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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1600話・龍王と神子ミエンティ

「南湖監獄が消滅したそうです」

と落ち着いた声で言った。


その者は白髪かと見紛うばかりの灰色の髪色だ。

また顎の辺りで切り揃えている所為か、非常に可愛らしく実年齢より随分と若く見える。

加えて右目に装着した白い眼帯…それは布地に淡く刺繍がされていて、明らかな装身具に見えた。



天蓋付きの絢爛な架子牀かきしょう…そこに横たわる女の気配が揺れる。

「消滅…?」



女が架子牀から起き上がろうとし、それを咄嗟に呼び止めた。

「リアンシー陛下、取り乱しては御身体に障ります」



「……そなたの報告が私を乱したのだ」などと言い掛けてリアンシーは止める。

ただ彼女は報告をしただけなのだから。

「それは確かなの? フェオンが貴女に教えた?

それとも伝令からの報告?」



「フェオンが異変に気付き、私に伝えてくれました。ですが神獣の力を以てしても、南湖消滅の経緯は分かっていません」



リアンシーは焦る気持ちを抑えへ告げた。

「それは仕方が無いわ。兎に角は急いで調査隊を送り、状況の把握と原因の解明をさせなさい」


親友であり良き理解者だったガオシャン。

その彼女を南湖監獄に幽閉したのは自分だ。

しかし、そうしなければ反逆罪で極刑にしなければ為らなかった。


『なのに…南湖監獄が消滅?!』

それ程の事故?が起きたなら、恐らく誰も生き残っていないだろう。

その為、まさかの事態になり後悔ばかりが募ってしまう。



「リアンシー陛下…神子である私も調査に向かいましょうか?」

天蓋カーテン越しに尋ねる声は、落ち着いてはいるが不安が僅かに窺えた。



「ミエンティ…気遣ってくれて有難う。でも神子の貴女が此処を離れては、貴族等が何事かと勘繰るやも知れない。私達は大人しく調査報告を待つしか無いわ」



するとミエンティは少し首を垂れて言った。

「陛下…私は神獣フェオンの伴侶ゆえ中立を保たなければ為りません。それでも私は"私個人"として、陛下へ協力は惜しみません」



「色々と済まない…」



「いえ…私はこれで……」

申し訳ない気持ちを抱え、静かに王の寝所を出るミエンティ。

そうして厳かな神域を進み、ふと気付くと中央庭園に来ていた。

そこは小ぢんまりとしているが、自分が趣味で世話をしている花々が咲き誇る場所…ミエンティが唯一自由に出来る空間だった。


傍に屈み込み、ソッと真っ白な華の花弁に触れる。

元気に美しく育った姿が、恰も植物が自分に恩を返している様に見えた。

そう、草木や花でさえも、こうして世話をされた事に対して応えるのだ。



されど自分は?

一体何を返し、応える事が出来ただろうか?



何者でも無かった自分が見初められ、突然に神獣の伴侶となった。

世間を知らぬ初心な自分を、龍王リアンシーは温かく受け入れ、また多くの事を教えてくれた。


筆頭聖女だったガオシャン…彼女にも随分と世話になった。

だからこそ姉のように慕っていたのに、今では落胆と失望を禁じ得ない。

何故なら彼女が使命を拒絶しなければ、きっと現状のような逼迫した事にはならなかった筈なのだ。


何よりガオシャンが命を落とす事は無かっただろう。

「死んでしまっては、何も恩返しが出来ないじゃないの……」



「神子様……」

姿が見えないのに、何処からか男の声が聞こえた。



「準備が出来たの?」



素っ気ないミエンティの返しだが、姿無き声の主は気にした風もなく答える。

「はい。いつでも入れ代われるよう影も待機しております」



「そう…なら直ぐに向かうわよ、南湖跡にね」



「承知いたしました…」

その声の直後、僅かに在った気配さえも掻き消えた。



『ガオシャン……貴女は本当に死んでしまったの?』

ミエンティは自身に問い掛ける。

そうする事で思考の切っ掛けを作ろうしたのだ。


ただ漠然と現実を受け入れるのでは無く、起因と経緯を探り、そして何者かの意図を洞察する。

偶然の事故なら捨て置くのも手ではある、だがこの世に偶然など殆ど存在しない。

故に何事に対しても疑い、思考する事を忘れない。


もし、ガオシャンが死を装っていたなら?

この仮説はミエンティの希望的観測に過ぎないが、万が一に”そうなら”、正に裏切りであり絶対に許されない。



「必ず見極めて墓標を立ててあげるわ」

そう誰にともなく呟いたミエンティは、ただ静かに颯爽と庭園を後にしたのだった。






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






「ディーイーさん、ディーイーさん!」



誰かが呼ぶ声が聞こえ、ぼんやりと目が覚めるディーイー。

しかし寝起きの間抜けな声とイビキが被り、妙な音を口から放ってしまう。

「ぶぅ、ぶひっ!」



「ちょっ!? 淑女がイビキをかいて、更に豚みたいな声出すのは流石に…」

と呆れながら言ったのは、傭兵団・眠りの森唯一の男であるリキだ。



「んん〜〜〜!」

ディーイーはソファーの上で寝起きの伸びをした。

そして眠気まなこでリキを睨み付ける。

「誰が豚だってぇ?」



「いや…"みたい"と言っただけだぞ…」



これにディーイーは何故か自信満々で返す。

「フッ…昔は1週間くらい寝ずに居て、起きながらイビキが出た事があったぞ。ブヒブヒってな!」



「えぇぇ……」

ドン引きするリキ。

果たして1週間の不眠不休を自慢しているのか?

それとも豚声を自慢しているのか?

どちらにしても女性がする事では無い。



「で、起こしたのは用が有るからでしょ?」

などと乱れた衣服をきにずディーイーは尋ねた。



当然にリキは目のやり場に困りながら答える羽目に。

「その…そろそろ着くってよ」



「え……あぁ〜〜そうだった、リキさんの故郷に向かってたんだっけ、」

現在ディーイー達は次元潜航艇に乗って、東陽省の更に辺境へ向かっていた最中だった。



「おいおいおい! 俺の生まれた村を救ってくれるんだろ?!」



「ついでにリキさんのしがらみもだね」



「お、おう…ありがとな、ディーイーさん」



そんな時、居間の扉をすり抜け、淡い光を放つ何かが侵入して来た。

これにリキが条件反射で警戒したが、それを直ぐに解く。

「お化けみたいに入って来るなよ…」



対して"お化けみたいな"存在は、リキの言葉を無視して告げた。

「ご歓談中に失礼致します。後5分程度で目的に到着しますので、下船の準備をお願いします」

彼女?はロギオスの人工精霊カルボー010であった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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