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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1733/1765

1609話・辺境の名も無き村(2)

「クラーウィスさん…初対面の相手に少し無礼では有りませんか?」

人懐っこい…もとい馴れ馴れしいクラーウィスに、ティミドが苛立った口調で告げた。



これにクラーウィスは少しキョトンとした後、首を傾げながら返す。

「無礼? どうして? 対話しないと相手の事が分からないのに、何も訊くなって言うの?」



「そうでは無くて、初対面の相手には礼儀をもって接するべきでしょう。もし相手が地位の高い者なら、不興を買って大変な事になりますよ」



「高い地位? そんなものが此処で役に立つの? 偉いとか偉く無いとかの話しなら、人よりも成果を上げてたり、皆んなの為になる事をした人の事でしょ?」



ティミドの説教に対し、疑問で迎え撃つクラーウィス。

このクラーウィスの遣り方は、相手を論破する常套手段の一つだ。

最後は矢継ぎ早に示される疑問に、相手は正確な答えが出来なくなってしまうのである。

結果、調子と論点を崩されて、恰も論破された様になるのだ。



そしてディーイーはと言うと、二人のやり取りが面白く見える始末。

『うはっ! これは興味深いな』



「論点をすり替えないで下さい。初対面の相手に礼を失するな…そう私は言っているのです」



『おおお! 流石はディミド!』

ティミドの切り返しに感心するディーイー。

普通なら意地になって、相手の疑問に付き合ってしまう所だからだ。



するとクラーウィスは意外にも簡単に引き下がった。

「そう言う事なら私が悪かったよ。ごめんね…」



「……分かれば良いのです。今後は言動に注意して下さいね」

とティミドも同じく潔い。



『な〜んだ…盛り上がらなかったか、』

ガッカリするディーイーだが、そう事は簡単に済まなかった。



先程の言い合いは何処へやら、クラーウィスは気にぜずディーイーに絡んだのである。

「ねぇねぇ…団長さん、ここには何しに来たの?」



「こ、この子は!」



カチンと来たティミドをディーイーは片手を上げて制した後、クラーウィスへ告げた。

「実は、この村を引き払って貰おうと思ってね」



「え……?」

まさかの返答にクラーウィスの足が止まる。



そんな少女の手を取って引くと、ディーイーは静かに続けた。

「理由は村長を交えて話すよ」






※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






村長の家は山道の一番奥に在った。

また村長でも他の民家と変わらず、然して大きい訳では無い。

つまり格差が発生しない程、村が貧しい証拠と言えた。


因みに民家の建築様式は、北方特有の様式に捉われていない。

そもそも"それ"に拘れない位に平地が無く、殆どが斜面なのだ。

故に元から生えている大木などを利用して、この村特有の家屋を建てていた。



そんな村の様子を目にしたディーイーは、染み染みと人間の強かさと順応に感嘆する。

また同時に、こんな生活の難しい辺鄙へんぴな場所に住む理由が知りたくなった。

『恐らく何か理由が有る筈だが…』



ぼんやりと周囲を見渡すディーイーに、クラーウィスが不思議そうに尋ねた。

「どうしたの? 早く御爺の所へ行こうよ」



「ん? あぁ〜〜少ない土地を上手く利用してると思ってな」



「……団長さん、話し方が年寄りみたいだね」



これにティミドがムッとした。

「……」



ディーイーは直ぐ身振り手振りでティミドをなだめた後、苦笑しながらクラーウィスへ告げる。

「こう見えて結構な歳なんだよ。だから無茶振りしないで欲しいかな」



「無茶振り? しないしない! こんな綺麗で世話焼きな人に、意地悪なんてしないよ!」



このクラーウィスの反応で、ティミドの溜飲が下がる事に。

「そうでしょう、ディーイー様は世界一美しいですから」

だが後の言葉が少しばかり引っ掛かってしまう。

「って…世話焼きは余計ですよ!」



「えぇぇ?! だって…こんな山奥にリキと来るなんて、絶対にお節介でしょ?」



「うぐっ!」

的を射ているだけに返す言葉が無いティミド。



そして当事者のディーイーはと言うと、可笑しくて笑いを堪えていた。

「くっ…くく……なんて率直な…」

ここまで来ると小気味良くて、逆に憎めないと言うものである。



そうこうしていると、先に村長の家に入っていたリキが出て来る。

「どうした? 早く中に入ってくれ、村長が待ってるぞ」



「うん、直ぐ行くよ」

『フフッ…リキさんみたいな脳筋で少し朴念仁には、これくらい快活な方が良さそうだな』

などとディーイーは思いながら、笑いを堪えつつ家の戸を潜ったのだった。





中に入ると直ぐに居間になっており、暖炉の傍に一人の老人が佇んでいた。



「済まない…急に押しかけてしまって。私の名はディーイー、傭兵団・眠りの森の団長をしている者です」



先にディーイーが名乗ると、その老人は人の良さそうな笑顔を浮かべる。

「これはこれは、こんな山奥まで来られて大変だったでしょう。どうぞ掛けて下さい」

食卓の席に皆を座らせると、この老人は茶を淹れながら名乗った。

「儂は村長をしておるローレと申します」



『ローレ……?』

怪訝そうにするディーイー。

クラーウィスもそうだが、北方人にしては北方人らしからぬ名前だからだ。

どちらかと言えば南方…いや、古代人が使う語感の印象を受けた。



皆にお茶を提供し終えたローレは、自分も椅子に腰かけると疲れた様子で言った。

「リキから話は伺いました。これで儂の使命も漸く終わりを迎えられそうです」



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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