1620話・クラーウィスとディーイー(2)
黙り込んでしまったクラーウィスに、ディーイーは不思議そうに尋ねた。
「どうしたの? 急に静かになっちゃって」
「え? あ……ごめんごめん、ちょっと考え事をしてたの」
と慌てて返すくクラーウィス。
やる気の無さそうな相手に、とてもでは無いが"統一者"などと口に出しては言えない。
「気もそぞろか…一応は王同士の会談と言うのに中々に不敬だな」
予想だにしないディーイーからの駄目だし。
これにクラーウィスが焦らない筈も無かった。
「ご、ごめんなさい!!」
「ぶはは! 冗談だよ…ぐっ…痛たたた…」
勢い良く笑った所為か、ディーイーは打撲箇所に響いて悶絶する。
受けた場所が右胸で無かった事が、今思うと幸いである。
そこは聖剣の呪いが刻まれた位置であり、何が起こるか予測出来ないのだから。
「だ、大丈夫?!!」
「ディーイー様!!」
何も出来ずに取り乱すクラーウィスと、血相を変えて駆け寄るティミド。
そして至極冷静なシンが、いつもの様に見兼ねて割って入った。
「皆さんお静かに。騒いだところで何も好転しませんよ」
全くその通りなのだが、直属の臣下として心配しない訳にはいかないティミド。
「くっ…! いつもシンさんは他人事ですよね」
その所為か、つい愚痴を口にしてしまう。
「それは…まぁ自分の体では無いですからね。ですが、それで客観的に物事を見れるのも事実です」
そう静かに返したシンは、横たわるディーイーにソッと毛布をかけた。
「兎に角、痛みが引くまで安静にして下さい」
「う、うん…」
大人しく頷くディーイー。
因みに大人しくなったのは、余りの痛さにそうせざるを得なかったからである。
『うぅぅ…手合わせなんかするんじゃ無かった』
「じゃぁよ…話し合いはお開きだな」
そうリキが切り出した後、どうした物かと皆を見渡す。
「何ですか?」
怪訝そうに尋ねるシン。
「いや…このまま此処に滞在するのか、それとも船に戻るのか…決めてないだろ?」
今度はクラーウィスが怪訝そうに聞き返す。
「船? こんな山奥に?」
「お、おう…え〜と…次元なんちゃらだっけか?」
当然にクラーウィスは要領を得ずに苛立つ。
「んんん? リキ…何言ってるか分かんないよ!」
「そんな事言われてもなぁ…」
「もうっ!! 脳筋!!」
苦笑いを浮かべながら仲裁に入るティミド。
「まぁまぁ、夫婦喧嘩は止めてく仲良くしましょうよ」
「まだ式も挙げてないんだけどな…」
余計な事を言うリキに、苛立ちを超えて怒り出すクラーウィス。
「それはリキが早く帰って来なかったらからでしょ!!」
「聖女皇陛下の御前ですよ。静かに出来ないのですか?」
と鋭く良く通るシンの声が小屋中に広がった。
「す、すまない…」
「ごめんなさい…」
一瞬でシュン…となるリキとクラーウィス。
ある意味で似た者夫婦である。
静かになったのを見計らったシンは、クラーウィスへ告げた。
「船とは次元潜航艇の事です」
「え…?! 次元…潜航艇!?」
聞き返すクラーウィスだが、その様子からは何を察しているのが窺えた。
「…」
それとなくシンはディーイーを見やる。
話しても良いのかと暗に確認しているのだ。
「うん、別に話してくれても良いよ。知れた所で誰も真似出来ないし、例え他国に漏れても理解すら無理だろうしね」
あっさりと許可するディーイー。
するとクラーウィスが顔をパァ〜っと輝かせた。
どうやらディーイーに負けず劣らず知識欲旺盛のようだ。
小さく咳払いをしてシンは、いつもの様に淡々と説明を始める。
「次元潜航艇とは精霊界を航行する船の事です。この船の利用に因り、目的地までの到着時間を大幅に早める事が可能となります」
「おおおお!! 凄い!! まさか精霊界で航行可能な船を、現状の文明力で開発するなんて思いもしなかったよ」
とクラーウィスは感嘆しながら言った。
『ほほぅ…やはり精霊界の仕組みを知っていたか』
よくよく考えれば当然だとディーイーは思えた。
同じ発祥の守り人一族の元には、超古代文明の遺産と言える箱舟が存在する。
これは船でありながら、城とも言える巨大な建造物でもあった。
またアルカは精霊界を航行可能な機能を有し、今では永劫の帝国の拠点となっているのだった。
つまり同じ発祥の服わぬ一族も、同等の文明水準を持っているのは明らか。
そうなると精霊界を利用する技術を持って居ても、何ら可笑しくは無いと言えた。
『あ……これは…』
ここで”ある仮設”がディーイーの中で立つ。
守り人一族や月の民のように、この大陸へ渡って来たと考えれば?
そう…守り人一族にはアルカ、そして月の民にはウラノスが有ったのだから、服わぬ一族にも箱舟が存在するに違いない。
加えて山や渓谷や川に漂う”異常な魔力濃度”…これは自然界には存在しない水準で、強大な魔力を生み出す起因が必ずある。
その起因が箱舟の動力…魔力炉だったなら?
『魔力炉の魔力が漏洩して、ここら周辺の濃度を上げていると考えれば合点がいくな』
ここまで推測してしまうと、もう後には引けない。
「クラーウィス嬢…この山岳地帯の何処か……いや、この村の近くに箱舟を隠しているな?」
ディーイーの突然な問い…しかも殆ど確信とも言える指摘に、クラーウィスの表情が一変したのであった。
「……!!」
楽しんで頂けたでしょうか?
もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。
続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。
また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。
なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。
〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




