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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1615話・クラーウィスと手合わせ(2)

ディーイーとクラーウィスの手合わせは、一旦仕切り直しとなった。


しかしその足場は先程と同じで、ディーイーが山道の下だ。

こうなると両者とも無手なので、山道の上に居るクラーウィスが有利となる。



「ディーイーさん…何だか顔色が悪くないか?」

誰にともなく呟くリキ。

元々体調が優れない状態に、尚且つ不利な足場での手合わせ…これにリキが心配するのも当然だった。



木漏れ日の所為で"そう見えた"可能性も有る。

それでも指摘されるまで配慮出来なかった自分が、ディミドは恥ずかしくなる。

『まさか身内でも無いリキさんが先に気付くなんて…』


兎に角、万が一を考えて手合わせを中止させるべきだ。

直ぐ様、ティミドは一歩踏み出して止めようとする。



だがディーイーが見透かしたように、ティミドを鋭く睨みつけた。



「…!!」

咄嗟に動きを止めてしまうティミド。

『そんな……』

これでは何も出来ない。


いつも小姑のようにいさめるティミドたが、それは主君ディーイーが真剣では無いからだ。

故に今回のような本気で楽しもうする事を、只の臣下が止められる筈も無かった。



徐に歩を進めるディーイー。

それに因り互いの距離が、間合いの外から内へと変化した。



『不思議…さっきと全然違う…』

近付くディーイーを前に、クラーウィスは別の意味で驚かされる。

今のディーイーからは全く殺気が感じられず、とても同一人物とは思えないのだ。


しかもその歩みは恰も散歩するようで、相対する側からすれば違和感しか無い。

本当に打ち込んで来るのか?…と勘繰ってしまう程だ。



至近まで迫ったディーイーは、今度は徐に右手を前に差し出す。



『成程…"蝕"をさせてくれるのね』

クラーウィスは少しホッとした。


しょくとは刀法や拳法にある技術の1つだ。

これは剣などの刀身を僅かに触れさせて、相手の動きや兆しを察知したりする。

また逆も然りで、相手に動きの誤認をさせる事も可能だ。

つまり駆け引きをする為の手法と言えた。


勿論、相手が蝕に乗ってこなければ、この技法は成立しない。

よって共通の技法を持つ者同士の、ある意味で作法とも言えるだろう。


そして今回は無手に因る蝕。

互いの手首が触れる超至近で、半歩踏み込めば必殺の一撃が出せる間合いだ。


だがクラーウィスは全く緊張をしていない。

『フフッ…遊んでくれると言うなら、胸を借りるつもりで行かせて貰うわ』


微動だにしない相手に、クラーウィスは先に仕掛けた。

左手を素早く繰り出し、触れていたディーイーの右手を押さえに行ったのだ。



刹那、クラーウィスは目を見張った。

「え…?!」

相手の腕を押さえる前に、瞬時に体勢を崩されていたのである。


『くっ…! まさか少し触れてるだけなのに!』

辛うじて倒れるのを堪え、何をされたか直ぐに察するクラーウィス。

僅かに触れた手首で、こちらに化勁かけいを掛けたのだと考えられた。



するとディーイーが笑みを浮かべなら告げる。

「ほほう…今のを耐えるとは体幹がしっかりしているね。それに私が何をしたのかも気付いたようだし、中々に優秀だな」



「はは……あんまり褒められてる気がしないわね」

再び開始直後の状態に戻り、クラーウィスは如何に攻めるか逡巡した。


何故なら実力差は歴然としているからだ。

何をしても容易に返されてしまう…そんな諦めにも似た情動が胸中を満たしたのである。


その時、自身の胸の"先っちょ"に違和感を感じた。

『????』


「ちょっ?!」

つい声を上げるクラーウィス。

何と、いつの間にかディーイーの右人差し指が、胸の先端を寸分違わず押していたのだ。



「ぶはは! そんなに何を緊張してるのよ? もっと気軽に立ち合えばいいのに」



『なっ…なんて破廉恥な!』

と思いつつもクラーウィスは、今ので緊張が解れたのを自覚する。

「はぁ……ディーイーさんって、随分と変わってるよね」



「そう? 何と比べてるか知らないけど、私も褒められてる気がしないなぁ〜」



真似をされて少しイラッと来るクラーウィス。

「くぅっ!!」

それでも何だか楽しい。

こんな高揚感は、リキを好きだと自覚した時以来だろうか。


また胸を触れられた事に全く気付けなかった。

『兆しさえ認識出来ないなんて…』

ディーイーの底の知れない強さに、只々驚愕するばかりである。



そんなクラーウィスに、あからさまな動きをディーイーが見せた。

触れ合った右手首を急に外し、抜き手の形で突いて来たのだ。



『これは…誘い!』

如何に防ぎ、如何に返すか見せてみろ…そう暗に告げているとクラーウィスは悟った。


力で跳ね除ける事も出来るが、それでは技にならない。

技術の見せ合いなら、ここは端的で単純な技で捌くべきだろう。

その理由は、単純な技ほど最も練度が影響するからだ。

それこそを相手は望んでいる筈なのだから。



「おっ…!」

少し驚いた声を漏らすディーイー。



抜き手を弾かず、また受け流す訳でも無く、体を半身にして回避したのだ。

更に右半身が前に出て、お返しとばかりにクラーウィスも抜き手を放っていた。



顔を狙う抜き手の反撃。

既にディーイーは攻撃を空振った体勢で、ここから回避行動を取る事は出来ない。

なので仕方なく受け流す為、左手を素早く間に差し込む。



「おぉっ!」

再びディーイーは驚きの声が漏れる。


抜き手を正確に受け流したが、その一撃は非常に軽く、こちらの"受け"を明らかに誘う物だった。

『これは…痛いのが来るな』



受け流された抜き手は軌道を内側に逸らしつつ、急に形を変化させた。



普通ならば慣性に逆らえず、クラーウィスが前のめりに崩れるのは必然。

しかし腕を畳むと、別の攻撃へ変えたのである。


肘打ち…超至近で最も威力を発揮する技だ。

こんな物を体重の軽いディーイーが受ければ、例え防御しても吹き飛ばされるのは明白だった。



「…!!!」

今度はクラーウィスが驚愕した。

"見せてやった"と思っていただけに、その衝撃は相当な物だ。


何とディーイーは肘打ちを体に受け、その反動を使って体を回転させた。

そのまま回転しながらクラーウィスの二の腕を這い、いつの間にか背後を取ったのである。



『くそっ!』

直ぐに背後へ振り返るクラーウィス。

それが悪手と分かっていても、どうしても選ばざるを得なかった。

今の一合で向きが代わり、目の前が山の斜面だったからであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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