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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第五章:古代迷宮の守人
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189話・プリームスの新たな目的   ※挿絵有り

プリームスのイメージ画です。

少し作風を変えました。


挿絵(By みてみん)


ギルドを新設する事となり、事は急展開に至った。

そしてこれの煽りをモロに受けたのは周囲の関係者だ。


先ずはエスティーギア王妃である。

突然リヒトゲーニウス王国と魔導院による魔術協定が発足され、それに伴い魔術師ギルドが新設されることになったのだ。

一番苦労が絶えない立場だと言えよう。



その次に夫である国王エビエニスだ。

事は上手く行ったものの、気付けば勝手に国家間の協定が結ばれていたのだから驚かない筈は無かった。

更に突然の来訪である魔導院法王ネオスの存在。

これには流石の国王も恐縮してしまい扱いに困ってしまった。



しかしながら結果的には両国にとって利益になる事であり、忙しさと気苦労だけが問題だろう。

また時を同じくしてリヒトゲーニウス王宮にとって好転する事態が発生した。



宰相ノイモン・レクスアリステラ大公の帰還である。



これに一番喜んだのは政治の中心である王宮関係者とエスティーギア王妃だ。

ノイモンが帰還するまで宰相代行をしていたのはエスティーギア王妃で、漸く肩の荷が降りたと言う所であった。



しかし良い事が有る一方、解決していない問題も残ってる。

魔術師ギルドの拠点をどこに構えるかが未だに決定しておらず、学園に間借りしたままで何時迄も(仮)の状態なのだ。


これに対してプリームスは、

「以前から言っていた我々の拠点も含めて考えようか」

などと言うが、もう確定的な候補は決まっているように思えた。


先を見通すプリームスは、あらゆる行動や言葉に意味があり既に何かしら仕込んでいる可能性があるからだ。



プリームスがダラダラとしつつも行動を起そうとした時、王宮から使者が訪れる。

帰還したばかりの宰相のノイモンが面会したがっているとプリームスの元へ連絡が来たのだ。


公には公表されていないが、プリームスは国王を死熱病から救いポリティークの謀反を事前に防いだ救国の英雄なのである。

宰相が直接会いたいと言うのは当然と言えた。



「嫌だ、面倒臭い! それに私は行きたい所があるのだぞ!」

とベッドでゴロゴロしながら文句を言うプリームス。

まるで駄々をこねる子供のようだ。


しかも寝起きなので下着姿のままであり、何ともだらしが無い。



「プリームス様はノイモン大公爵に興味を持たれていたのでは?」

スキエンティアが困ったように問いかける。



ノイモンはリヒトゲーニウス王国で2人しか居ない大公爵の片翼で、政を統括する文官最高位の宰相なのだ。

政治体系や仕組みに目が無いプリームスとしては、以前から興味があった筈である。


なのに時間とは残酷なもので、プリームスは他に興味深い物を見つけてしまったらしい。



そんな我儘放題のプリームスへ、侍女の様な格好をさせられたアグノスが歩み寄る。

「プリームス様、お出掛けになるのでしたら身支度を致しませんと・・・」



アグノスの様相に少しばかり見惚れたプリームスは、

「その姿、良く似合っているではないか。可愛らしくて悪戯したくなってきたぞ!」

などと言い出しアグノスに抱きついてしまった。



「あんっ! プリームス様・・・悪戯は2人きりの夜にでもお願い致します」

と満更ではないアグノスは、プリームスを抱きしめ返し照れた様子を見せる。



『はぁ・・・これは他人には見せられないな・・・』

馬鹿な恋人同士のような2人にスキエンティアは溜息をもらす。


ふと不思議にスキエンティアは思う。

魔術師ギルドの立ち上げに忙しい筈のアグノスなのだ。

こんな所でプリームスと油を売っていて良い訳が無い。


「アグノス姫、魔術師ギルドの方は宜しいので?」

そうスキエンティアが尋ねると、アグノスは憚る事無く自信満々で答えた。



「今日一日はメンティーラさんに任せているので大丈夫です!」



暗に今日はプリームスを独占すると言っているアグノス。

これにはスキエンティアも苦笑いをして引き下がるしかない。

「そうですか・・・ではフィエルテに武術の指南でもしておくとしましょう」



「何を隠そう今日はプリームス様からご褒美・・・では無く躾をして頂く日なのです」

すると訊いてもいないのにアグノスは惚気るように語り出す始末。


それはバリエンテ達とアロガンシアとの決闘前日に起きた事故の落とし前であった。

事実で言えば事故では無く、メンティーラの企てでバリエンテ達が食中毒を起こしたのだ。


この事態をアグノスが危険予測をして未然に防げなかったと言うのだが、そんな事はその場に居なければ対応出来る訳が無いのだ。

そしてそれを理由に、アグノスは自身への罰をプリームスに求めたのである。

その罰やら躾と言うのが、プリームスの面倒を全てアグノスが”侍女のように”世話をすると言う物であった。



『上手い具合にプリームス様を独占出来たと言う所か・・・まぁ偶には2人きりにさせてあげるべきですね』

正直な話、アグノスはプリームスがすべき理事の仕事を肩代わりしていたのだ。

それを考慮すれば、この程度のご褒美なら安い物だとスキエンティアは思ってしまうのだ。



そうしてプリームスは甲斐甲斐しくアグノスに世話をされて朝の身支度を始める。

因みにプリームスがダラダラしていた為、時刻はお昼前だ。

魔術師学園の件が片付いてからは肩の荷が降りたのか、プリームスはここ数日ノンビリ屋さんなのである。



しかしながら余り良い傾向では無いとスキエンティアは考えていた。

絶世の可愛らしい美少女が部屋でゴロゴロしているのだ、しかも下着姿で。

皆、プリームスを慕っている者ばかりゆえ目の保養になって良いのだが、如何せん風紀が乱れると言う物だ。



『ここはさっさと出払って貰うとしましょうか』

「プリームス様、エスティーギア王妃が来ればまたややこしい事になりますよ、早めにお出かけになられては?」



スキエンティアがそう言うと少し慌てだすプリームス。

その為、アグノスに着替えさせられている最中なのに歩き出してしまう。

「あれにも随分と仕事を押し付けてしまったからな、見つかると不味い。さっさと出かけるとしよう」



アグノスも慌てて服を着せながらプリームスへ問いかけた。

「は、はい。え~と、どちらへ出かけられるのですか?」



プリームスは首を傾げる様な仕草でキョトンとする。

「さっき言ったであろう・・・・我々の拠点を決めると。取りあえずは古代迷宮にでも行ってみるか」



「えええぇ!?」

以前に古代迷宮へ拠点を設ける案が上がり、アグノスは大反対していたのだ。

故にプリームプスの言い様に卒倒してしまうのであった。



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