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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1764/1764

1640話・山岳地下の古代遺跡(3)

長大で広大な回廊を進むこと2000m…漸くディーイー達は突き当りまで到達した。



「何なの…もう…」

その場に座り込んだディーイーは、目の前の壁を見て恨めしそうにボヤイた。



「完全に行き止まりですね。これと言った扉や門も無いですし…」

と同調するシン。



これにディーイーは軽く片手を振って否定した。

「いやいや、違うよ。ここまで歩かされた事に腹が立ったんだよ」



「えぇぇ…? では…この行き止まりに問題は無いと?」



「うん、一見して行き止まりに見えるけど、多分ここは開くよ」



「そうなのですか? でもどうやって…」

ディーイーの言う事が信じられない訳では無いが、明らかに只の壁なのだ。

シンが戸惑うのも当然だった。



するとディーイーは立ち上がり壁の前に立った。



「「……」」

何をするのかと、固唾を飲んで見守るシンとドロスース。



「ここを通さないと、無理やり壊して押し通るぞ!」

などと壁に向かって声を張り上げるディーイー。



これには流石のシンも目が点になった。

「え……そんな事で開く訳が…」



しかしシンの予想とは反し、急に地面が揺れると、壁の中から駆動音が鳴り始める。

そうして只の壁だった物が左右にズレ込み、更に奥の壁も上下にズレ込んだ。

これを奥に進むに連れ交互に繰り返し、やがては通路が出来上がったのだった。



「おお〜! 中々に頑強な隔壁だな。これだと破壊して押し通るのは、随分と時間が掛かっていたかもね」

開くのが然も当然とばかりに踏ん反り返るディーイー。



「え……えぇぇ…?!」

一方シンは、まさか開くとは思わず、小さく驚愕の声を漏らした。


またドロスースはと言うと、ディーイーが言った通りになり手を叩いて大喜びだ。



「さて…進もうか。折角の配慮だしな」

そう告げたディーイーは、壁に出来上がった通路へ身を投じる。

これに何の疑いも無く続くドロスース。



そしてシンは柄にも無く慌てた。

「お、お待ち下さい! これ自体が罠だったら…」

出来上がった通路を元に戻し、自分達を押し潰す事も可能な筈だ。



「大丈夫、大丈夫。万が一にそうなっても、宝珠でガッチリ守るから」



「えぇぇ…?!」

呆気に取られるシンだが、直ぐに何をすべきか察した。

『と言う事は、ディーイー様から離れては駄目だわ』



こうして3人は固まって通路を進むが、これまた想像以上に長かった。

凡そで50mは有り、これ程の隔壁はディーイーでも他に覚えが無い。


「これは…ひょっとして避難所だったのかな。若しくは…」

内部の物が外部に漏れ出さないよう、厳重に隔絶したのかも知れない。



そんなディーイーの呟きに、シンは少しばかり薄寒くなる。

「ディーイー様…私達が向かう先に危険が有るのでは?」



「うん…十分に考えられるね。宝珠で想定出来うる限りの防壁を張っておこう」



それを聞いてシンは胸を撫で下ろした。

しかしながら、その危険とは一体何なのか気になる所だ。

「どんな危険要素が有るのでしょうか? 私が足手纏いに為らないか心配です」



「ん〜〜武力的、または魔術的、後は……目に見えない危険かな」



「目に見えない…ですか?」



「この物質世界には、人間に見えない危険な物が多く存在するの。割と察知し易いのが硫黄だけど…これは露骨に臭いからね。でも無味無臭で全く見えない物も有る、これが非常に厄介なのよ」



シンは怖々(おずおず)と尋ねた。

「それは私の知る物なのですか?」



「今の文明では殆ど認識されてないと思う…例外は有るけどね」

ディーイーの言う例外とは、この大陸発祥では無い文明だ。


例えば守り人一族、月の民、魔導院、それにこの山岳地帯に隠れ住むまつろわぬ一族である。

これらは高度な文明を継承する外海の存在で、尚且つ神の加護まで得ているのだ。


『混沌の森の内郭程では無いにしろ、この遺跡は相当に高度な文明力で建設されている。下手をすると動力は…』

魔力炉だけで無く、原子核分裂炉を併用している可能性も考えられた。



「左様ですか…」

見えない危険…そんな物は呪いの類しかシンは思い当たらない。

されど呪いは呪力であり、それは詰まるところ根元が魔力で、その仕組みは魔術なのだ。


また魔術の成せる業は、常人には奇跡に見える。

事実、神の加護に因る神聖魔術は、正に奇跡の御業みわざと言えた。

そうなると魔術と同等以上の文明力は、もはや奇跡その物なのではないか?


そんな事を思いつつシンは、ディーイーをソッと見つめた。

『フッ…そう言えば何から何まで奇跡的な人が居たわね』

この超絶者が居る限り、どのような奇跡も色褪せて見えるだろう。



通路を抜けると、そこもまた同じように広大な空間が広がっていた。

だが1つだけ違う点があった。

まるで要塞の如き角ばった建物が、200m程先に見て取れたのだ。



「地下空間に建物…?」

余りの違和感に、率直な気持ちがシンの口を衝く。



「ふむ……一見して頑強な要塞にも見えるが…違うな。あの強固な造りは外部からの守りでは無さそうだ」



ディーイーの言葉では要領を得なかったが、それを素直に受け入れるなら答えは1つだとシンは考えた。

「あの建物で何かを閉じ込めている…?」



「うん。私の嫌な予感が当たってしまったようだ」



楽しんで頂けたでしょうか?


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続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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