1606話・東陽省の都督と裏切り者
何故か重い足取りで歩き出すリキ。
と言ってもディーイーにしか分からないであろう、ほんの僅かな変化だった。
『んんん? 何だ~? 村に案内するのが嫌なのか?』
ディーイーの胸中は妙な不信感で一杯になる。
勿論、仲間としての不振では無く、個人的?に何か隠しているような気がしたのだ。
『まぁ良いか…村に着けば分かるだろうし』
こうしてディーイー達は、シンの話を聞きながら村へ向かう経路を進んだ。
「リキさんの話では東陽省の都督に脅されて、南門省で活動していたのですよね?」
シンの問いに、リキは振り返らずに頷く。
「あぁ……四方京に在る迷宮を氾濫させるのが俺の任務だった」
「そして、その東陽省の都督は亀国の工作員と繋がっている…で間違い無いですね?」
「おう……」
と気不味そうに返した。
「ここからは私が仕えていたロン家の話になりますが、ロン領督の領督妃…もとい裏切り者のペイバンも亀国と繋がっています。ですからベイパンが東陽省に渡った可能性が高いかと」
「成程。上手く行けば亀国の工作員と東陽の都督、それにペイバンも一掃出来る…そうシンさんは言いたいのですね?」
要約したティミドの問いに頷くシン。
「はい。飽く迄も可能性ですし、私には如何にするか決定権は有りません。なので参考にして頂ければと…」
『おいおい…何気に圧力を掛けてくるな』
ディーイーは苦笑いしてしまう。
今考えるとベイパンの裏切りに関して、自分は特に何かを言った覚えは無かった。
明確に告げたのは、ガリーとリキが抱える問題解決への助力のみだ。
故にシンは焦ったのかも知れない。
『普通に頼んでくれれば、幾らでも手を貸すのにね…』
しかしハクメイの侍女と言う立場だけに、シンは主人を差し置いて頼めなかったのだろう。
もはや登山道と言わんばかりの斜面…それをディーイーは軽々と登りながら言った。
「この際だから東陽省の都督も潰しておこうか。上手くすればベイパンと工作員も捕縛出来るかもだし」
言質を得たシンは、柄にも無く飛び跳ねそうになるが、寸前で我慢して頭を下げた。
「ご配慮痛み入ります」
『良かった…』
これに先頭を歩くリキが慌てる。
「ちょっ??! 本気でレン-ツアン都督を殺るつもりか?!」
「ふ〜ん…東陽省の都督はレン-ツアンと言うのか」
「名前なんてどうでもいい! レン-ツアンは龍王派な上、亀国にも繋がってるんだぞ! 奴に何か有ったら、この両者が確実に動いて厄介事になるのは分かるだろ?」
リキは振り返ると、完全に足を止めてディーイーを説得しようとする始末。
対してディーイーは頭を抱えて溜息が出てしまう。
「はぁ……そんな事は言われるまでも無い。それに殺すなんて一言も言ってないぞ」
「え……? 違うのか?!」
「潰すとは言ったが、それは殺める事じゃない。レン-ツアンとやらを攫って、そ奴の画策を根こそぎ頓挫させれば良い」
「攫うって…その後は具体的にどうするんだよ?」
リキの背中を押して先導を促すと、ニヤリと笑みを浮かべて告げるディーイー。
「そんなの決まってるでしょ。言う事を聞かない場合の損失と、聞いた場合の利益を教え込むんだよ」
「そ、そうか…成程……」
リキはゾッとした。
そもそも今の領督を倒した所で、別の領督に挿げ替わるだけなのだ。
故にディーイーはレン-ツアンをそのまま利用する事を考えたのだろう。
そしてレン-ツアンが素直に従わねば損失だけで無く、心身共に想像を絶する苦痛を味わうに違いない。
こうして殆ど道とは言えない斜面を上り、50分程が経過した。
「うぅ…流石に足腰に来るな」
と言いながら腰をトントンと叩くディーイー。
この程度の斜面を登るなど、極地に至った身体操作の前では散歩にもならない。
だがそれは"本来の体"ならの話だ。
今のディーイーの体は全く鍛えられていない、15歳の少女のそれに等しい。
加えて暇さえあれば、ゴロゴロと怠惰な生活を送る今日この頃。
そんな怠けた体で過酷な登山が出来る訳もないのだった。
「ディーイー様、宜しければ私の背にお乗り下さい」
見兼ねたティミドがソッと囁いた。
「いや、大丈夫だ。これくらいで背負われるなんて恥ずかしいよ…」
などと返しつつもディーイーの息は上がっている。
最初の軽快な足取りは見る影も無い。
「左様ですか…」
そう主君が言うなら、引き下がるを得ないティミド。
そして思う…やはり技術だけでは体力を補えないのか…と。
例えるならディーイーは鋭過ぎる刃に似ている。
確かに鋭ければ何でも切断出来るだろうが、鋭いだけに耐久度が低く、無理矢理な使用は刃こぼれを起こす。
下手をすれば刀身を折り兼ねないだろう。
だからこそ、ここぞと言う場面で刃を振るうべきなのだ。
また小まめな手入れも怠っては為らない。
『よしっ! 限界が来る前に、強引にでもディーイー様を背負わないとね!』
そんなティミドの思惑など知らず、ディーイーは半ばフラフラになりながらリキの後に続く。
流石に心配になるリキ。
「ディーイーさん、もう少しで村に着く。辛いなら直ぐにでも抱えてやるぞ?」
「あ…い、いや、大丈夫だ」
とディーイーが答える前に、透かさずティミドが割って入った。
「リキさん、何度も言わせないで下さい! ディーイー様のお世話は私の役なのです!!」
「うぅ…す、すまん」
『気遣っただけなのによぅ…』
色々と無下にされて凹むリキ。
しかし、それ以上に"色々と露見"するのが確定で、今から億劫で為らないのであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




