1639話・山岳地下の古代遺跡(2)
10分ほど休憩した後、ディーイーはソファーを片付けて思案し始めた。
「う~~ん………」
首を傾げるシン。
「如何されましたか?」
ここまで露骨に逡巡しているように見えたのは、ディーイーと出会ってから始めてかも知れない。
「え~と……ティミドには精霊王が付いてるから心配無いんだけど。私が”この有様”だからね……戦力を増強した方がいいかなって、」
『私が一緒に居る所為だわ……』
”この有様”とは、ディーイーが魔法の使用を控えて居る事と、少し前と比べて非常に疲れやすい事だ。
これはシンも十分に認識していた。
故に自分が守られる立場なのが、どうしても申し訳なく思えるのだった。
そんな胸中を察してか、ディーイーは微笑みながら告げた。
「フフフッ…前も言ったでしょ、シンさんは何も気にしないでって。それに私が倒れたら運んで貰わないといけないし」
「はい……それでしたらお任せください」
いまいち元気が無いシンを見て、考えを改めるディーイー。
『う~ん……口で言っても説得力がないか』
それならばシンが自責の念に囚われないよう、こちらが可能な限り配慮するしかない。
『まだ少し調整中だけど…あれを出すか』
要は自分以外の戦力が有れば問題ないのだ。
ドシン……と音がした。
「それは……」
急に出現した柄の長い斧に、シンは見覚えが有った。
「うん…ドロスースだよ。入力機構は十分なんだけど、どうもまだ出力に調整が必要そいうでね。それでも戦力としては十分過ぎるかな」
ディーイーの言及は要領を得ず、再びシンは首を傾げた。
「入力…? 出力…?」
「あ~~ごめんごめん。え~と…人の言葉はちゃんと理解出来るの。でもね話すのが中々難しいみたいで、そこがまだ調整中…というか練習中みたいな?」
「さ、左様ですか……ですが斧のままだと余計に…」
話せないだけでなく、そもそも移動できない。
「大丈夫だよ、今から人型に擬態化させるから」
先程にも増して怪訝そうにするシン。
「擬態化…ですか? と言う事は斧の姿が本来の物で、人型は無理をしているのですか?」
「ん~~~そうなるのかな? 100年以上前に作ったから、元々の設計基準は忘れちゃった」
などと言ってディーイーは舌を出す。
その仕草は可愛らしいが、少し小聡明く見えてしまう。
当然に慣れた相手ならイラっと来るだろうが、シンは諦めているのか溜息をつくだけだ。
「はぁ……そうなのですか」
「兎に角、ドロスースを私の護衛に使うから、シンさんは何も気にしないでね」
そう告げた後、シンの返答を待たずに直立不動のドロスースへ右手を差し出し続けた。
「さぁドロスース…人型に擬態して」
直後、巨大な斧が淡く光を放ち、その輪郭が光の粒となって崩壊する。
そして光の粒が拡散したかと思うと、瞬時に集束し始めて人型の輪郭を模したのだった。
「凄い……こんな変化?の仕方をするんですね」
シンは半ば呆気にとられた様子で呟いた。
物質が光になり、それが再び物質になるのだから、誰だって驚いて当然だろう。
「ふむ……問題なく人に擬態化出来たみたいだな。今から私の護衛をして欲しいんだが、ちゃんと熟せるか?」
そうディーイーに尋ねられ、ドロスースは小さく頷いた。
『う~ん……やっぱり以前の私を模した所為か、スキエンティアに似て見えて仕方がないな…』
ちょっと気不味く感じてしまうディーイー。
そんな主人の胸中など知らずに、ドロスースは嬉しそうにディーイーに抱き着いた。
「ちょっ?! じゃれつくな! うぅ……あぁ……何処触ってるんだ!?」
ディーイーは人懐っこい犬に絡まれた様になり、そのまま引っ繰り返る羽目に。
「あ…ディーイー様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だけど大丈夫じゃない!」
「やれやれですね……さぁドロスースさん、こちらへ」
どっちなんだよ…と突っ込みたくなるのを堪えて、シンはディーイーからドロスースを引きはがした。
これにドロスースは名残惜しそうに離れると、少し不満そうにシンを睨めつける。
不安になるシン。
「え……これって私…大丈夫なのでしょうか?」
「どっこしょ…」と年寄り臭く呟きながら立ち上がると、ディーイーは直ぐにドロスースを叱りつけた。
「こら! ドロスース! シンさんを威嚇するんじゃない! ”大人しく”私の傍に居なさい」
するとシュン……と縮こまり、ソッとディーイーの傍にドロスースは立つのだった。
『はぁ……ディーイー様には素直なのが救いね』
少し冷っとしたが、噯にも出さずに尋ねるシン。
「では、このまま進まれますか? 私としては罠の存在が心配ではありますが」
「そうだね…一応は私が宝珠で探査しながら進んでるけど、恐らく罠は仕掛けて来ない。既に分断は成されているから、このまま堂々と進もう」
「承知しました」
『堂々と…』
その言葉にシンは大事に為らないか不安になる。
多分だが、ここは服わぬ一族の遺跡に違いない。
そんな場所に無断で侵入し、剰え遺跡の管理者までボコろうと言うのだ。
これは明らかに敵対行為であり、当初の目的を忘れているようにも思えた。
『はぁぁぁ………本当に大丈夫かしら…』
表に出さないよう胸中でしたつもりが、うっかり肩と鼻で溜息をついてしまうシンであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




