1619話・クラーウィスとディーイー
「え~っと……今の私の国を知っても、私を裏切らないと言えるんだな?」
念を押すようなディーイーの問いに、クラーウィスは頷いた。
「うん、裏切るなんて有り得ないよ。こんなお人好しの治める国だものね!」
「お人好しって……」
ある程度の自覚が有るだけに、ディーイーは否定できない。
「兎に角、私は世界の均衡を保つために、ディーイーさんの協力が必要なの。例を挙げるなら生活的な支援から武力的な事まで…まぁ差し当たっては相当に依存する事になるけど」
そう告げるクラーウィスの言葉の後半は、少し申し訳なさを含んでいた。
「成程…支援か。それは可能な限りさせて貰おう。それでだが…現状の明確な目的は無いのか?」
「明確な目的?」
首を傾げるクラーウィス。
「君達は世界の均衡を保つ服わぬ一族なんだろ? なら現状で危惧している情勢や、危険視している国とかは無いのかね?」
「あ……そう言う事か。う~ん……実は北方諸国の国家体制に疑問が有るの。これはスキア神やオスクロ神も同じ考えで、是正しようとする意見が数百年以上も前から挙がってるわ」
クラーウィス以上に首を傾げるディーイー。
「んんん?! 数百年以上も前から危惧してるのに、何も手出し出来なかったと?」
するとクラーウィスは少し落胆した様子で答えた。
「うん……当然そう思うよね。でも私達は1000年近くも停滞を余儀なくされたの。それはどうしようも無かったわ」
ここでディーイーはピンときた。
「ひょっとして北方を変える程の協力者…或いは国家が出現しなかったのか?」
南方の強国であるリヒトゲーニウスは既に守り人一族を擁し、魔法文明力が桁違いな魔導院は鎖国状態。
加えて最も近い距離にある東方諸国も、その強大な力を持つ女王に因って殆ど鎖国状態だった。
そんな状況で”国”を持たぬ一族が、神獣が治める”連合国家”に太刀打ち出来る訳も無いのだ。
「うん…ディーイーさんの言う通りだよ」
しょんぼりと肯定するクラーウィス。
「そ、そうか……」
『これは失敗したやもな…』
ここに来てディーイーは後悔し始める。
自分の出現で”どうにか出来る”と思われてい居るのが不味い。
これは詰まり自分の力を利用して、北方を壊そうとしているに他ならないからだ。
当然にディーイー自身は北方との戦争など望んでいないし、何らかの政治的工作もしたくない。
『う~む……只、昔の仲間を探しに来ただけなのだが…』
それを察したのか、クラーウィスは申し訳無さそうに言った。
「飽く迄も協調だから…ディーイーさんの嫌がる事は強要しないよ。お互いに納得する所で協調出来ればと思ってるから」
『フッ…察しの良い子だな』
「なら北方に対して如何に動きたいのだ?」
「そうねぇ~~私としては歪んだ北方の仕組みを変えたいわね」
そのクラーウィスの返答に、ディーイーは怪訝そうに返す。
「北方に拘るのは良いが、似た様な…いや、もっと危険な相手は居ると思うが?」
今度はクラーウィスが眉をひそめて問い返す。
「どう言う意味?」
「混沌の森…その内郭だよ。君達が知らないとは言わせないぞ」
ディーイーの言葉は、居合わせたリキとシンをも怪訝とさせる。
『混沌の森…? あれは人為的な物なのか?』
『混沌の森に”内郭”?!』
クラーウィスは溜息をついた。
「はぁ……本当にディーイーさんは底が知れないわね。まさか内郭の事まで知っているなんて驚きだよ」
「で、どうなの? 服わぬ一族の女王として、混沌の森の内郭を無視出来ないのでは?」
ディーイーに追求され、クラーウィスは少し沈黙した後に答えた。
「………そうね。でも混沌の森自体が、この大陸に在って隔絶した存在だわ。だから無理に手出しする必要は無いと思う」
「"今"は実害が無い以上、敵視する対象に為らない訳だな?」
「うん…そんな感じ。それで話を戻すけど、北方を変える為に力を貸してくれる?」
世界の根幹に迫る話をしたのに、「触れたく無い」と言わんばかりにクラーウィスは話を変えた。
明らかに不自然であり、何かを隠しているのは確かだ。
それでもディーイーは敢えて追求する事を避けた。
何故なら元々の話から逸れてしまうからである。
『まぁ追い追い聞き出せば良いか…』
「勿論、協調すると言ったのだから、可能な範囲で力を貸したい。だがなぁ…基本的に私は他国の政治体制を尊重する考えなんだよ」
回りくどいディーイーの言い様に、僅かだが困惑した様子を見せるクラーウィス。
「え〜と……要するに他国を侵略しないし、不用意な干渉もしたくないって事?」
「侵略なんて絶対に嫌だな。戦争ほどに人的資源の無為な浪費は無いからね」
「……」
クラーウィスは呆気に取られる。
永劫の帝国は武國、月の国、守り人一族、東方諸国と大陸の半分近くを版図に治めるのだ。
なのに今の反応は、とても女帝のする発言とは思えなかった。
『その気になれば大陸を征服するのも可能なのに…』
ある意味で王としての気質を疑わざるを得ない。
だが裏を返せば平和主義でありながら、版図を拡大させる才に突出しているとも言える。
『太平の世の覇者…』
ふと、そんな言葉がクラーウィスの脳裏に浮かぶ。
されど有り得ない。
覇者と言うのは征服者であり、他国を侵略し全てを蹂躙する存在の称号なのだ。
仮に侵略をせずに大陸を纏め上げたなら?
『統一者…そう呼ぶのが相応しいかも知れないわね』
そんな事など、きっと夢物語だ。
それでも期待を抱いてしまう。
ディーイー……聖女皇プリームは自分の受け継ぐ記憶の中で、最も稀有な存在なのだから。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




