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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
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1585話・聖女ガオシャン(2)

「申し訳ありません……助けに来てくれたと言うのに、私は此処を離れる事が出来ないのです」

とガオシャンは少し俯いて言った。



「貴女が監獄に防壁結界を張ったと、貴女の従者から伺いました。つまり囚人を守る為に監獄から離れられないと?」



グラキエースの問いに、頷くガオシャン。

「はい……ここには囚人だけで無く、私の部下だった者や従者達も収監されています。彼らを見捨てて私だけが逃げるなんて出来ません」



『これは参ったな……』

冷静な表情を装うグラキエースだが、胸中では困り果てていた。

当初は簡単な任務だと考えていただけに尚更である。


この状況は恐らく聖女ガオシャンの有用性を考え、龍国の上層部が出した苦肉措置なのだろう。

有用で強力過ぎる聖女ゆえ簡単に処理出来ず、かと言って野放しにも出来ない。

下手に自由にさせれば、反体制派に取り込まれる可能性が有るからだ。

ならばガオシャンの倫理観を利用し、動かず仲間や従者を守らざるを得ない状況にしたのだ。


対してグラキエースが取れる手段は、聖女と全ての囚人諸共に連れ出す事だ。

或いは脅威となる監獄周辺の魔獣を殲滅するか…。


だが前者は連れ出せる手段が無い。

そして後者は容易に可能だが、派手な戦闘になるのは否めず、龍国側に察知されるのは明白だ。

要するにグラキエースが直ぐに思いつく手段では、この現状を打破は出来ないのだった。



「そんな……」

予想していなかった事態に、ガリーは力無く膝から崩れた。

ここに至る今までの自分が無意味…そう告げられたに等しく、正に絶望を感じた。



『諦めては駄目だ。何か他に…』

グラキエースは思考を巡らせる。

物事には多面的な要素が有り、故に手段も1つでは無い。

考え方や視点を変えれば、何らかの打開策が見つかる可能性も有る。


ふと思う。

そもそも聖女ガオシャンを直ぐに救い出す必要があるのか?

実際には命を脅かす状況には無く、大して差し迫ってはいない。


『出直す手も有るな』

意を決したグラキエースは、ガリーとガオシャンを見やって告げた。

「一旦撤収し、出直しましょう」



これに恐る恐る尋ねるガリー。

「それって…ちゃんと準備をすれば、ガオシャン様を救い出せると?」



「現状でも可能では有りますが、大事になって龍国側に察知されます。それにガオシャン殿の身柄は、政治的に複雑な要素を抱えていますからね、ここはプリームス様の沙汰を仰ぐべきでしょう」



絶望から十分な可能性に変わり、ガリーの表情が一気に明るくなった。

「わ、分かりました!」



「……」

一方、救出される側のガオシュンは沈黙する。

本音で言えば自分の事など放っていて欲しい。

しかし一国の王…もとい帝国の女帝が関わっているなら、あからさまな拒絶など出来る訳が無いのだ。



「沈黙は"了承"と判断します。次にプリームス様へ報告するので、色々と聞きたい事が有ります。それも宜しいですか?」



淡々と告げるグラキエースに、ガオシャンは仕方無しに頷いた。



「先ずは1つ…龍王の後継は血統ですか? それとも資質で決められるのですか?」



「……龍王の後継は、最も法力が強い聖女や聖人が選ばれます」



『やはりそうか…』

ガオシャンの答えは、グラキエースの推測通りだった。

だからこそ反体制派が傀儡の龍王として、ガオシャンに拘り旗頭にしようとしているのだろう。


だが聞き慣れない"聖人"とやらが引っ掛かる。

「聖人とは、聖女に匹敵する男性の事を言うのですか?」



「はい…ですが聖女より出現が稀です。また龍王に成れなかった場合、殆どの聖人が暗殺されてしまいます。運が良ければ法力を失って、常人として生きながらえる事も有りますが…」



「それは…随分と過酷ですね。ひょっとして対抗勢力が生まれるのを、元から断つのが目的だとか?」

そこまで尋ね、グラキエースは矛盾に気付く。

「んん……それだと聖女も根絶やしにされますよね」



「いえ、それで合っています。聖人の出現は先天的な突然変異で、遺伝により資質は受け継がないとされています。逆に聖女は僅かながらも、実子に引き継ぐ可能性があるのです。ですから…」



「そもそもの価値が違うと?」



「仰る通りです」



「ふむ…」

ここでグラキエースは、聖女ガオシャンの更なる有用性を認識した。

『成程…聖女は龍王に成らずとも、次の世代の準備に使える訳か』


しかしながら人を"物"して扱う点が、傲慢な権威者思考で心底嫌気が差す。

主君プリームスが他国を尊重しなければ、自分が手ずから北方を滅ぼしていただろう。



グラキエースは撤収すると言いながら、こうして呑気に会話している。

これにガリーが焦らない筈も無かった。

「少しでも早く撤収した方が良いのでは?」

今が大丈夫でも、この先が如何に変わるか分かったものでは無いのだから。



「ガリーさん、もう少しだけ待って下さい。ただ早く撤収しても、持ち帰られる情報が少なくては意味が有りません」

淡々と冷静に返すグラキエース。



当然にガリーは、一切反論する事が出来なかった。

「す、すみません…」



溜息が出そうなのを堪え、グラキエースは再びガオシャンに問うた。

「囚人の安全が担保されれば、ここから抜け出す事を貴女は良しとしますか?」



「それは安全の水準にも因ります。仮に魔獣が居なくなったとしても私まで居なくなれば、残った仲間が悲惨な扱いを受けるに違い有りません。私を此処から出したいのなら、皆の絶対的な安全が前提です」



『フッ…ガリーさんが慕うだけの事はある』

グラキエースは感心した。

芯の通った倫理観と、信義を重んじる精神…これは人の上に立つ者として、最も必要とされる資質だ。

彼女が王となれば、少なくとも民が搾取されるだけの存在には為らないと思えた。


されど、それは王が王として考え、自ら行動出来る状況に在った場合である。

影から利権を貪ろうとする者の傀儡になっては、その資質も全くの無駄になってしまう。


根が深い……そうグラキエースは思わずには居られない。

本当の意味で聖女ガオシャンを救うには、根本的な龍国の問題を解決しなければ為らない。

果たして主君は、それを認めるだろうか?


『………あの方はお節介だからな。きっと…』

身内や仲間の知り合いなら、只それだけで手を貸すに違いない。

故に独断専行と思いつつもグラキエースは問うた。

「聖女ガオシャン…貴女は龍王になる覚悟は有りますか?」



楽しんで頂けたでしょうか?


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続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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