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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第一章:終焉と新生
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1話・魔王討伐部隊 ※挿絵有り

デジタル作画の周辺機器が揃ったので、表紙を描いてみました。

初挑戦でしたので非常に難しかったです(苦笑)

テーマは、プリームスとスキエンティアです。

※2020.8.27追記

挿絵(By みてみん)

プリームスは仮設の玉座に静かに座していた。

終わりの時を迎える為に。



既に大元老院からの武装解除の書簡が届いていた。

更に人間側へ、、、教会に投降せよとの上意下達も含まれていた。

魔王は最高統治者であるにも関わらずだ。



しかし魔王プリームスは大元老院には従わない。

従う理由などない。

投降し、戦犯として扱われるなど武人としてのプライドが許さなかった。



ならば最後まで戦い、戦いの中での死を選ぶと言うもの。

それが武人の矜持であり、プリームスが選んだ責任の取り方なのであった。



「プリームス陛下、、、勇者共が間近まで迫っております」

誰もいない玉座の間でプリームスに話しかける声がした。


それは誰もが聞く事が出来る音や声の類いでは無い。

プリームスの意識に直接語りかける思念波(テレパシー)であった。



そしてその思念派の発信源は、プリームスの胸元に有る真紅の宝石がはめ込まれたネックレスからだ。



プリームスが少し怒った様子で呟いた。

「急に話し掛けるな。スキエンティア・・・ビックリするだろう」



スキエンティアと呼ばれた声の主は畏まったように、

「も、申し訳ありません・・・しかし、実体があらぬゆえ、手振り身振りが出来ません。よって急にしか話し掛けられません」



プリームスは溜息をつく。

「分かった分かった。相変わらず生真面目な奴だな、お前は・・・」



するとスキエンティアは戯けたような声で言った。

「生真面目なのは陛下がよく緩んでおいでですから、私めがしっかりしなければと思い、こうなったのですよ」



「フフッ」と小さく笑うプリームス。

「こんな時でも、お前はお前らしいな」

終末を迎えようと言う時に、何も変わる事の無い忠臣の振る舞いに心が絆される。



戸惑ったようなスキエンティアの声がした。

「左様で・・・」



次の刹那、玉座の間に緊張が走る。



スキエンティアが警戒した声で報告する。

「来ました」



その時、重く鈍い音が玉座の間に響き渡った。


開いたのだ、玉座の間の重い扉が。



そして姿を現したのは、軽装の剣士、ローブ姿の壮年の男、フルプレートの騎士のたった3人だけだ。

魔界最強の魔王を人間如きが、たった3人で討伐しようと言うのだ。

正気の沙汰ではない。



だがプリームスにとっては戦場で見知った顔でもあった。


幾度もプリームスの本陣へと斬り込み、プリームスを追い込んだ3人、。


プリームスが完全な勝利を達成しかけた時に、突如現れ人軍の撤退を成功させた3人、。


いつもここぞと言う場面で現れプリームスを悩ませた3人、。


そう、この3名は人類最強の戦士であり、大魔導士であり、大騎士であった。



プリームスはほくそ笑んだ。

人類最強の3人であれば、不足などある訳がない。

己が幕引きに打って付けの相手と言えよう。



あらゆる武器を使いこなすのを見た事がある。

その戦士然とした風貌の若い男が、プリームスを真っ直ぐに見据えて言った。

「魔王陛下・・・ご壮健そうで何よりです。しかし、こうして相見えるのは何度めでしょうね。最後にお目にかかれたのは、感慨深いものがあります」



プリームスは玉座に座したまま微笑んだ。

「両手の指で数える程だが・・・卿らはいつも、私が完全な勝利を得ようとした時に邪魔をしてくれた」


そして苦笑に変わる。

(まみ)えた数より悪い印象の方が強いがね」



すると戦士は苦笑すると恭しく礼をした。

「まだ名を名乗っていませんでしたね。私は魔王討伐暗殺部隊の隊長ディケオスニー・カーランドと申します」



ディケオスニーの背後に立っていたローブの男が前に歩み出た。

「ワシはペンシエーロ・・・貴女の討伐に協力するよう、教会より派遣された魔導士だ」



それを聞いたプリームスが少し驚いた様子で呟いた。

「ほほう・・・卿が人間界最強の大魔導士、ペンシエーロか。その名、魔界(マギアエザフォス)まで轟いているぞ」



かの魔王に褒められて嬉しかったのか、ペンシエーロは小さく笑むと横を向いた。



その後、待ち侘びたようにガシャリとフルプレートの音を立てて、全身白色の騎士が前に出た。


そして兜のフェイスガードを上げる。

「私はベーネだ」

そこにはうら若き美しい乙女の顔があった。



プリームスは唖然とした。

人軍最強の騎士と呼ばれる人物がこれ程に若い上、女性とは思わなかったからだ。



自嘲するようにプリームスは「フッ」と小さく笑った。

人間を見くびっていたと・・・。

自分は色々と洞察し違えていたと、今更ながらに思い知る。



強さは、才と可能性があれば時間など必要ないのかもしれない。

魔族よりも随分と寿命が短い人間だからこそ、その刹那に強大な力を発揮するのだ。



もっと彼等(にんげん)を知っていれば争い以外の道も有ったのかもしれない。



しかし、もう定められた幕引きを変える事は出来ない。

彼等と戦い自身に終末を告げるのだ。



プリームスは玉座から立ち上がる。

「名乗りは終わった。後は終幕を演じるのみ・・・」



掲げられたプリームスの右手に紅蓮の刃が召喚される。

「私を倒さねば戦は終わらぬ! さあ来るがいい全身全霊で! そして私に終末を告げてみよ!」



ディケオスニーとベーネが同時に剣を抜き放った。



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