1634話・主君の行方と辺境の真実
ロギオスの報告に因り、アドウェナを見逃した事が発覚。
これにガリーが随分と怒りを露わにしたが、議論と対策の場だと言う事で何とか収拾がついた。
ここで自然とグラキエースが議長を担い話を進めた。
「メディ.ロギオス…どうしてアドウェナを逃がしたのか、その理由を聞かせて貰えますか?」
どう答えるべきか、ロギオスは僅かに逡巡する。
『どうしましょうかね……』
逃げたアドウェナが如何に行動するか観察したい…それが本音だった。
これは因果律を研究する上で、実に良い検体と言えたからだ。
またアドウェナが自分の弟子…もとい原体の弟子と言う点も見逃せなかった。
複製体の自分でも、原体の業は引き継がれるのではないか?
それを知る為、敢えて不手際を選んだとも言えた。
しかしながら、こんな事を説明できる訳も無い。
『なら正攻法ですかねぇ』
「ハクメイ姫の救出を最優先にした結果です。それに乗っ取られていた都督妃も、無傷で取り返したのですよ。称賛されても咎められる理由は無いと思いますが」
これにグラキエースは冷静に指摘で返した。
「ふむ……そうですね。ですがメディ.ロギオスなら、アドウェナの処理も可能だったのでは?」
「いえいえ、それは買いかぶり過ぎですよ。何よりアドウェナの処理は仰せつかっていません、ですから聖女皇陛下の御沙汰をと思いましてね」
「そうですか…」
一応の筋は通っている。
故にグラキエースは、それ以上の追求を止めた。
仮に危惧する点が有るとすれば、ロギオスが何かを画策している可能性だ。
だが、その可能性も低い。
何故ならロギオスは主君に恩義を感じ、強い忠誠心で仕えている為だ。
つまり主君は当然の事、永劫の帝国へ害をなす結果にはしない筈なのだ。
「しかし…聖女皇陛下の判断を仰ごうにも合流座標が変更された上、船にも不在とは……」
と少し落胆気味に呟くロギオス。
これにはグラキエースも、敬愛する主君に早く会いたかったので同感だった。
それでも私情は隠して言った。
「元の合流座標は東陽省の都市上空でした。それを踏まえると我々の到着が早いか、或いはディーイー様の方が遅くなると考えられたのかも知れません」
「只それだけの理由なら構わないのですが、聖女皇陛下の正確な位置が把握出来ていません。嫌な予感がしますね」
このロギオスの言葉で艦橋が静まり返った。
ディーイーは自由気ままで奔放な所がある。
されど連絡の遣り取りをした状態で、急に行方が分からなくなる事は無かった。
つまりグラキエースやロギオスの干渉力が、"何らかの力"に因って阻まれている可能性あるのだ。
「……私とディーイー様は、とある魔導具で凡その位置が把握出来ていました。その情報が今は途絶えた状態です」
そう告げたグラキエースの声音は至極冷静だが、その表情は僅かに陰っていた。
「魔導具とは…確か宝珠でしたか。聖女皇陛下へは1世代の物でしたよね? そしてグラキエース殿の物は新しい第二世代…ひょっとして宝珠間の送受信が上手く行ってないのでは?」
などと言い出すロギオス。
もう批判を通り越して難癖である。
またもや諍いか?!…と居合わせたガリー等は焦ったが、グラキエースは然して気にした様子を見せなかった。
「そう言うメディ.ロギオスこそ、ディーイー様に付けていた人工精霊が役に立っていないのでは?」
正に静かな煽り合いだ。
それでも甲板での諍いに比べれば大人しく、実に冷静で理知的に見えた。
なので当然にロギオスも飄々と返す。
「フフッ…これは手厳しい。まぁ人工精霊との送受信が遮られたのは、恐らく何らかの施設に入ったからでしょう。それも並々ならぬ強固な何かです」
ここでハッとするガリー。
「…! もしかしてディーイー達は迷宮とかに潜ったって事?!」
「いえ、迷宮程度ならば私やグラキエース殿の干渉を阻めません。そうなると超文明の古代遺跡に潜ったか…若しくは宝珠と人工精霊の破壊が考えられます」
このロギオスの推測は前者なら意味不明で、後者なら予期せぬ襲撃や事故が起きた事になる。
「超文明の遺跡って……リキさんの故郷を守る為に、どうして遺跡に潜る必要があるんです?」
「さぁ? 飽く迄も可能性の話ですよ」
ロギオスの返しに、やはりイラッと来るガリー。
「ちっ…! はいはい、そうですか」
『グラキエースさんも、こんな人と良く真面に会話出来るわね…』
そのグラキエースはと言うと、何故か頭を抱えていた。
ロギオスの言葉を真に受けたとは思えないが、何か危惧する心当たりが有るのかも?
そう考えたガリーは慌てた。
「え……グラキエースさん? どうしたの?!」
「メディ.ロギオスの推測は十分に可能性が有ります。何せディーイー様は知識欲旺盛で奔放ですから。それに…」
「それに…?!」
「この地域は北方の辺境ですが、元は混沌の森だったのです。そうなると危険な遺跡が存在しても、何ら可笑しくは有りません」
「え……混沌の森……?!」
まさかの言葉にガリーは半ば呆気に取られた。
するとロギオスも頷く。
「左様…以前は本土だったと今の民は思い込んでいます。これは明らかな情報操作ですよ…龍国中枢のね」
余の衝撃に、ガリーは完全に固まってしまう。
「……」
それは同席している龍国の"元聖女"であるガオシャンと、その使徒のクルトも同じだった。
「そんな……」
「辺境の悲願は…」
「ん? 辺境の悲願…?」
クルトの言葉に反応するロギオス。
クルトは怖々と答えた。
「その…辺境は本土復帰を希望にし、本土へ貢献し続けて来たのです。これでは……」
「そう…北方諸国での神獣の加護は、元より定められた領域にしか効果が有りません。なので幾ら頑張ろうとも、本土と同じ加護は得られませんよ。まぁ火炎島のような例外は有りますがね」
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




