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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1756/1764

1632話・一触即発の褐色と狂気(2)

「そうですか……」

落胆した様子で相槌を打つロギオス。

自分の言葉がグラキエースに届かなかった為だ。



その直後、周囲に舞っていた雪の結晶が集まり、数百本にも及ぶ鋭い氷柱が出現した。

グラキエースが"攻撃の為"に作り出したのは、火を見るよりも明らかで、その対象はメディ.ロギオスなのも明白。


そしてグラキエースの逆鱗に触れた代償が、氷柱に串刺しにされて命を落とす…これを一体誰が予想しただろうか?

恐らく馴染みのあるプリームスやスキエンティアなら、氷武帝と呼ばれた彼女の恐ろしさを知って居た筈だ。


そう、相手を選ばぬ無知故の愚行…それをロギオスは犯した。

されど彼は一切怯まずに告げる。

「私を殺して溜飲を下げたとして、その後は如何するのですか? 永劫の騎士(アイオーン・エクェス)同士が争ったなど、聖女皇陛下が何と思われるでしょうねぇ」



「言ったろう、貴様は危険分子だと。それを処理した理由を話せば、きっとプリームス様も理解される…だから安心して死ぬが良い」

と答えたグラキエースは徐に右手を掲げた。



全天を覆うような無数の氷柱。

それがグラキエースの仕草に合わせ、一斉に放たれようとした。



「…?!」

グラキエースは目を見張った。

何と二人の間にガリーが割って入ったのである。



「グラキエースさん! こんな所で仲間割れなんてしないで!!」

そう声を張り上げたガリーは、背後へ向き直り続けた。

「メディ.ロギオス! 貴方もです! あなた方は何の為に此処へ来たの? ディーイーの役に立つ為に来たのでしょう? なのに諍いを始めて…馬鹿なんじゃない?」



この世で"この二人"に「馬鹿なんじゃない?」などど言える者が居るだろうか?

居る筈も無い。

仮に居たとしても、二人の主君である聖女皇くらいだ。


それを差し置いて諭しながらも、二人へ罵声を浴びさせたガリー。

はっきり言って命知らずである。

幸いなのは一人が彼女の伴侶な点だが、それでも片方は狂気の魔法医師(ルナメディクス)…このままでは済まないだろう。



「ガリーさん……そこを退いて下さい」

グラキエースは怒りを抑えながら言った。



「嫌よ、退かないわ! 俺の言っている事は間違って無い筈だもの!」



「……」

グラキエースは逡巡した。

ここで引けばロギオスの言葉を認めた事になる。

かと言って攻撃すれば、伴侶ガリーを巻き込んでしまうからだ。



「まさか"この私が"庇われるとはね……」

そうロギオスは呟くと、首を垂れて謝罪した。

「グラキエース殿…不敬な言い様をして申し訳ありませんでした。それにガリーさんと他の御二方も、気を揉ませてしまいましたね…申し訳ありません」



"あの"狂気の魔法医師(ルナメディクス)が先に折れた。

この事実にガリーは目を丸くする。

「……」

『え? え? グラキエースさんを止めたのに…』


脅されていたのはロギオスであり、止める相手はグラキエースなのは間違いない。

しかしながら諍いの起因はロギオスだ。

その彼が謝罪したなら、すんなりと収まるかも知れない。



次元潜航艇の全天を覆っていた氷柱が、一斉に霧散した。

その所為か辺りに雪の結晶が舞い、月明かりで細氷の如くキラキラと輝いたのだった。



「はぁ………私も大人げ無さすぎました」

と溜息をつきながら言うグラキエース。

既に先程までの威圧感は消失していた。



その場にガリーはヘナヘナと尻餅を付いてしまう。

『あぅぅ…死ぬかと思った』

仮にグラキエースを止められても、ロギオスが黙っていないと思ったのである。



そんなガリーに慌てて駆け寄るガオシャン。

クルトに至っては、グラキエースの威圧に晒されて硬直したままだ。



「ちょ、ちょっと、永劫の騎士(アイオーン・エクェス)は一枚岩なのでは無かったの?!」

声を張り上げたいのを抑えて、ガオシャンはガリーへ囁いた。


事前に聞いて居た話では、永劫の帝国アイオーン・アフトクラトリアは聖女皇の為に存在するとの事だった。

つまり直属の臣下であり、超が付く精鋭の永劫の騎士(アイオーン・エクェス)は、当然に一枚岩でなくては為らない。

これでは主君の意向を無視し、権力闘争をする貴族と変わりない。



「そ、そんな事を言われても…」

困惑するガリー。


超絶者と言えど、それぞれは結局のところ全能では無い人なのだ。

つまり人なら人らしく、多少の喧嘩はすると思えた。

只、何か食い違いや諍いが起こった場合、その規模が尋常では無いのが怖い所だ。



何だか良く分からない諍いが収まり、取り敢えずは良しとすべきだ。

そう気持ちを切り替えたガオシャンは、ロギオスに一礼をして名乗った。

「初めまして…私はリン-ガオシャン……いえ、只のガオシャンとお呼び下さい」



対してロギオスも一礼をして応えた。

「ロギオスです。一応は医者ですので、メディを付けて呼んで頂けると幸いです」

先程の諍いは何処へやら…ケロッとしているのは流石は狂気の魔法医師(ルナメディクス)である。



「あれ…? そう言えばハクメイ姫とヤオシュさんは?」

失念していたように尋ねるガリー。


そもそもハクメイを救出するのがロギオスの使命だった筈。

また同行していたヤオシュが居ないのも、明らかに変だと言えた。



「ハクメイ姫でしたら…アドウェナに操られていた負荷で疲弊しまして、今は安静に眠っていますよ。それとヤオシュ嬢は救出したサーディクさんと母君を看病中です」



ロギオスの返答に、ガリーは少しばかり青ざめた。

「まさか…救出が上手く行かなかったのですか?!」



「いえいえ、寧ろその逆ですよ。上手く行ったから現在療養中なのです。兎に角、ここでは話し辛いですし、中で話しませんか?」



「あ…は、はい……」

抜けかけた腰に鞭を打ち、ガリーは立ち上がった。

そして思うのだ…一体、メディ.ロギオスは何をしたかったのだろうと…。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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