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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章・北方四神伝・II
1706/1764

1582話・南湖監獄(4)

グラキエースはソッと管理棟の壁面へ右手を添え、直ぐに3mほど距離を取った。



何も起こらず、不思議そうに壁を見つめるガリー。

「…??」



その直後、ガリーは目を見張る羽目になる。

何故なら壁に小さな穴が穿ったのだが、その穴が急に巨大化したのだ。

「え?え? 何!?」

その所為で恐怖を感じ、咄嗟に飛び退った。



消滅ディスインティグレートと言う魔法です。原型は支配階級の魔神が使いますが、それを少し改良し規模を縮小してみました。言うなれば下位・消滅デースペル・ディスインティグレートでしょうか」



「これで規模が小さいって…この魔法、ヤバくないですか?!」



「う〜ん…確かにパッと見の衝撃は凄いですが、実は簡単に目標へ当てられる魔法では無いです。今のは動かない壁にでしたし、」



「あ……そう言えば少し時間差も有ったような…」



頷くグラキエース。

「その通りです。魔法の発動から発現の間に1〜2秒の間が有るので、まあ実戦では使えないでしょうね」



「成程…何事にも完璧は無いのですね」

ガリーは納得した。


強力な力ほど代償や対価が大きくなる。

この場合、下位・消滅デースペル・ディスインティグレートとやらは、その威力の代償に、速度と捕捉力を犠牲にしているのだろう。



グラキエースは穿った壁の穴を潜って言った。

「さあ先を急ぎましょう。地位の高い看守か、もしくは所長でも捕まえれば、聖女の居場所も直ぐに分かる筈です」



「あ…は、はい!」






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※







敷地中央に在る管理棟らしき建物は、石材で緻密に作り上げられた塔と言えた。

その高さは30mは有りそうで、まるで強大な魔術師が根城にする魔塔のようだ。


また東西南北に建てられた監獄庁舎へ、この管理棟だけが繋がっている。

つまり4箇所の監獄庁舎から出るには、絶対に管理棟を経由しなければ為らない。


そこで1つグラキエースの中で疑問が湧く…どうやって外に出るのか?

管理棟自体には灯窓らしき小さな物しか無く、"基本的には"外部への経路が無い。


唯一例外的に出入りしている様に見えるのは、この孤島を囲う外壁の警備兵だ。

彼らは外壁の上を巡回し、内部では無く外部を見張っていた。

恐らく魔獣の接近や、何らかの襲撃を警戒しているかも知れない。

そんな警備兵が巡回する外壁は、どうしてか管理棟と繋がる経路が見当たらなかった。




「どうやら外部の警備と、監獄区画は完全に隔絶しているようですね」

と先を歩くグラキエースが小声で言った。



現在2人が進んでいるのは、管理棟外縁部の通路だ。

ここは巨大な円柱をした正に塔のような建物で、故に通路は緩やかな曲線を描いていた。



「それって…警備の意味が有るんですか?」



「う〜ん…調べてみないと分かりませんね。かと言って余裕も無いですし、ここは気にせず聖女の救出を優先しましょう」



「……」

ガリーは漠然とした不安を感じながらも、黙ってグラキエースの後に続く。



因みに管理棟内部は実に殺風景だった。

監獄施設なので当然だが、別の意味で普通の施設とは違っている。

最も目を惹くのは内壁で、見慣れない白い石材?で覆われていたのだ。



「珍しいですね…化粧煉瓦とは」

壁にソッと触れて呟くグラキエース。



「化粧煉瓦…? これが煉瓦の類なんですか?」



「焼き入れをすると言う意味なら、まぁ同じですね。でも表面がツヤツヤしていて割と綺麗でしょう? 少し製法も違いますし、普通の煉瓦より耐熱性と耐久性に優れています」



外観と内装が余りにも違い、妙にガリーは不気味さを覚えた。

「何だか中身だけ別の文明のような…」



「ふむ……それは的を射ているかも知れないですね」



「え……」



その時、グラキエースは急に立ち止まった。

「分岐です」

先には外壁面に沿った階段と、この1階外縁部を周回するであろう通路が続いていた。



「……」

ここまで誰一人として出会わず、また人の気配さえ感じなかったガリー。

このまま進んで大丈夫なのか?……先程にも増して妙な不安が胸中を覆う。



「どうかしましたか?」

そんな伴侶の気持ちを敏感に察したのか、グラキエースが心配そうに尋ねた。



「……何と言うか…嫌な予感がして」



少し思考した後、グラキエースは静かに告げる。

「潜在的な危機予測でしょうね。それを言語化してみましょうか?」



「え…?」



「本来、厳重でなくては為らない場所で、こうやって手薄なのは違和感があって当然です。特に傭兵や冒険者なら、それを敏感に感じ取るのですが…どうしてだと思いますか?」



ここに来て、まさかの問答にガリーは困惑する。

『それどころじゃ無いと思うんだけど…』

「ん~~~多分…経験でしょうか?」



「その通りです。そして今と似た状況を、実際に迷宮に潜って体感した事があったのでは?」



「あ……! そう言えば……魔獣が殆ど居ない階層や区画は……」



頷くグラキエース。

「はい。魔獣など必要ない程に強固な罠が有るか、若しくは強大過ぎる守り役が居るかですね」



「そんな……」

ガリーは不安が的中し、思わず後ずさってしまう。

ここまでグラキエースが言うのだから、この先は相当に危険に違いない。

きっと自分は足手纏いにしか為らないだろう。



そんなガリーの手を、グラキエースは直ぐに掴んで引き寄せた。



「あ…!」



「大丈夫です…私はプリームス様の次に強いですから。そんな私を倒せる存在が居ると思いますか?」



「…!」

ガリーは失念していた事に気付く。

そう、自分の伴侶となった彼女は永劫の騎士(アイオーン・エクェス)であり、初代ラスィア女王なのだから。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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― 新着の感想 ―
すみません、名前、スキエンティアでした! 間違えてすみません!!
こんばんわ。更新待ってました!ありがとうございます。 今、再度、読み直していて、箱舟まで読み返しました。 やはり、面白いですね。 ただ、素直に言えば伴侶になった方々の我儘にイラっと来るくらいですかね(…
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