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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1761/1764

1637話・人間と精霊の格差

長大な回廊?を進むティミドとスィエラ。

この施設は地下に在りながら、相当に広大な物なのは明らかだった。

今歩み進んでいる回廊の幅は5m程度だが、高さは100にも及び、奥行きに至っては視認出来ない程だ。



「う~ん…少し灯りが有るのが救いね。でもこれって…」

古代遺跡なのは間違い無いが、ティミドは未だに稼働している事が不思議に思えた。

そもそも古代遺跡とは失われた文明の遺産で、故に”遺跡”なのだ。



頷くスィエラ。

「この遺跡は生きている…と言っても迷宮のような意味では無いけど」



「ここが何の施設か分かる?」



ティミドの問いに、スィエラは何かを探るように瞳を閉じる。

そうして暫くすると答えた。

「……この空間は水が満たされていた形跡がある。人の概念で表現するなら"貯水槽"と言った所ね」



ゾッとするティミド。

「え……貯水槽?! このまま此処に居て大丈夫なの?!」

急に水が流れて来たら堪ったものでは無い。



「それは大丈夫だと思う。万が一に水が流入しても、直ぐには一杯にならない程に広い。でも出入り口らしき場所は1箇所しか無いわ」



ティミドは遥か回廊の先を見据えた。

『って事は…進むしかないのか』

背後はドンつきの行き止まり…つまり貯水槽の隅っこへ転送された訳だ。

これが意図した罠なのか、それとも偶然なのか…どちらにしろ厄介な転送の罠と言える。

「スィエラ…次は罠に掛からないよう助けてくれる?」



「うん…どんな罠であろうと事前に知らせるわ。だからもう心配しないで」



精霊王の言質を得た、ならば何も不安はない。

只、少しばかりティミドは欲が出た。

「え〜と…私をディーイー様の元へ転送させる…なんて出来ないかな?」



「……私は大気や軽い物質の操作が得意なの。時空を捻じ曲げて転送する能力は無い」

と何故か不服そうに答えるスィエラ。



『んんん?? 何で機嫌が悪いの?』

ティミドは怪訝に思う。

何より自分の思考が筒抜けで、どうしてかスィエラの思考が自分に筒抜けないのは納得が行かなかった。



するとスィエラは人間の様に溜息をついた。

「はぁ……貴女と私の魂が共有されても、貴女の格が私の水準に達していないのよ。その所為で貴女は私の思考を知覚出来ない」



「格って…何だか酷いわね…」

正直、自分が小物だと言われた気持ちになるティミド。



「あ……ごめんなさい。」



『意外に殊勝なのよね…』

「良いわよ別に。それよりも、このまま進んで出られそう? 出来るだけ早くディーイー様と合流したいのだけど」



「それは難しいかも知れない。私だけなら精霊界アストラルサイドを使って移動は可能だけど、私は貴女から離れられない。当然、貴女と共に精霊界アストラルサイドへも行けない」



「えぇぇ?! スィエラとも精霊界アストラルサイドに移動出来ないの?!」



スィエラは申し訳無さそうに頷く。

「さっきも言ったけれど、貴女の格が私の水準に達しなければ、全ての能力を自在には使えない」



ティミドは余の衝撃と落胆で、脳裏に「ガーン!」と音がした錯覚に陥る。

「そんな…」


本音で言えば精霊界アストラルサイドを使う移動法を一番期待していた。

それが自在に可能なら時間の短縮どころか、戦術的…いや戦略的に大きな貢献が可能だからだ。

何より今の状況を容易に打開出来る筈で、その期待が呆気なく破綻すれば、絶望も一入ひとしおと言うものである。



その様子を目の当たりにしたスィエラは、有無を言わさずティミドを抱きかかえた。



「ちょっ?! な、何!?」



そして驚くティミドを他所に、そのままスィエラは疾走し出したのだった。



「どうして私を抱えるの?! って、速っ!!」

余の速さに舌を噛みそうで、直ぐに口を噤むティミド。


こんな速度は飛行魔法でも再現出来ない。

だが不思議な事に恐怖を感じなかった。

『何だか…まるで一体化してるみたいな…』



「これが契約した存在同士の親和性よ。そうして沢山の経験を経てさらに親和性を強めるの」



『それで私の格は上がるのかな…』



そのティミドの淡い期待は直ぐさま伝わり、疾走しながら答えるスィエラ。

「そうよ。だから焦らず私に身を委ねなさい」

そう告げた直後、急停止した。



「え…?!」

何と、遥か先にある筈の出入り口が、いつの間にかティミドの目の前に見えていたのだった。



スィエラは察したように告げる。

「直ぐ慣れるわ、思考と意識の高速化が進めばね」



『そう言えばディーイー様が言っていたっけ…』

以前、主君から言われた言葉を思い出すティミド。


"どれだけ速く動けても、それを認識して制御出来る意識が無ければ意味が無い。"

"その為には脳の演算速度を上げる必要が有るが、それを可能にするのは超絶者の域に達した者だけだ。"


当時、これらの言葉を朧げに聞いていた。

しかし此処に来て、漸くティミドは理解に至った。

『うぅぅ…私の馬鹿馬鹿! 折角ディーイー様が教えを与えてくれたのに』



「フフッ…そんなに自分を卑下する事は無い。言葉で伝えられて身に付くなら、人類は超絶者ばかりになっていた筈よ」



「それはそうだけど…」



「先ずは此処を出ましょう」



スィエラの切り替えの早さに、ティミドは半ば唖然とする。

「え……あ、はい…」

そうして見据えた出入り口?は、この遺跡の入り口よりも強固に見えた。

『こ、これを突破するの…?!』


ティミドが愕然とするのも当然だった。

その理由は、スィエラが出入り口と言う"壁"が、一切の隙間が無い只の壁だからであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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