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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1604話・狂飆の守護者(2)

船縁から周囲を見渡したリキは、顔を青ざめさせた。

「おいおいおい………何で下に船を降ろさないんだよ」



リキが文句を口にするのは当然だった。

ディーイー達が乗って来た次元潜航艇は、深い渓谷の中腹に浮かんでいたのだ。

この次元潜航艇の場合は目的の座標に着いたなら、人が下船する為に地面へ船を降ろさねば為らない。

埠頭や桟橋に横付けする普通の船とは、そもそも扱いが違うのである。



これにディーイーは困り顔で返した。

「そんな事を私に言われてもなぁ…」



するとリキの目の前に、淡い光が突然出現する。



「むぉ?!!」



慌てるリキに、”また”姿を隠していたカルボー010が言った。

「申し訳ありません。この次元潜航艇は試作一号艦で、水平な場所で無いと停泊できないのです。その代わり内部での快適性を追求していまして…ですからご容赦願います」



『また急に現れやがって…』

「ならどうやって下船するんだよ」



「さぁ…?」

と他人事の様に首を傾げるカルボー101。



「こいつツ!」



「まぁまぁ、リキさん落ち着いて。こうなる可能性は分かってたから、狂飆の守護者(スィエラ)を召喚したんだよ」



怪訝そうするリキ。

「ほほう…どうするんだ?」



「簡単な話だ。飛び降りるんだよ」



「なっ?!」

リキが異を唱えようとした直前に、その場に居た全員の肌がヒリ付く感覚を覚えた。



そしてそれを見透かすように告げるディーイー。

「今、皆んなの体に精霊力が干渉してるけど、拒絶せずに受け入れてね。そうでないと上手く効果が出ないから」



「え…? 精霊力?」

ティミドは嫌な予感がする。


下船するにしても、飛び降りるのと"飛んで降りる”のでは随分と違う。

前者なら浮遊魔法で、後者なら飛行魔法が該当し、両方とも慣れていないと相当に怖い。


因みにティミドは訓練等で慣れており、自前の魔導具で浮遊も飛行も行える。

なので高所に対する恐怖は、常人よりも感じない方だった。

『私は別に良いのだけど…』



「うおっ!?」

「…?!」

リキが驚いた声を上げ、シンは珍しく目を丸くした。

二人の体が急に舞い上がったからだ。

勿論、ディーイーとティミドも同じく宙に浮くが、こちらは慣れたもので全く動じない。



「大丈夫だから皆んな落ち着いて。これからスィエラの力で地上に降りるよ」

とディーイーが言い終わるや否や、4人の体は軽々と宙を舞う。

そして何の合図も無く次元潜航艇から飛び出し、急降下を始めた。



「ひぃぃ!?!」

「…!!!」

急降下に因る体への負荷…それは"ひゅんっ!"と股間に来る独特のもので、男であろうが女であろうが関係無い。

それを物語るようにリキとシンは、無意識に股間を押さえていた。



『あぁ……慣れない内は、そうなっちゃうよね』

前置きなく飛ばされた…もとい急降下させられた二人を、ティミドは気の毒に思えた。



そうして10秒程で渓谷の底に着き、その場へ屈み込んでしまうリキとシン。

そんな二人を他所にディーイーは周囲を見渡した。

「ふむ……何にも無いな」



まるで癇癪を起こした様にリキが起こり出す。

「当たり前だろ!! 俺は村が山の中腹に在るって言った筈だ! 何でふもとまで降りるんだよ!?」



これに朧げに漂うスィエラが、ギロッとリキを睨み付けた。



「ひぃ!?」

良く分からないが、敵意を向けられた気がして悲鳴を上げるリキ。



「こらこら…スィエラ、仲間を威嚇するんじゃ無い」

『やれやれ……精霊は人の情動に敏感だからな』

ディーイーは召喚する精霊を間違えたと、今更になって後悔する。


銀冠の女王ノクスは大人しく淡白な印象だが、スィエラは話が違う。

この風の精霊王はディーイー(プリームス)の事が大好きで、自ら従属する事を望んだのである。

つまり些細な事でもディーイーに関係していれば、容易に逆鱗へ触れる結果となるのだ。


『取り敢えず、ちゃんと言い聞かせておくか…』

「スィエラ…ここに居る3人は私の大事な仲間なの。だから守ってこそ当然で、威嚇したり傷付ける事は絶対に許されないぞ」



するとスィエラは動揺した様に震え、その場に土下座したのだった。



なお精霊力に親和性が無い他3人は、スィエラが何をしているかが明確には分からない。

ただ理解出来るのは、その朧げな姿が小さくなった事だけ……それでも十分に状況が読み取れてしまう。


御伽話にしか存在しないような精霊王が、人間の少女に平服している。

この絵面には、居合わせた3人とも驚きを隠せなかった。

『うわぁ……ディーイーさんて、どんだけヤベェんだよ…』

『この方は本当に人間なの…?!』

『流石はプリームス様です!』



畏怖を禁じ得ない3人を尻目に、ディーイーは続けてスィエラに命令を出す。

「さて、ここからが重要だ。スィエラよ…この一帯を覆う魔力源を特定してきて欲しい。その間に私はリキさんの村に向かうから」



これにスィエラは僅かに揺れると、小さなつむじかぜを起こして消え失せたのだった。



「お、おい?! ディーイーさん…何をするつもりなんだ?!」

色々と心配になって来るリキ。


今回の目的は自分の故郷の村から、村人全員を四方京に移送する事なのだ。

なのにディーイーは明らかに違う意図へ意識を向けている。

要するに目的を見失っていないか心配になった訳だ。



「ん? あぁ~~心配せずとも、ちゃんと村人全員を此処から連れ出すよ。だけど確認したいことも有ってね」



思わせ振りなディーイーの言い様に、リキの心配は益々膨らむ。

「確認…? それは…移送させた後じゃ駄目なのか?」



「ん~~その移送に利用出来そうな感じがしてね。まぁ調査はスィエラに任せるから、取り敢えずは村まで案内してよ」



「お、おう…分かった」

仕方なく引き下がるリキ。

助けられている身として、そんな事を言われては異議を口に出来る筈も無いのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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