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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第一章:終焉と新生
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19話・固有魔法(1)

地竜をアッサリ倒し戻ってくるスキエンティア。


プリームスはと言うと、活躍したスキエンティアを労う事も無く、指輪の収納に仕舞った葦を確認しているようだった。



何だかクシフォスは呆れてしまう。

この未開の地で危険な地竜に遭遇したにも拘らず、何も無かったように振る舞う2人を見たからだ。



クシフォスは溜息をつくと呟くように言った。

「プリームス殿、それにスキエンティア殿・・・まるで日常茶飯事のような様子だな」



指輪内の収納確認が終わったのか、プリームスはクシフォスに向き直る。

「うん? あぁ・・・魔物ばかり相手していた訳では無いぞ。そもそもが戦乱の多い地だったからな。戦いは日常茶飯事と言えるか」



少しだけ納得したクシフォス。

だが納得いかない事も増えてしまい、つい口を突いた。

「プリームス殿・・・失礼かもしれんが、言っている事と見た目が合わんのだ。どう見ても俺の半分に満たない年齢に見えるしな」



スキエンティアが気まずそうな顔をする。



「ふむ・・・」

と呟くとプリームスは何か思案するように視線を流した後、再びクシフォスを見つめた。

「要するに、この外見が気になる訳だな?」



そう問い返されたクシフォスは、虚を衝かれたように戸惑った。

そのような問いかけが来ると思わなかったからだ。

「え、あ・・・うむ・・・」



プリームスは自身の胸に手を置き、言った。

「クシフォス殿の言う通り、この身体は15歳程度の肉体年齢しかない。そして実際の私の年齢はクシフォス殿の9倍近くあると言っていいだろう・・・」



驚きの余り、目が点になるクシフォス。

「な?! 余計に分からなくなったぞ! どう言う事なのだ?」



スキエンティアが我慢出来なくなったのか、プリームスを庇う様に代弁し始めた。

「陛下・・・いえ、プリームス様は・・・色々ありまして、ご自身の肉体を維持出来なくなったのです。それで有事の際に用意していた、代わりの肉体を使用している訳です」



今度は驚きのあまり口を開けっ放しにしてしまうクシフォス。

そして我に返り再び問い返す。

「そんな事が可能なのか?! 我々が思いもよらぬ程の魔術か、何かの英知と言う訳か? それに俺の9倍近い年齢とか・・・にわかには信じがたい・・・」



苦笑するプリームス。

「まあそうだろうな・・・兎に角、この地の人間の想像を超える魔法や知識を、私が見せる事もあるだろう。その時は他言無用に願う。要らぬ諍いを招くゆえな」



クシフォスは相変わらず驚いた様子で挙動不審だ。

「あ、あぁ・・・了解した・・・」



プリームスは何事も無かったように、葦が綺麗に刈り取られて地面がむき出しになった場所に屈み込んだ。

「早々、クシフォス殿が想像もつかない魔法を見せるが、気にしないように」



するとプリームスを中心に半径1m程の光の魔法陣が地面に形成される。

更にプリームスは古代マギア語で詠唱を始めた。

「我が目となり彼の地に臨め・・・斥候(エクスプローラートル)



詠唱が終わり魔法陣が消失すると、プリームスの目の前に直径10cm程の黒い球体が出現する。

それは、まるで生き物のように球体内で流動し蠢いていた。



プリームスが瞳を閉じると、その球体は高速で急上昇し古代巨木の頂を超える。

そしてそのまま南を目指し超高速で飛び去ってしまった。



クシフォスは努めて驚かないようにしていたが、無理だったようだ。

「な、何だ今のは?! 魔法なのか? 物凄い勢いで飛んでいったが・・・」



スキエンティアが人差し指を自身の唇に縦に置くと、囁くようにクシフォスへ言った。

「静かに。プリームス様は今、先程の黒い球体を遠隔操作で制御しているところなのです。非常に高度な魔法ですので、集中の妨げにならないように願います」



黙り込んで首を縦に振るクシフォス。



それから5分程、球体を制御し続けていたのか、プリームスは微動だにしなかった。


そして固唾を呑み見守る中、プリームスは立ち上がりクシフォスとスキエンティアへ向き直った。

「到達した。2人とも私の傍に来なさい」



言われるがままクシフォスとスキエンティアは、プリームスの元に静かに、そして迅速に駆け寄る。


スキエンティアがプリームスに恭しく告げる。

「衣服以外は全て魔法収納に収めました。クシフォス殿も問題無いようです」



プリームスは頷くと瞳を閉じ、古代マギア語で呟いた。

「打ち込みし楔の元へ誘え」


すると3人を覆う大きさの魔法陣が足元に展開される。



クシフォスはこれから起こる事への期待で胸を膨らませた。

それと同時に未知への不安が心を覆い、足をすくませてしまう。



我ながら肝の小さい人間だと自己嫌悪するクシフォスであった。



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