1635話・人間と精霊の違い
「北方諸国での神獣の加護は、元より定められた領域にしか効果が有りません。なので幾ら頑張ろうとも、本土と同じ加護を辺境は得られませんよ」
「「「……」」」
このロギオスの爆弾発言に同席していたガリーとガオシャン、それにクルトは唖然としてしまった。
『この事実を知る者は、今では私やグラキエース殿しか居ないですし…まぁ驚いて当然ですか』
などと密かに思うロギオス。
だからと言って所詮は他人事…特に同情する気は無かった。
「さて…話は逸れましたが、如何しましょうか」
如何とは、船に不在で行方が知れない主君の事である。
これを察したグラキエースは直ぐに答えた。
「勿論捜索します。先ずは最後に居られた座標へ向かいましょう」
「同感です。では早々に支度をしましょうか」
そう返したロギオスは、我先にと席を立った。
ここで我に返ったガリー。
「え…ちょっ!? 捜索に向かうのは賛成ですが、こっちの報告が済んでませんよ?」
「ん? あ〜〜そうでしたね。では手短に願えますか?」
面倒臭そうな雰囲気がダダ漏れのロギオス。
又もや苛立たされるが、グッとガリーは堪えて言った。
「ガオシャン様を次の龍王に擁立します。差し当たって永劫の帝国の協力が必要になると思います」
「……」
ロギオスは何も言わず、僅かに片眉を動かした。
『これは流石に不味かったかな…』
グラキエースの後ろ盾が有るとは言え、気不味くなってしまうガリー。
ここで漸く我に返ったガオシャンが口を開いた。
「他国を龍国内の争いに巻き込む事は、本来なら有っては為りません。ですが他に拠り所が無く、永劫の帝国に縋るしか無いのです…」
「ふむ…私は特に反対する気はありませんよ」
サラッと容認するロギオスに、ガオシャンは驚きを隠せない。
「え…?! 宜しいのですか?! てっきり私は反対されるかと……」
「グラキエース殿が居て尚、その様な話になったなら、とやかく私が言う道理は有りません」
このロギオスの返答は、"グラキエースが尻を持つ"のだから勝手にすれば良い…と暗に告げていた。
「そ、そうですか…有難う御座います」
何が「有難う」なのか…などと自分でも思うが、兎に角は反対されずガオシャンは胸を撫で下ろす。
「では聖女皇陛下の捜索に向かいましょうか」
と告げたロギオスは、もう用は無いとばかりに席を立つのであった。
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ティミドは片膝を付いて腰を摩って居た。
「痛たた……」
「ティミド…大丈夫?」
晴天のように美しい髪の麗人が、心配そうに尋ねた。
彼女は水晶の様に透き通る肌を持つ人外…風の精霊王スィエラだ。
「だ、大丈夫よ…スィエラが居なかったら危なかったけど、」
実は広大な回廊を進んでいる最中に、転送系の罠?が発動したようなのだ。
そして強制的に飛ばされた場所が空中で、ティミドは危うく落下死する所だった。
それをスィエラが咄嗟に浮遊魔法を施し、無事に地面へ降ろした訳である。
因みにティミドが腰を摩っているのは、転送された直後に壁へ腰を打つけたからだ。
「それにしても……」
ティミドは飛ばされは場所に困惑する。
初めに居た場所と同じく高すぎる天井なのだが、幅が打って変わって5m程しか無いのだ。
また回廊なのか、先が見えない位に奥行きが長い。
幸いなのは明かりだ。
天井付近に何らかの照明機構が有るようで、それが照らす光で辛うじて見通せた。
「先の回廊もだけれども、ここも相当に広い空間だわ」
と同調するようにスィエラが呟いた。
「ここって何処か分かる?」
「初めに居た場所からは大して離れていない。只それは座標の話で、高さに於いては随分と地下へ移されたわ」
「……」
スィエラの言葉に、どうしてかティミドはゾッとした。
それは潜在的に感じる危機感か?
或いは不手際に因る自責の念だったのだろうか?
どちらにしろ主君と分断されたのは間違い無い。
『うぅぅ…どうしよう』
ティミドの心情が伝わり、同じ様に落ち込むスィエラ。
「すまない…私が付いていながら、こんな事になるなんて」
契約により魂の共有を果たした今、互いの情動をも共有してしまうのだ。
「あ…いや……そもそも私が迂闊だったんだし、スィエラが責任を感じる事は無いよ」
「……」
それでも気落ちしたままのスィエラ。
『あぅぅ……これじゃぁ自分で自分を慰めるようなものか…』
慣れて居ない所為か、ついティミドは魂の共有を失念してしまった。
兎に角は自分の気持ちを改めねば、スィエラにまで影響が出る。
『私が確りしないと!』
するとスィエラが怖々と尋ねた。
「気になる事が有る。訊いても良いかな?」
「え…? あ、うん…どうぞ」
改まるスィエラに、少しばかり不安をティミドは感じる。
生涯を共にする契約の間柄であり、今更になって余所余所しく問うのは変だからだ。
「その…貴女の伴侶は大丈夫なの?」
「伴侶…?」
まさかの問いにティミドは半ば唖然とした。
「貴女と結婚をした男性… レティ-センシアだよ」
「なっ…!」
何故それを?…と言い掛けて止めるティミド。
恐らくだがスィエラは思考や情動だけで無く、こちらの情報までもが筒抜けなのだ。
そうで無くば、この問いは有り得ない。
「初めに伝えておくべきだったわね。貴女と私は凡ゆる面で繋がってしまったの。だからティミドの記憶は私の物でもあるわ」
「ちょっ!? そんなの何にも隠せないじゃない!!」
スィエラは不思議そうに首を傾げる。
「…? どうして隠す必要があるの?」
「…!!」
ここで漸くティミドは、精霊と人間の違いに気付く。
そう…精霊には人間の常識が通用しないのだ。
そして同じと思われた情動の変化は、"共有した為に起こった反応"だったのかも知れない。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




