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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1620話・クラーウィスとディーイー(2)

黙り込んでしまったクラーウィスに、ディーイーは不思議そうに尋ねた。

「どうしたの? 急に静かになっちゃって」



「え? あ……ごめんごめん、ちょっと考え事をしてたの」

と慌てて返すくクラーウィス。

やる気の無さそうな相手に、とてもでは無いが"統一者"などと口に出しては言えない。



「気もそぞろか…一応は王同士の会談と言うのに中々に不敬だな」

予想だにしないディーイーからの駄目だし。



これにクラーウィスが焦らない筈も無かった。

「ご、ごめんなさい!!」



「ぶはは! 冗談だよ…ぐっ…痛たたた…」

勢い良く笑った所為か、ディーイーは打撲箇所に響いて悶絶する。


受けた場所が右胸で無かった事が、今思うと幸いである。

そこは聖剣の呪いが刻まれた位置であり、何が起こるか予測出来ないのだから。



「だ、大丈夫?!!」

「ディーイー様!!」

何も出来ずに取り乱すクラーウィスと、血相を変えて駆け寄るティミド。



そして至極冷静なシンが、いつもの様に見兼ねて割って入った。

「皆さんお静かに。騒いだところで何も好転しませんよ」



全くその通りなのだが、直属の臣下として心配しない訳にはいかないティミド。

「くっ…! いつもシンさんは他人事ですよね」

その所為か、つい愚痴を口にしてしまう。



「それは…まぁ自分の体では無いですからね。ですが、それで客観的に物事を見れるのも事実です」

そう静かに返したシンは、横たわるディーイーにソッと毛布をかけた。

「兎に角、痛みが引くまで安静にして下さい」



「う、うん…」

大人しく頷くディーイー。

因みに大人しくなったのは、余りの痛さにそうせざるを得なかったからである。

『うぅぅ…手合わせなんかするんじゃ無かった』



「じゃぁよ…話し合いはお開きだな」

そうリキが切り出した後、どうした物かと皆を見渡す。



「何ですか?」

怪訝そうに尋ねるシン。



「いや…このまま此処に滞在するのか、それとも船に戻るのか…決めてないだろ?」



今度はクラーウィスが怪訝そうに聞き返す。

「船? こんな山奥に?」



「お、おう…え〜と…次元なんちゃらだっけか?」



当然にクラーウィスは要領を得ずに苛立つ。

「んんん? リキ…何言ってるか分かんないよ!」



「そんな事言われてもなぁ…」



「もうっ!! 脳筋!!」



苦笑いを浮かべながら仲裁に入るティミド。

「まぁまぁ、夫婦喧嘩は止めてく仲良くしましょうよ」



「まだ式も挙げてないんだけどな…」



余計な事を言うリキに、苛立ちを超えて怒り出すクラーウィス。

「それはリキが早く帰って来なかったらからでしょ!!」



「聖女皇陛下の御前ですよ。静かに出来ないのですか?」

と鋭く良く通るシンの声が小屋中に広がった。



「す、すまない…」

「ごめんなさい…」

一瞬でシュン…となるリキとクラーウィス。

ある意味で似た者夫婦である。



静かになったのを見計らったシンは、クラーウィスへ告げた。

「船とは次元潜航艇の事です」



「え…?! 次元…潜航艇!?」

聞き返すクラーウィスだが、その様子からは何を察しているのが窺えた。



「…」

それとなくシンはディーイーを見やる。

話しても良いのかと暗に確認しているのだ。



「うん、別に話してくれても良いよ。知れた所で誰も真似出来ないし、例え他国に漏れても理解すら無理だろうしね」

あっさりと許可するディーイー。



するとクラーウィスが顔をパァ〜っと輝かせた。

どうやらディーイーに負けず劣らず知識欲旺盛のようだ。



小さく咳払いをしてシンは、いつもの様に淡々と説明を始める。

「次元潜航艇とは精霊界アストラルサイドを航行する船の事です。この船の利用に因り、目的地までの到着時間を大幅に早める事が可能となります」



「おおおお!! 凄い!! まさか精霊界アストラルサイドで航行可能な船を、現状の文明力で開発するなんて思いもしなかったよ」

とクラーウィスは感嘆しながら言った。



『ほほぅ…やはり精霊界の仕組みを知っていたか』

よくよく考えれば当然だとディーイーは思えた。


同じ発祥の守り人一族の元には、超古代文明の遺産と言える箱舟アルカが存在する。

これは船でありながら、城とも言える巨大な建造物でもあった。

またアルカは精霊界アストラルサイドを航行可能な機能を有し、今では永劫の帝国アイオーン・アフトクラトリアの拠点となっているのだった。


つまり同じ発祥のまつろわぬ一族も、同等の文明水準を持っているのは明らか。

そうなると精霊界アストラルサイドを利用する技術を持って居ても、何ら可笑しくは無いと言えた。



『あ……これは…』

ここで”ある仮設”がディーイーの中で立つ。


守り人一族や月の民のように、この大陸へ渡って来たと考えれば?

そう…守り人一族にはアルカ、そして月の民にはウラノスが有ったのだから、服わぬ一族にも箱舟が存在するに違いない。


加えて山や渓谷や川に漂う”異常な魔力濃度”…これは自然界には存在しない水準で、強大な魔力を生み出す起因が必ずある。

その起因が箱舟の動力…魔力炉だったなら?

『魔力炉の魔力が漏洩して、ここら周辺の濃度を上げていると考えれば合点がいくな』


ここまで推測してしまうと、もう後には引けない。

「クラーウィス嬢…この山岳地帯の何処か……いや、この村の近くに箱舟を隠しているな?」



ディーイーの突然な問い…しかも殆ど確信とも言える指摘に、クラーウィスの表情が一変したのであった。

「……!!」



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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