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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1603話・狂飆の守護者

ディーイー達が船内から甲板に出ると、周囲が完全に霧に覆われていた。

時刻は午前9時…霧を透けて照らす陽光で、辛うじて甲板の足場が確認出来る程だ。



「これは……下手に動くと危なそうですね」

と無意識にディーイーの手を取って呟くティミド。



これへ即座にシンの声が返って来る。

「そうですね。ですが、私の手を取る必要はありませんよ」



「え?! あれ?! ディーイー様は?!」

当然にティミドは慌てた。



「やれやれ……視界が少し悪くなった程度で慌てるとは、永劫の騎士(アイオーン・エクェス)として情けないぞ」

そう告げてティミドの手を取るディーイー。

しかし、その手は妙にいかつかった。

『むおっ?!』



すると呆れたリキの声が返って来る。

「おいおい…ディーイーさんよ、それは俺の手だ」



「ちょっ?! って…ティミドは何処だ?!」



「私はここです!」



『ここって…何処だよ…』

などとディーイーは思いつつ周囲に違和感を覚える。

否、周囲と言うより更に外側…次元潜航艇を囲む空間が明らかに変だった。

「みんな、取り敢えず霧が晴れるまで動かないで!」



「後一時間もせず、日差しで気温が上がって霧が晴れると思います。一旦船内に戻りませんか?」

と至極冷静なシンの声が聞こえた。



「う〜ん……」

『今戻ったらダレそうだしなぁ』

逡巡するディーイー。


そもそも何故にカルボー010が配慮せず、こんな見通しの悪い場所に停泊したのか?

『あ……いや、違うか』

人を模した人工精霊と言えど、根幹は精霊なのだ。

人間の都合を考慮して、指示や指定された以上の事をする訳が無い。


『先ずは…この違和感を確認するべきか』

後々になって不都合が起こっても困る。

幸い取り急ぐ必要は無いので、腰を据えて周囲の安全を確認する事にした。

「リキさん! 一応は村の近くに来た筈なんだけど、こんなに霧が出るのは良くある事なの?」



「ん? あ〜〜村の周辺は森だからな。それに村が山の中腹にある、だから霧が出易いみたいだぞ」



「ほほう…なるほどな」

一応納得するディーイーだが、霧に含まれる魔力濃度が異常に高い気がした。

『これは思わぬ拾い物かも知れないな』


空気中の魔力が常に高い場所なら、そこには何らかの魔力放出源がある。

それが自然の物なら魔石の鉱脈などで、作為的なら迷宮が発生する直前だったりするのだ。


前者なら、その利用価値は言うまでも無い。

そして後者ならば"ディーイーにとって"利用価値の高い物となる。


「兎に角、霧を晴らした方が良いな。ただ待つのも芸が無いし」



ディーイーの言い様に、ティミドが不安そうな声を上げた。

「霧を晴らすって…ディーイー様、魔法を使っては為りませんよ!」



「大丈夫、大丈夫! 私が魔法を使う訳じゃ無いからね」



「え…? ならどうやって……」

余計に心配になるティミド。

元よりディーイーの成す事は規格外なのだ。

それは詰まる所、別の何かが成すとしても規格外で、危険なのは変わらないと言えた。



刹那、周囲に漂う濃い霧が、急に流動し始めた。



「な、何?!」と、ついティミドは声を上げる。

『絶対ディーイー様の仕業だわ!』



霧の流動…これは空気の流れが原因であり、即ち風が吹いた事を意味する。

しかも尋常では無い荒れ狂う風。


いや…荒れ狂ったは語弊が有る。

この風は規則正しく同じ方向に吹き、良く観察すれば大きく螺旋を描いているようだった。

そう…これは竜巻。


だが不思議な事にティミド達が居る甲板では、その突風の影響が殆ど無い。

『どう言う事なの…?!』


ふとティミドは何気なく振り向いた。

そうすると少し離れた位置にディーイーが立っており、その傍に不可思議な何かが寄り添っていたのだ。

『…!! 敵?! いや、でも……』

主君ディーイーが危害を加える存在に、そう易々と後れを取る訳が無い。



ティミドの視線に、ディーイーは笑顔を向ける。

暗に「安心しろ」と言わんばかりの表情だった。



そうして暫くすると風は収まりだし、すっかり霧は晴れてしまう。



「あんなに濃かった霧が…」

半ば唖然と呟くティミド。

霧が晴れただけで無く、深い渓谷を陽光が差し、美しい情景を作り出していたからだ。



「綺麗ですね」

と代弁する風に言ったシンは、ディーイーに向き直って尋ねた。

「所で…その傍に居るのは?」



「フフッ…段々シンさんも驚かなくなって来たね」

少し揶揄い口調のディーイー。



「当然です。今まで色々な物や事象を見せられましたから。で、それはひょっとして…」



「うん、私が契約している風の精霊王よ。名前はスィエラと言うの」



「そうですか……名前の印象から女性なのでしょうね」

と返すシンだが、ディーイーの傍に立つ存在を正しく認識出来ていない気がした。

発する存在感が異様で、その影響なのか姿が朧げなのだ。


銀冠の女王(ノクス)に似てるようだけど…』

幸いノクスと違い、不思議と恐怖は感じない。

只々フワ〜としていて、そこにボンヤリと存在している。



「あぁ……そうか。精霊に対して親和性が無いと、人の目で認識するのは難しかったな」

そう告げたディーイーは、傍に立つスィエラに触れて続けた。

「私の目には絶世の美女に見える。とは言っても、こやつが私の好みに姿を変えているだけだがね」



「左様ですか…」



「因みに二つ名は狂飆きょうひょうの守護者だ」



訊いても居ないのに聞かされ、シンは抑揚無く淡々と相槌をうつ。

「はい……そうですか」

正直、然して興味が無いが無下にも出来ないので、いつもの様な反応になってしまう訳だ。



そんな時、唖然としていたリキが我に返った。

「お、おい! またこんなのを呼んじまってよ、ディーイーさん…今度は何をするつもりだ?!」



「何って…皆は浮遊魔法とか飛行魔法は使えんだろ」



それを聞いたリキは、察した様子で船縁へ駆け寄った。

「う、うぉ!! 高っ!!」

眼下に見えたのは深い渓谷であり、その一番底までは200m以上も有るように見えたのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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