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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1616話・クラーウィスと手合わせ(3)

背後を取られたクラーウィスは、反撃に備えて"仕方無く"振り返った。

何故なら目の前は山の斜面で、当然に足場が無く前に逃げられなかったらからだ。


だが隙は最小元にしなければ為らず、下手に攻撃も振るえない。

仮に反撃を想定して迎撃を勘で置いた場合、それを見透かされたら?

無論のこと此方が隙だらけになる。

だからこそ何もせずに振り返るしか無かった。



「ぅあっ!?」

振り返った直後、慣れない刺激に声が漏れるクラーウィス。

『くそっ! また!』

"何もしない事"を見透かされ、両胸の先端を指で押されてしまった。



「フフフッ…どう? 私の強さを知れたかい?」

不敵な言い様のディーイーだが、その語調は屈託なく聞こえた。



「うぅぅ…もう手合わせは結構よ。多分どう足掻いても、ディーイーさんの足元にも及ばないだろうし……」

クラーウィスは胸を押さえると、恥ずかしそうに答えるのだった。



『やれやれ…何事も無く終わったか』

二人の立ち合いを見終え、ホッと胸を撫で下ろすリキ。


しかしティミドの反応は違った。

焦った様子でディーイーに駆け寄ると、有無を言わさずに抱き上げたのである。



「ちょっ?! ティミド…急にどうしたの?!」



困惑するディーイーを他所に、ティミドはローレの傍まで来て尋ねた。

「ローレ村長、休める場所は有りませんか?」



「え……あ…それでしたら…家の裏手に小屋が有ります。そちらをお使い下さい」

ローレ曰く、クラーウィスが訓練の為に寝泊まりしていた小屋らしい。

本来ならリキの家で暮らすのが道理だが、どうやら何か訳が有るようだ。



因みにローレが自分の家を挙げなかったのは、とても来客者が使える広さでは無く、また綺麗でも無いからだった。

それを察したのかクラーウィスは、文句も言わずに先導を買って出た。

「じゃあ私に付いて来て」



「良いのですか?」

一応は確認を取るティミド。



「うん、全然構わないわ。夜は家に帰ってリキと寝れば良いし」



クラーウィスの返しに、妙に勘ぐったリキが赤面して声を上げた。

「ちょっ!! 変な言い方するんじゃない!!」



「は? 何言ってるの? 元々は養女だし、これからは夫婦なのよ。今も前も家族なんだから、一緒に暮らして寝るのは変じゃ無いでしょ」



一瞬でシュン…となるリキ。

「うぅぅ……そ、そうだな……すみません」

完全に尻に敷かれているのが窺えた。



そんな二人の様子を見てディーイーはホッコリする。

『フフッ…リキさんも身内には弱いようだな』



こうしてディーイー達はクラーウィスに案内され、村長の家の裏手を進んだ。



そして少しずつ後悔し始めるティミド。

村長が裏手と言ったにも拘らず、細い登山道を200mは歩かされたからだ。

『これは流石に…』

ディーイーをお姫様抱っこしながらの山登りはキツい。


仕方無くディーイーを背中に背負って登る事に。

「ディーイー様、申し訳ありません。少々揺れますが辛抱下さいね」



「いや…別に私は歩けるよ。ティミドこそ無理しないでよ」



自覚の無いディーイーに、ついティミドは語気が強くなってしまう。

「そうディーイー様は言いますが、いつも無理が祟るじゃないですか! 私の見立てに狂いは有りませんから、大人しく負ぶされて下さい!」



「は、はい……」

シュン…となるディーイー。



それを見たリキが笑いながら言った。

「ぶはは! やっぱりディーイーさんは身内に弱ぇな!」



「うるさい! あんたも似たようなもんでしょ!」



「ははは! 違ぇねぇな」





300mは登っただろうか…漸く山小屋らしい物が見えて来た。

そこは意外に開けた場所で、山小屋自体も割と大きい。



「ここって…殆ど頂上なのでは……」

ティミドは少し息を上げながら言った。



「うん。実は先にほこらが有ってね、そことの行き来に此処が便利で、つい小屋を建てちゃった」

などと言うクラーウィス。



「……まさかクラーウィスさんが一人で建てたのですか?!」



「そうだよ。簡単な建築技能なら、ここに入ってるからね」

とクラーウィスは指で自身の頭をつつきながら答えた。



「そうですか……」

ティミドは半ば呆れながら、負ぶっているディーイーへ視線を向ける。

『これって…』

"覚醒"とやらの所為ですか?…と暗に尋ねたのだ。



これを察したディーイーは小声で答えた。

「秘匿されたまつろわぬ一族の女王だしな、下手に詮索しない方が良いだろう」



すると耳聡くクラーウィスが突っ込んで来る。

「聞こえてるよ〜! 訊きたい事が有るなら言ってみなよ」



「え…?! 良いのか?」

意外な反応にディーイーは意表をつかれた。


服わぬ一族は誰にも従わず、如何なる相手でも協調を旨とする?…だった筈。

それは詰まる所、多くの秘密を抱えているからに違い無い。


その一族の女王であれば、尚更のこと秘密が多いのは想像に容易い。

『なのに言ってみな…って、馬鹿なのか?』

少しクラーウィスの事が心配になるディーイー。



「あ〜〜!! 今、私の事を馬鹿にしたでしょ!!」



察しが良すぎるクラーウィスに、ディーイーはタジタジだ。

「え…あ…う……ご、ごめん。でも、そんな安易に他人の秘密を聞けないぞ?」

『関係の浅い相手に言えない事なんて、私も沢山有り過ぎるしな…』



ここで見兼ねた様子でシンが口を挟んだ。

「取り敢えず中に入って落ち着いて話しませんか? ディーイー様もお疲れでしょうし。と言うか、ティミドさんが相当に疲労されているようで…」



「え? あ…! ごめんごめん! ずっと負ぶさったままだった!」

慌ててティミドの背から降りるディーイー。


流石は常に冷静沈着で、常識論を口にしてくれるシンさんだと感心する。

こんな存在こそが補佐役に相応しい…そう染み染みと思うのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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