1617話・クラーウィスの技能の秘密
山頂と思われたが、そこは言わば肩部で割と開けた場所だった。
広さにして50m四方は有りそうで、とても山頂付近とは思えない。
そんな開けた平地に、クラーウィスの山小屋が建っていた。
小屋の大きさは10m四方の物が2つ連なり、手前の母屋?は少し高さがある。
その手前の山小屋にディーイー達は案内された。
「適当に寛いでね」
とクラーウィスは言うと、そのまま母屋を抜けて奥の小屋へ行ってしまう。
「おいおい…家主が客を置いてどっか行くって…」
流石にボヤキが漏れるディーイー。
「まぁまぁ、取り敢えず横になりましょう」
そう言ってティミドは、半ば強引にディーイーをベッド?に腰掛けさせた。
それは余りにも簡易な手製の物で、ティミド自身もベッドなのか確信が無い程だ。
また母屋の中は意外と片付いていて、色々な荷物が壁際へ綺麗に積み上げられている。
因みに山小屋自体は、丸太を重ねて作った謂わゆる丸太小屋だ。
と言っても"小屋"と定義するには余りに大きく、これを一人で建築したとなると、クラーウィスは相当な技能者と言えるだろう。
そのままディーイーは横になった。
本音で言えば、座っているのも辛かったからだ。
『ふぅ…少し無理し過ぎたかな……』
「ところでリキさん、この小屋の事は知っていたのか?」
これにリキは首を小刻みに横へ振る。
「いやいやいや、知らんぞ。俺が出稼ぎしてる間に建てたんだろうが……と言うかよ、"覚醒した"とか未だに信じられねぇ」
「ほほぅ…まさかクラーウィス嬢が服わぬ一族の女王と言うのも知らなかったとか?」
「知らんぞ! てか、俺も服わぬ一族って事なんだよな?!」
リキの問い返しに、面倒臭そうに返すディーイー。
「そんなの知らないわよ。まぁ話の流れから推測するに、村自体が一族の末裔な可能性はあるよね」
「そ、そうか…」
しょんぼりするリキ。
「どうしたの?」
「いや…俺の所為で村に危害が及びそうだったのに、その心配が無かったと思うとな…複雑なんだよ」
『ふむ…』
ディーイーはリキの気持ちが分からないでも無かった。
「あれか…食事が無いと思って買って帰ったら、既に家で食事が出来てた…そんな感じだな?」
などと例えて言ってしまった。
珍しくシンが苦笑いを浮かべて言う。
「それは些か深刻さが違うかと。確かにガッカリはしますが…労力の度合いが…」
「え? そうかな? 私は無茶苦茶ガッカリするけどなぁ」
爆笑しかけるのをティミドは必死に堪えた。
『くっ…やばい……』
主君からすれば徒労など、度合いや規模などは関係ないのかも知れない。
そうで無ければ、無茶なお節介などする筈が無い。
「そんな事より、これからどうするかだな…」
ボソリと呟くディーイーに、中々の剣幕でティミドが叱りつけた。
「ディーイー様! どうするかより、先ずはお体の治療からですよ!!」
「え? ち、治療??」
ティミドはディーイーに近付くと、その旗包ドレスの胸元を素早く開いた。
「いやん!」
更にディーイーの上半身を剥いてティミドは続ける。
「いやん…じゃ無いです! ほら、ここに凄いアザが出来てますよ!」
「うぅ……ばれたか…」
「クラーウィスさんの肘打ちを受け流さず、態と体で受けたでしょう? なんて無茶を為さいますか!」
殆ど怒髪天なティミドに、ディーイーは小さくなってゴニョゴニョと文句を返した。
「だ、だって…下手に受け流して、クラーウィス嬢が滑落したら大変でしょ…」
「なぁ〜にを馬鹿な事を! 手合わせを挑んで来たなら、その程度の危険は覚悟の上だった筈です。仮に覚悟が無かったなら、それはそれで愚か者で滑落して当然です!」
ティミドの過激な発言に、ディーイーはドン引きする。
「えぇぇ?! それはいくら何でも…」
するとディーイーの片手を両手で握り、ティミドは懇願するように言った。
「ディーイー様…貴女様は我々にとって、唯一無二の存在なのです。ですから我々に"失われるかも知れない恐怖"を抱かせないで下さい」
そんな事を言われては、流石のディーイーも大人しくなる。
「う……ごめん…」
『今回は少し調子に乗り過ぎたかな…』
そうこうして居ると、クラーウィスが色々と抱えて戻って来た。
「ごめんねぇ、待たせちゃって。お茶淹れて来たよ。それと薬も持って来た」
「え…? 薬ですか?」
怪訝そうに尋ねるティミド。
もしや変な薬をディーイーに使うのでは?…と勘繰ったのである。
四人分のお茶が乗った盆をテーブルに置くと、クラーウィスは脇に抱えていた小箱を見せた。
「これ! 風邪薬に切り傷用と打撲用の薬、それに下痢止めと便秘薬とかも有るよ〜」
「それって…まさかクラーウィスさんの手製じゃ無いですよね?」
とティミドは恐る恐る訊く。
「ん? 私の手製だけど?」
「ディーイー様…これも"覚醒"が関係してるのですか?」
つい不安になったティミドは、ディーイーに小声で囁いた。
「う〜ん…飽く迄も私の推測だけど、歴代女王の技能が、遺伝子に記録されて受け継がれてるんじゃないかな? だから下手な医者よりも優れてるかもね?」
と此方も小声で返すディーイー。
「ちょっと! 聞こえてるわよ!!」
「ははは…」
「え…? はは…」
苦笑するディーイーとティミド。
二人の反応にクラーウィスは溜息をつく。
「はぁ……兎に角、私の能力を信用して欲しいかな。この山小屋とか私の武力が良い証拠でしょ」
「ほほう…つまり私の推測が正しいと?」
ディーイーの言葉にクラーウィスは頷いた。
「うん、凡そ合ってるわ。だから大人しく私に治療されなさい!」
薬箱を持って迫るクラーウィス。
そんな相手に半裸のディーイーが怯えない筈も無いのであった。
『なんか嫌な予感がする!!』
「え…?! ちょ…自分でするから!!」
楽しんで頂けたでしょうか?
もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。
続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。
また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。
なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。
〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




