水彩画風に描いたプリームスを添えておきます。

挿絵(By みてみん)


2020.9.27追記

ボレアースは、リヒトゲーニウスの最北町である。

そして西の隣国との境にある町である為、関所の役目も果たしていた。



多くの人が行き交う宿場町で、首都から100km近く離れたこの地でもかなりの賑わいを見せていた。

またここは大公であるクシフォスの領地でもる。



クシフォスは少し懐かしむような顔をした。

「混沌の森に出る前に最近立ち寄ったばかりだが、何だか懐かしく感じるな」



するとプリームスがニヤリとした笑みをクシフォスに向けた。

「それはきっと死にかけたからだろう」



嫌そうな表情を見せるクシフォス。

「勘弁してくれ・・・事実そうなのだが、他人に言われると気が滅入る・・・」



「次からは軽率な行動を控えるのだな」

笑みを浮かべて前へ向き直るプリームスの足取りは軽い。

この世界に来て初めての町なのだ、興味津々で胸が踊るのだ。



町の外観は関所も兼ねていると言う事なので、外周にそれなりの壁が設置されていた。

土台は石造りで壁自体は木造だが、戦時中であれば最前線の砦並に良く出来ている。



以前は外的、政治的要因で国境付近の防衛を強固にせざるを得なかったのかもしれない。

しかし今は物々しい雰囲気など欠片も感じさせない。

恐らく現在の南方諸国は、戦など過去の物で平和なのだろう。



街道沿いに町へ進むと門が見えてきた。

時間的な問題なのか出入りは少ないように見える。

門はそれなりに大きく、大型の馬車でも優に通れる作りで一般的だが、プリームスの目を引くものがあった。



それはこの門がしっかりと検問所の役目を果たしていたからだ。

警備兵が常駐し町から出入りする人間の確認をしっかり行っていた。



クシフォスが1番前に出て、プリームスとスキエンティアを連れ立つように検問所へ向かう。

すると門の前で警備に就ていた兵の1人がクシフォスに気付いたようだ。


慌ててクシフォスの元にその兵が走り込んで来て敬礼をする。

「レクスレクシア大公閣下! ご無事であられましたか!!」



クシフォスは頷く。

「ああ、何とか生きて帰れた。しかし俺が率いた調査師団は全滅だ・・・例の病や魔物にやられてな」


そして背後のプリームス達を見やる。

「こちらの御仁に行き倒れた所を助けられなければ、俺も同じ運命を辿っていただろう」



兵士は感心したようにプリームスを見るが、余りの美しさに驚愕する。

「左様でしたか・・・!!?」



固まってしまった衛兵を見てクシフォスが「あちゃ~」と頭を抱えた。

クシフォスもプリームスに助けられ、意識を取り戻した時の事を思い出し『仕方ないか・・・』と溜息が出た。

『プリームス殿には黙っていたが、かくいう俺も初めて見た時は思考が停止してしまったしな』



衛兵が我に返るまで暫く待ち、クシフォスは今後の予定を伝えた。

「俺は一旦屋敷に向かう。代行官所には落ち着いてから向かうゆえ、その旨を伝えておいてくれ。それから恩人であるこちらの御仁2人の身柄は俺が保証する。後で俺自ら身分証を発行し、更に後見人として俺がつく。よいな?」



それを聞いた衛兵は再び敬礼をする。

「承知しました! それでは代行官所に報告に向かいますので、私はこれで失礼します」

と言い慌てる様に門を抜け、あっと言う間に姿が見えなくなってしまった。



クシフォすは頭を掻くと困った様子で呟いた。

「おいおい、それではまた門で衛兵に説明せねばならんではないか・・・」



クシフォスがぼやいた通り、門で他の衛兵に説明する事となる。

その上、のこ門を管理する衛兵隊の隊長などが出てきて大事になってしまう。


またその全員がプリームスに見惚れてしまい、検問所の機能が一時的に麻痺してしまう始末。

仕方なく、全員が我に返るまでクシフォス等3人は、門で足止めされる事となってしまった。



スキエンティアがプリームスの耳元で囁いた。

「だから言ったでありましょう。普通の人間からすれば、陛下は余りにも美しすぎるのです」



困った顔で溜息をつくプリームスは、スキエンティアからウィッチコートを受け取る。

そして嫌そうに羽織りフードを被ると告げた。

「取りあえずは着ておこう。だがクシフォス殿の屋敷とやらに着いたら直ぐでも脱ぐからな」



「仰せのままに」

とスキエンティアはニッコリ微笑んだ。



衛兵隊長に馬か馬車を用意すると言われたが、アッサリと断るクシフォス。

クシフォスはプリームスを見やって、

「一応、俺の庭だからな。貴殿らにゆっくり歩きながら町の説明をしようと思う。構わんだろ?」



プリームスは嬉しそうに笑みを浮かべた。

「是非にも。この地に来て初めて見る町ゆえな・・・興味深い」



クシフォスの説明によると、このボレアースの町は元々宿場町だったらしい。

その為、町を横断するよう東西に延びる大きな街道を中心に町が発展したとの事だ。



また15年ほど前に南部戦争が終結し、今ではここも観光地になってしまったとか。

と言う事は国境の町だけに、ここは戦火に晒されたのだろうか?

それをプリームスはクシフォスに問うてみた。



「ああ、ここは隣国や西方諸国の通り道になるからな。勿論、激戦地になった。結果守り切って、今の平和が有る訳だがね」

と昔を思い出す様に語るクシフォス。



この世界の地理を把握していないプリームスには断言出来ないが、西方諸国との関係が悪化すれば再びここが戦場になる可能性があるのではと思ってしまった。

いくら平和な時世とは言え、国境が観光地など危機感に乏しすぎる。



プリームスからすれば人は短命である。

故に1世代だけの平和に依存する人間達を見ていると、その危機感の無さに危惧してしまう。

人間の政治は不安定過ぎるというのに・・・。



だがプリームスがそんな事を心配した所でどうしようも無い。

プリームスは異邦人なのだから。



そう思い、クシフォスに協力を頼まれた事だけを考える事にした。

この地で苦しむ死熱病の患者を救う。


旅などで衰弱した身体なら発病からの重篤化は早い。

だがそうで無く体力の有るうちに発病したのなら、まだ十分に望みは有った。


個人差はあるが発病から1週間から2週間の猶予はあるとプリームスは考えている。

一旦クシフォスの屋敷に腰を据えて、必用な量の特効薬を調合する。


『先ずはそこからだ・・・』




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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして!! 今日読み始めたばかりですが、面白い誤字があったので報告しておきました。
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