1633話・ほうれんそうと、憤慨のガリー
少し?諍いが起きたが何とか収まり、次元潜航艇の船内に入った一同。
この船はディーイー専用に誂えた物で、何処にでも寝そべられるよう各所へソファーが設置されていた。
勿論、ディーイーが寝そべる為である。
それを目の当たりにしたガリーは、つい苦笑してしまう。
「フフフッ…何ともディーイーらしい船と言うか…」
通路に転々と設置されたソファーが、妙にシュールに感じたのである。
すると案内していたカルボー010が溜息をつく。
「はぁ……ただ怠惰なだけなら良いのですが、ディーイー様は脱いだ物を彼方此方に置くので、片付けるのが大変です」
「あ〜〜分かる! 今はティミドさんが居るから大丈夫だけど、いつも俺が片してたからなぁ」
そんなカルボー010とガリーの遣り取りに、ロギオスが然りげ無く割って入った。
「聖女皇陛下のご様子ですが、いつもと変わり有りませんでしたか?」
「え…? いつも?」
意図した意味が分からず問い返すガリー。
「これは言葉足らずでしたね。私が知りたいのは実際に接して居た貴女方が、聖女皇陛下の体調に違和感を感じなかったか?…ですね」
「う〜〜ん……」
ガリーは考え込んでしまった。
何も無い時のディーイーは、いつもダラダラしている。
それが普通なのか、或いは体調不良なのか判別が付かなかった。
答えあぐねるガリーに、ロギオスは苦笑いを浮かべる。
「巧みに不調を隠しているかも知れませんね。まぁ今のは気にしないで下さい」
あの狂気の魔法医師に意味深な事を言われては、誰でも不安になると言うものだ。
「その…ディーイーの体は大丈夫なんですか?」
心配そうにガリーから尋ねられ、いつも通りロギオスは飄々と答えた。
「全く問題は有りませんよ。只、私の目が届かない所で無理をしていないか確認しただけです」
「そうですか……」
こうして些細な会話が終わる頃、ガリー達は艦橋へ案内された。
「どうぞ皆さん、お好きな席へ着かれて下さい」
口調は丁寧だが、妙に投げやりなカルボー010。
そんな人工精霊に文句を言う事も無く、皆は思い思いの席に座る。
また明らかに上座な艦長席へ、敢えて座ろうとする者は居ない。
因みに艦橋に備え付けられたテーブルは、幅が3m、長さが6mもある。
用途は主に作戦会議や、こう言った話し合いの場で使われる。
その艦長席の右隣へ座ったグラキエースが言った。
「さて、首尾の報告と確認、それと問題や課題があれば解決策と対策を考えましょうか」
この言い様は"問題が有る"と暗に告げていた。
そして事前に話し合いの場を設けた事で、他者からの批判を封じるものでもあった。
その更に右隣に座ったガリーは、グラキエースの振る舞いに舌を巻く。
『先手を打つなんて…流石はグラキエースさんだわ。強いだけじゃ無いのね』
伴侶だけに誇らしく思えた。
そもそもペクーシス連合王国を建国した存在で、建国の祖なのだから弁が立って当然ではある。
加えて毅然とした佇まいは、他者を率いる統治者の風格を感じさせた。
グラキエースへ対面するよう、下座に着いていたロギオス。
彼が態とらしく挙手した。
「いいですか?」
それを見て若干だが当てつけに感じるガリー。
『この人…一体何なの?! あんな一番遠い席に座って』
ここには5人しか居らず、皆んなで近い席に座れば良い筈なのだ。
対してグラキエースは気にして居ないのか、至極冷静な様子で返した。
「何ですか、メディ.ロギオス」
「先ずは当方の状況を報告しても?」
「どうぞ」
「ハクメイ姫…それと黒金の蝶の副団長サーディクさんは、無事に救出致しました。またその序でにヤオシュさんの母君も救出しましが、それに伴い問題が発生しまして…」
そう前置きをしたロギオスは、アドウェナを敢えて見逃した事を告げた。
これへガリーが真っ先に声を上げる。
「なっ?! アドウェナを逃がしただって??!!」
声を荒げるガリーを見て、ロギオスは首を傾げた。
「はて? どうしてそんなに血相を変えるのですか?」
『こいつっ!!』
苛立ちが頂点に達してしまうガリー。
自分達を死地に追いやろうとしたアドウェナを、見す見す見逃したのだから当然だ。
「あの女が何をしでかすか分かったもんじゃない! 絶対に逃がすべきじゃ無かった!」
「ふむ……」
これまた態とらしく相槌を打つロギオス。
明らかに人を小馬鹿にした様子だ。
一方、アドウェナを直に知っている訳では無いので、グラキエースは事の重大さを認識していない。
それでも伴侶が此処まで心配するのだ、故に軽視は出来なかった。
「メディ.ロギオス…禍根を残したのでは?」
ロギオスは内心で溜息が出そうになる。
『やれやれ…伴侶の肩を持つと言う訳ですか』
「私は与えられた使命を完遂しただけです。アドウェナの確保や処理は仰せつかっておりませんよ」
全くその通りであり、ガリーは言い返せない。
「くっ…」
因みにグラキエースも使命は完遂したが、それに付随する問題が発生している。
その為、彼女自身も強気には出れなかった。
何より此処は批判では無く、報告や対策を議論する場なのだから。
「兎に角、過ぎた事で揉めても仕方ありません。何か対策を講じた方が良いでしょうね」
「と、グラキエース殿も仰っていますが…如何しますか、ガリーさん?」
多分、ロギオスは普通に喋っているのだろが、どうしても揶揄気味に聞こえてしまう。
その所為でガリーは苛立ちが収まらなかった。
「もう勝手にすれば!」
『ふふっ……そんな口を私に利けるのは、この世で数える程しか居ませんよ』
妙に愉悦を覚えるロギオス。
狂気の魔法医師は恐怖の対象であり、忌避される存在だった。
故に感情を正面から打つけようとする者など、殆ど居なかったのだから。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




