1640話・山岳地下の古代遺跡(3)
長大で広大な回廊を進むこと2000m…漸くディーイー達は突き当りまで到達した。
「何なの…もう…」
その場に座り込んだディーイーは、目の前の壁を見て恨めしそうにボヤイた。
「完全に行き止まりですね。これと言った扉や門も無いですし…」
と同調するシン。
これにディーイーは軽く片手を振って否定した。
「いやいや、違うよ。ここまで歩かされた事に腹が立ったんだよ」
「えぇぇ…? では…この行き止まりに問題は無いと?」
「うん、一見して行き止まりに見えるけど、多分ここは開くよ」
「そうなのですか? でもどうやって…」
ディーイーの言う事が信じられない訳では無いが、明らかに只の壁なのだ。
シンが戸惑うのも当然だった。
するとディーイーは立ち上がり壁の前に立った。
「「……」」
何をするのかと、固唾を飲んで見守るシンとドロスース。
「ここを通さないと、無理やり壊して押し通るぞ!」
などと壁に向かって声を張り上げるディーイー。
これには流石のシンも目が点になった。
「え……そんな事で開く訳が…」
しかしシンの予想とは反し、急に地面が揺れると、壁の中から駆動音が鳴り始める。
そうして只の壁だった物が左右にズレ込み、更に奥の壁も上下にズレ込んだ。
これを奥に進むに連れ交互に繰り返し、やがては通路が出来上がったのだった。
「おお〜! 中々に頑強な隔壁だな。これだと破壊して押し通るのは、随分と時間が掛かっていたかもね」
開くのが然も当然とばかりに踏ん反り返るディーイー。
「え……えぇぇ…?!」
一方シンは、まさか開くとは思わず、小さく驚愕の声を漏らした。
またドロスースはと言うと、ディーイーが言った通りになり手を叩いて大喜びだ。
「さて…進もうか。折角の配慮だしな」
そう告げたディーイーは、壁に出来上がった通路へ身を投じる。
これに何の疑いも無く続くドロスース。
そしてシンは柄にも無く慌てた。
「お、お待ち下さい! これ自体が罠だったら…」
出来上がった通路を元に戻し、自分達を押し潰す事も可能な筈だ。
「大丈夫、大丈夫。万が一にそうなっても、宝珠でガッチリ守るから」
「えぇぇ…?!」
呆気に取られるシンだが、直ぐに何をすべきか察した。
『と言う事は、ディーイー様から離れては駄目だわ』
こうして3人は固まって通路を進むが、これまた想像以上に長かった。
凡そで50mは有り、これ程の隔壁はディーイーでも他に覚えが無い。
「これは…ひょっとして避難所だったのかな。若しくは…」
内部の物が外部に漏れ出さないよう、厳重に隔絶したのかも知れない。
そんなディーイーの呟きに、シンは少しばかり薄寒くなる。
「ディーイー様…私達が向かう先に危険が有るのでは?」
「うん…十分に考えられるね。宝珠で想定出来うる限りの防壁を張っておこう」
それを聞いてシンは胸を撫で下ろした。
しかしながら、その危険とは一体何なのか気になる所だ。
「どんな危険要素が有るのでしょうか? 私が足手纏いに為らないか心配です」
「ん〜〜武力的、または魔術的、後は……目に見えない危険かな」
「目に見えない…ですか?」
「この物質世界には、人間に見えない危険な物が多く存在するの。割と察知し易いのが硫黄だけど…これは露骨に臭いからね。でも無味無臭で全く見えない物も有る、これが非常に厄介なのよ」
シンは怖々と尋ねた。
「それは私の知る物なのですか?」
「今の文明では殆ど認識されてないと思う…例外は有るけどね」
ディーイーの言う例外とは、この大陸発祥では無い文明だ。
例えば守り人一族、月の民、魔導院、それにこの山岳地帯に隠れ住む服わぬ一族である。
これらは高度な文明を継承する外海の存在で、尚且つ神の加護まで得ているのだ。
『混沌の森の内郭程では無いにしろ、この遺跡は相当に高度な文明力で建設されている。下手をすると動力は…』
魔力炉だけで無く、原子核分裂炉を併用している可能性も考えられた。
「左様ですか…」
見えない危険…そんな物は呪いの類しかシンは思い当たらない。
されど呪いは呪力であり、それは詰まるところ根元が魔力で、その仕組みは魔術なのだ。
また魔術の成せる業は、常人には奇跡に見える。
事実、神の加護に因る神聖魔術は、正に奇跡の御業と言えた。
そうなると魔術と同等以上の文明力は、もはや奇跡その物なのではないか?
そんな事を思いつつシンは、ディーイーをソッと見つめた。
『フッ…そう言えば何から何まで奇跡的な人が居たわね』
この超絶者が居る限り、どのような奇跡も色褪せて見えるだろう。
通路を抜けると、そこもまた同じように広大な空間が広がっていた。
だが1つだけ違う点があった。
まるで要塞の如き角ばった建物が、200m程先に見て取れたのだ。
「地下空間に建物…?」
余りの違和感に、率直な気持ちがシンの口を衝く。
「ふむ……一見して頑強な要塞にも見えるが…違うな。あの強固な造りは外部からの守りでは無さそうだ」
ディーイーの言葉では要領を得なかったが、それを素直に受け入れるなら答えは1つだとシンは考えた。
「あの建物で何かを閉じ込めている…?」
「うん。私の嫌な予感が当たってしまったようだ」
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




