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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1623話・不器用な精霊

物凄く遅い昼食を終えたディーイーは、とある座標に次元潜航艇を向かわせた。


そこは風の精霊王スィエラが見つけた場所で、ちょうどまつろわぬ一族が生活する山の反対斜面だった。

つまり周囲を覆う濃い魔力の発生源は、割と目と鼻の先だった訳だ。



次元潜航艇の甲板から、ディーイーは山の斜面を見下ろして言った。

「もう直ぐ日が暮れるが逆に好都合だろう。わざわざ村の人間も、危ない夜の山中を徘徊しないだろうしな」



その言い様は、もはや服わぬ一族の禁足地に向かうと言っているに等しい。

これにティミドが心配しない筈も無かった。

「本当に向かわれるのですか?」



「当然だ。こんな興味の惹かれる事なんて、この私が我慢出来る訳ないだろ」

などと自信満々に答えるディーイー。



「分かりました…兎に角、無茶はしないで下さいね」



「分かってる分かってる」

そう楽観的に返したディーイーだが、同行するシンだけは気掛かりだった。

危険な事は無いと思うが、万が一も考えられる。

その時になってシンを守り切れるか不安があった。



するとシンが言った。

「この中で常識論を提示出来るのは、私しか居ないかと思います。仮に危険になった場合は、それはそれで仕方ありませんよ」



『うは…変に察しが良いな』

少し引いてしまうディーイー。

「シンさんは読心術に長けているのかい?」



「さぁ、どうでしょうね」

そう少し惚けた口調で返した後、今度は僅かに微笑みながらシンは続けた。

「兎に角、魔力濃度の調査を口実にして、服わぬ一族の謎を解き明かすおつもりなのでしょう?」



「それ言っちゃうの…?」



「駄目でしたか?」



「別に良いけど…そんな事をクラーウィスの前で言わないでよ」



「承知していますとも」



『なら良いのだけど…』

「じゃあ早速向かおうか」

ディーイーは目配せするとスィエラが頷き、ディーイー達へ精霊力で干渉を始めた。



その直後、3人の体が宙に浮き、有無を言わさずに甲板から下へ落下したのだった。



「うぅ…やはり慣れませんね。大丈夫だと分かっていても落下する感覚は…」

とシンが呟いた。



「フフッ…まぁ自分で飛行魔法や浮遊魔法が使えるなら、この程度は直ぐに慣れると思うよ。良かったら飛行も浮遊も可能な魔導具を渡すけど?」



ディーイー申し出に、シンは二つ返事で返えす。

「それでしたら有り難く頂戴します。ハクメイ様の侍女として、これくらいは慣れておかないと困りますからね」



「シンさんはハクメイに一途だねぇ」

などとディーイーは言いながら、自分とスキエンティアの関係が脳裏に過った。

自分がスキエンティアと切り離せないのと同じで、きっとシンとハクメイも太い因果で繋がっているのだ。


『今頃どうしてるだろうな…』

今回の件が片付いたなら、一旦本国に戻るのも良いだろう。

そうしなければ本当にスキエンティアから愛想を尽かされ兼ねない。


『いや…それは無いだろうけど……』

下手をしたら距離を置かれる可能性もある。

何故ならスキエンティアが傷付かない為に、自分への精神的にな依存を抑制するかも知れないからだ。

それはそれで実に寂しく、また悲しい。


そんなことを思いつつ、自分が実に身勝手だと思ってしまう。

『自分は距離を置いてるのにな…』



そうこうしていると山腹辺りで落下が止まった。



「着いたかな?」

ディーイーが正面を見据えると、山の斜面には鬱蒼と茂った木々しか見えない。


『ん〜〜恐らく箱舟の船渠せんきょが有る筈だけど…』

十中八九、巨大な地中施設が存在すると思われるが、それが山の外見からは全く窺い知れなかった。



すると3人の体はフワフワと水平に移動させられ、山の斜面の木々に突っ込まされる事に。

当然、ティミドとシンはギョッとするが、この風の精霊王(スィエラ)の意図にディーイーは直ぐ気付いた。

「成程…木々の一部が幻術魔法だな」



ディーイーの言葉通り衝突する筈の木々を、何も無かったかの様に3人は擦り抜けたのだった。



「えぇぇ?! こんな人の来ない山腹に幻術?!」

と思わず声を上げるティミド。



「それだけ重要な物を隠している証拠だな」



幻術の木々を抜けると、そこは明らかに人工的な隧道の入り口だった。



着地したティミドは隧道の壁に触れて言った。

「随分と綺麗に成形された石材ですね。でも…」

かなり経年劣化が見てとれ、その古さを物語っていた。

それでも石材と石材の隙間が無く、古さに反した技術の高さが知れた。



「うん。この感じ…エスプランドルの迷宮内部に似てるね」

ここがまつろわぬ一族の遺跡だとディーイーは確信する。

『問題は簡単に入らせてくれるか否かだな…』


月の民の箱舟が有った遺跡には、厳重な機密機構が備わっていた。

ならば此処にも同等以上の物が有ると考えるべきなのだ。


只、今の自分は魔法の使用を控えねば為らない。

そうなると解除の困難な障害が有った場合、魔法で強引に突破する事が出来ない。


『う〜ん…困ったぞ。風の精霊王(スィエラ)では細かな指示が難しいしな…』

実のところ精霊自体が、細かな命令に向いていないのである。


例えば「⬜︎⬜︎を◯◯まで運べ」や、「⬜︎⬜︎を壊せ」「⬜︎⬜︎を守れ」など、1つの単調な命令には非常に高い成果を示す。

また一般的な人間が使う魔術と違って、出力が高いのも特徴である。

したがって複雑な命令をしてしまうと、適切な処理が出来ず失敗した上、その損失が相当な物になってしまうのだ。


因みに風の精霊王であるスィエラは、人間と同等以上の高い知性を備え、生き物に対して深い慈愛の心も持っている。

だが無機物に対しての扱いが余り宜しくない。

故にスィエラに任せると、繊細であろう遺跡の機構を、うっかり壊す可能性が考えられたのだった。



「どうかされましたか?」

急に立ち止まって黙り込むディーイーに、ティミドが心配そう尋ねた。



「ん? あ…いや、ちょっと安易だったかなぁ〜っと思ってね」



「えぇぇ?! そんな事を今更になって言われるのですか?!」

流石にドン引きのティミド。



「大丈夫、大丈夫、何とかなるって。それよりも万が一に危険な事があったら、迷わずに退いて欲しいの」



「退くって…ディーイー様を残して…ですか?」



「そう…飽く迄も万が一の場合ね。二人を守れる自信が今は無いから…」



「ディーイー様…」

ティミドは"自分に配慮は必要無い"と言いたかったが、すんでの所で飲み込んだ。

我が主君は臣下だからと言って、誰一人も見捨てられない為人なのだから。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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