1597話・南湖監獄の消滅
「ふ〜〜ん……人間とは実に興味深いですね」
皮肉るような、それでいて揶揄う語調でカルボー020が呟いた。
これを敏感に感じ取ったガオシャンは、カルボー020へ鋭い眼光を向ける。
「何が言いたいのです?」
「いえ…後悔する事を予測出来ないなんて、人間は愚かだなと思っただけですよ?」
『くっ…!』
一瞬、ガオシャンは怒りが込み上げたが、この小さな存在の言う通りだと思ってしまう。
そして人間を馬鹿にするカルボー020とは何なのか、少し興味が湧いた。
「あなたの言う通りだわ。でもこれが人間なの…何度も失敗して、それで成長するのだから」
「ほほう…中々に冷静ですね」
二人の遣り取りに、クルトが困惑した様子で間に入った。
「お二人とも、煽るような言い様はお止め下さい!」
「いや…私は全然煽ってないのだけど…」
と呆れながら返すガオシャン。
寧ろ一方的に皮肉られ、煽られたのは自分の方である。
すると宙に浮かぶカルボー020は、首を垂れて素直に謝罪した。
「申し訳ありません…少し貴女を試しました。無礼な言い様、ここに謝罪致します」
急に真逆へ変化した態度に、今度はガオシャンが困惑する羽目に。
「え?え? ど、どう言う事?!」
「グラキエース様が手ずから救う価値が有るのか…貴女の為人を確認させて貰いました」
"どうしてそんな事を"…と訊きかけてガオシャンは止めた。
グラキエースは人智を超えた超絶者であり、そんな存在が自分を助けるなど、そもそも有り得ないのだ。
なのに救われた上、これからも力を貸すと言ってくれた。
正直、自分には過ぎた施しと思える程だ。
「カルボーさん…貴女が主人を煩わせたく無い気持ちは分かります。でもこれは済し崩しで私には…」
烏滸がましいと思いつつも、拒絶する隙が無かったのが現実である。
「主人…? グラキエース様の指揮下には在りますが、私の主人は別にいますよ」
「へ…? あ…! 聖女皇陛下ですか!」
「いえ、違います。私の主人はメディ.ロギオスです。狂気の魔法医師と言えば分かり易いでしょうか?」
「狂気の魔法医師?! あの列国で脅威認定された?!」
頷くカルボー020。
「はい。只の人間で脅威認定されたのは、あの方が初めてでしょうね」
『そう言えばグラキエースさんが言ってたような…』
増援云々の話で剣聖や剣匠が名があがった時、メディ.ロギオスの名も確かに聞いた。
まさかそれが"狂気の魔法医師"などと誰が気付くだろうか。
黙り込んだまま呆然とするガオシャンへ、追い討ちをかけるようにカルボー020が言った。
「ところで…南湖と孤島の監獄ですが、報告と検証用に映像を記録してあります。確認されますか?」
「えいぞう…?!」
聞き慣れない言葉に戸惑うガオシャン。
「あ……これは申し訳有りません、説明不足でしたね。映像とは、この物質世界で起きた事象を、人の目で認識を可能にした媒体です。これは静止画だけで無く、時間経過に因る変化を具に確認可能となります」
「んんんん???」
カルボー020が流暢に説明してくれるが、ガオシャンは何が何だか全く分からなかった。
『やれやれ…やはり文明水準に差が有ると、理解が難しくなって当然ですか』
溜息が出るのを堪えてカルボー020は告げた。
「………兎に角、如何にグラキエース様が処理したか、目で見て確認が出来るのです。ご覧になりますか?」
見れるなら見たいと思うガオシャン。
仲間の仇とは言え同じ国民なのだ…せめて最後を見届けたい気持ちになった。
「はい、お願いします」
「承りました」
と返したカルボー020は、何も無い虚空へ片手をかざす。
そうすると水の様な液体?が湧き出し、1m四方の薄い板を模した。
「え?! こ、これは?!」
「これは映写板です。分かり易く申しますと、記録した映像を此処に映し出す訳です」
「そ、そうですか…」
説明を聞いた所で、結局はチンプンカンプンなガオシャン。
なので"そう言う物"だと諦める事にした。
直後、何の前触れも無く、映写板から淡い光が発する。
それが映写板全体へ馴染むように広がり、繊細で鮮明な絵画の如き風景が映し出された。
「これって……ひょっとして南湖?」
ボソリと呟くガオシャンに、カルボー020は頷いた。
「はい、上空2000mから南湖を記録した映像です。神獣に察知されないよう相殺結界を張りつつなので、やや映像に乱れが有りますがご容赦を」
「凄い……」
ガオシャンは漸く悟った。
映像とは正に"映し出された像"であり、それは時間の経過さえも記録し、尚且つ後で見る事が出来るのだ。
『こんな技術が存在したなんて…』
これが有れば、凡ゆる記録に対して大変革が起きるに違いない。
そんな色目を抱くガオシャンだが、それらの考えが消し飛ぶ事になる。
映写板の隅に映っていた小さな点。
それがグラキエースだと分かった時、その直下に巨大な何かが顕現した。
顕現…?
否…それは未だに顕現の最中だった。
例えるなら巨大な火球…恰も小さな太陽が現れ、それが次第に大きくなっていたのだ。
そして地上の南湖を覆い隠した時、その小さな太陽は降下を始めた。
一瞬だった。
小さな太陽は直ぐに地表へ到達し、接触した物質を跡形も無く飲み込む。
南湖だけで無く、周辺の土壌、岩、木々…有りと凡ゆる物を消し飛ばした。
ただ不思議な事に、小さな太陽が接触した範囲だけで、その他への被害は無いよう見えた。
そう、しっくりくる言葉を選ぶなら、それは侵食。
これだけ強大な魔法?でありながら、余波が無いのは不可思議としか言い様が無い。
「天照降臨……聖女皇陛下しか使えない固有魔法かと思っていましたが、まさかグラキエース様まで使えるとは私も驚きです」
とカルボー020が誰にでも無く言った。
「ソール…アドヴェントス……? こ、こんな魔法を……人が使えるなんて…」
現実離れした事実を目の当たりにし、ガオシャンは半ば呆然と呟くのであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




